第133話
ゴブリンの警戒をかき分けるように夜間移動を続けて、翌朝早朝には野営天幕へと戻ることができた
拠点には『ギルドマスター』エンゲルベルトの他に、領主ギルベルト=フォン=バルツァーと子息の長男ヴォルフラムの
姿があった
それぞれが、報告を聞いて、眉間にしわを寄せて考え込む
「『軍旗』が2つもあるとすれば『歴戦種』か『放浪者』の『ゴブリンロード』が率いる群れだろうな
状況から言って前者か。『放浪者』系なら主に単独活動する・・・」
ギルベルトが眉間にしわを寄せつつ考え込む
「父上、砦の周辺には複数の天幕が張っているとすればゴブリンだけで数千匹はいますね・・・」
息子であり、騎士見習いでもあるヴォルフラムが父親に話しかける その声色はやや緊張しているようだ
「どちらにしても早急に叩かなくてはまずいかと」
『ギルドマスター』エンゲルベルトが、険しい表情のまま口を開く
「事はそう単純にはいかない・・・だろ? ちびっこ先生」
アルヴィンが疲れと眠気が混ざったような複雑な表情で、軽い欠伸をしていたベイセルをチラッと横目で見つつ尋ねる
「単純に考えれば、 砦内には『ゴブリンロード』が手懐けた魔獣や魔物も居るだろ?少なくともゴブリンだけじゃないよ
あとご領主様と若様がおられるんだがら、ちびっこ先生は余計だ・・・」
ベイセルが不満げな表情で言い返す
そんなベイセルとアルヴィンの様子を見てエンゲルベルトは笑みを浮かべていた
「ちびっこ先生に伺いたいが、ゴブリン砦を攻略するにはどの程度かかる?」
ヴォルフラムがベイセルに向かって問いかける
その表情と声には子供だと侮る様な見下した様な感情はなく、冷静沈着な騎士の風格を感じさせる
「若様まで・・・最短でも10日前後と睨んでおります
砦内に亜種や希少種の魔獣や魔物を手懐けて持ち込んでいる場合には、もう少し時間が必要になるでしょう」
ベイセルの答えにギルベルト=フォン=バルツァーは満足げにうなずく
そして、ヴォルフラムに顔を向ける その眼差しは父親の眼だった
「お前はどう考える」
ギルベルトは息子に向かって問い掛ける
「ゴブリン砦の攻略に時間がかかればかかるほど、ゴブリンによる報復は大きくなる恐れがあります
そして砦の討伐に失敗すれば、今後の『魔境』開拓に多大な影響が出るばかりか、ロージアンの冒険者ギルドが瓦解しかねません」
ギルベルトの息子であり、ロージアン騎士団に所属する若き天才騎士ヴォルフラムは、父親の質問に対して落ち着いた声で淀みなく答える
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