第10話
――――それから数日後、タルコット、ローザ、テレンス、
カルローラ、アトリーサ、
4名の新人冒険者を加えたハインツ一行の姿は再び臭気漂う
中級者冒険者向け『アルスター』迷宮の一層に在った
ハインツ一行は、前回よりも遥かに高い連携力を発揮していた
ローザは、「拳闘士」の身体能力の高さを活かした攻撃で前衛を支え、
盾役を務めた
テレンスは「回復士」の技能を活かして仲間の傷を癒しつつ、魔法による
援護を行い、 敵の攻撃を一手に引き受ける
タルコットは、魔法詠唱するたびに額を床や地面にぶつけるが魔法技術には
恐ろしほど長けていて、ハインツの想像を遥かに超えて強力な支援魔法を行使し、
パーティ全体の戦闘力を大幅に向上させていた
そして、新たに加わった2人の新人冒険者も、ハインツとカーリンの
予想遥かに超える 高い戦闘技術を秘めている事が判明していた
『闇狩人」のアトリーサ が主に武器としていたのは、ハンドクロスボウと
折りたたみの鋸鉈だった
この二つの武器を使いこなすには、相当な技量が要求される
しかし、彼女はまるで自分の手足のように彼女は難なく使いこなしていた
使いこなすハンドクロスボウと折りたたみの鋸鉈もハインツが見た限りでは、
それほど 詳しくはなくてもそれ相応の魔法武器だと判断できた
アトリーサ の扱うハンドクロスボウは、どの様な仕組みなのか引き金を
絞れば無から矢を生み出し対象に向けて放つ事ができた
矢を生み出し対象に向けて放つ事ができた
その矢は通常の弓矢とは違い、まるで杭の様な太さで
威力も段違いに高く、 さらに連射が可能でもあるようだった
一方、彼女のもう一つの武器である折りたたみ式の鋸は、刃渡り
50センチほどの 長さがあり、その大きさからは考えられない程の
切れ味を誇っていた
その鋸で斬りつけられた魔物は、切断された部位が
塵となって消え失せてしまうほどだった
そして彼女の戦闘能力は、これだけではなかった
アトリーサ は『罠土』としての適性も持っていたのだ
彼女が一瞬で仕掛けを施す様子は、まさしく超一流の職人技と言っても
過言ではない程の腕前で、しかもそれを戦闘中に行うのだから、ハインツと
カーリンは、ただ 唖然とするだけだった
床に接した『罠』に蛇竜属の魔物が触れた瞬間、地面がせり上がり
串刺しになった
天井に接した『罠』に翼竜属の魔物が触れると同時に、天井から巨大な
鉄球が落下して叩き潰した
複数の壁の箇所に接した『罠』に、が一斉に押し寄せる魔獣属や巨人属などの
魔物達が触れた瞬間、 稲妻をまとった槍が突き刺さり焼き焦がした
――アトリーサ の使う魔法の罠は、どれもこれも凶悪極まりないものだった
さらに彼女の凄まじい所は、自分自身が使う魔法の罠と迷宮に仕掛けられている
罠と連動させ、より効率的に魔物を倒す事だ
ハインツとカーリンはこれほどまでに高度な戦闘を行う冒険者を
他に知らなかった
――高度な戦闘で言えば、「迷宮道士」のカルローラも負けていなかった
カルローラは、独自の高度魔法技術を駆使して戦うのだが、その戦い方は、まるで
奇術師のような不思議な動きで相手を翻弄し、隙を突いて強力な魔法を放つという、
ハインツの想像を超えるものばかりだった
カルローラの扱う魔法は、各種装備アイテムや道具それぞれに付与出来る
エンチャント魔法とは根本的に異なり、彼女自身の肉体に直接魔法を付与する
言わば身体強化魔法を得意としていた
また、パーティメンバーの装備する武器や防具に高度なエンチャント魔法を施し、
戦闘を有利に進める事が出来るように工夫した
補助役としても高い実力を持っているのはハインツはわかったが、それが
十代半ばの少女が熟練冒険者貌負けの戦闘を行える要因になっているかは
まだわからなかった
特に彼女が得意としている様に見えたのは自身の魔力を込めたと思われる
ハンドベルを鳴らし、呼ばれる召喚体を呼び出す事だった
カルローラは、複数の『霊体』を使役し、それぞれ異なった役割を与えていた
ハインツが見た限りでは三種類の『霊体』をハンドベルを鳴らし、呼び出していた
偵察役と盾役として、剣と盾で武装した100体の骸骨戦士だ
最初に見た時、ハインツは『数は多い事には驚くが、魔物としては
初心者冒険者でも倒せるレベルなので、さほど脅威にはならないだろう』と思った
動きも緩慢で、簡単に破壊されてしまう脆さのある魔物だ
だが、カルローラが使役する100体の骸骨戦士が、いささか
異常な事は ハインツとカーリンはすぐにわかる事になった
オーガやトロールと言った巨人属の魔物の攻撃でいとも簡単に破壊される
骸骨戦士団だったが、カルローラがハンドベルを鳴らすたび
まるで時間が巻き戻るかのように、元の状態に戻ってしまうのだ
しかも、今度は破壊されるまでの数倍の数の骸骨戦士が呼び出され、
破壊された 骸骨戦士は復活するたびに強靭になっていた
そして、最後には二千体を越す大軍団となっていた
この大軍勢を相手に襲い来る魔物が全滅するまで戦い続ける事になる
さらにこの骸骨戦士団には、もう1つ特殊な能力が備わっていた
一体一体が戦闘を繰り返す事で、実戦経験を積み、成長し続ける事が
できるのである
だが、戦闘役や援護役の『霊体』は、これの比ではなかった
戦闘役の『霊体』は、騎士、重装歩兵、僧兵、騎兵などの前衛職を持つ『霊体』だ
その職能に応じたスキルを使って攻撃を行うのはもちろんの事、武器や防具も
通常の 魔物では考えられないほど高性能なものを装備していた
一体一体の能力も正真正銘の一流で連携も完璧にこなし、並みの
魔物が束になっても 敵わないほどの強さだ
その戦力はハインツとカーリンからでは、まだまだ底が見えなかった
それは、援護役の『霊体』にも言える事だった
援護役の『霊体』は、弓兵、魔術師、神官、僧侶、吟遊詩人などの
後方支援職を持つ『霊体』だった
中でも特筆すべきなのは、回復魔法に特化した後方支援型の『霊体』と、援護特化した『霊体』だ
カルローラが使役する回復魔法特化の『霊体』は、負傷してもすぐに
治癒してしまうのだ
しかも、カルローラ自身が行使できる最高レベルの回復魔法で、傷だけでなく
体力も完全回復するのだ
ハインツとカーリンは、この凄まじいまでの回復力を見て驚愕した
それには達人の域にある「回復士」テレンスでさえも、驚きを
隠せなかった
最後に、援護特化した弓兵の『霊体』は、その優れた視力で遠方にいる
標的を捕捉し、確実に狙撃する事ができた
その命中率は、ほぼ百発百中と言っていいほどの精度を誇り、弓兵戦術の
スペシャリストだった
標的の魔物に当たれば、どんなに硬い外殻で覆われていようと、強固な鎧に
身を包んでいても必ず致命の一撃を与える事ができ、弓矢の直撃を受けた
魔物は例外なく絶命していた
その凄まじい威力は、辺り一帯を吹っ飛ばすほどでその余波を受けただけで周囲の
魔物も巻き込まれて死んでいった
ハインツとカーリンは、まだ少女と言ってもいいカルローラの他の
追随を許さない程突出した戦闘能力を目の当たりにして、恐怖すら
覚えるほどだった
「ハインツ・・・本当にあれで新人の冒険者なのか?
あんな動きが出来る新人冒険者なんて、俺は聞いた事がねえぞ」
カーリンが呻く様に告げる
「 「冒険者ギルド」が新人だと紹介したんだ。間違いないだろ?」
ハインツは苦笑を浮かべながら、目の前の光景を信じられない思いで見ていた
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