第6話
数週間後、ハインツ達の姿は迷宮都市の1つ『アルスター』の迷宮にあった
この都市の迷宮は『冒険者ギルド』より『重要危険迷宮』に認定されており、
主に中級者冒険者向けの迷宮として名を馳せている
迷宮の階層数は地下10層までだが、待ち受ける魔物の強さと数の多さは、
中級者冒険者でも油断できないレベルだ
最下層には、強力な力を秘めた魔物が犇めき合っている為、相応の
実力者でなければ探索を諦めるほどの難度を誇る
そして、迷宮内には至る所に殺意を滾らせた凶悪な罠が仕掛けられていて、
侵入者を容赦なく襲う
ハインツ一行は、この迷宮での経験を積みつつ自分達の力を高める事にしていた
彼等が潜るのは 第二層の探索区域出現する魔物の種類も多種多様になり、
難易度が跳ね上がる
迷宮内の通路は、縦横共に100メートル程の広さで、天井の高さも
20メートル近くあり、広大な空間が広がっていた
この広々とした場所では、大人数のパーティーが隊列を組んで戦う
事もできる
そして、ハインツ一行は現在第一層探索区域で獣竜属の魔物と戦闘を
繰り広げていた
飛竜属や鳥竜属、牙竜属と同じく竜盤目に属する獣竜属だ
この獣竜属の特徴は、強靭な生命力と高い戦闘能力、そして集団で行動する
習性があり、仲間と連携しながら獲物を追い込むように追い詰めていく
前脚が腕のままで翼を持たず、後脚での二足歩行での地上生活にした魔物だ
ハインツ一行が闘っている獣竜属は、ハンマーのように発達した下顎と
鋭い牙が特徴的な獣竜属だ
その身体の外殻はマグマをものともしない耐熱性を持ち、溶岩や火薬岩を
擦り付けている
顎を打ちつけて起こした震動で起爆させる威力は凄まじいもので、
最も 厄介な点は、尻尾についている火薬岩をばら撒き、対象に強烈なダメージを
与える点だ
それは防御力に関係なく必ず命中するという性質がある
獣竜属の魔物の他には、軽く50匹ほどの大型二足歩行で歩く
狼型の魔物がいた
頭部からは長い耳と大きな赤い瞳が突き出していて、犬歯が
鋭く伸びている
その口には、鋭利な牙が並び、唾液が糸を引いて滴っていた
口からは時折炎が漏れ出ている
狼型と獣竜属の魔物達は、ハインツ達の方を睨みつけると、 威嚇するように
吠えた
その雄叫びには、物理的な破壊力すら感じられた
ハインツ一行を敵と認識したのか、鋭い眼光で睨みつけてきた
すると、その瞳が赤く染り、今にも襲いかかってこようとしたが――――――
それよりも先に動いたのは、虎の着ぐるみ姿のローザだ
魔物達から30メートルほど離れた位置から走り、急加速した
「ちょっ…!」
ハインツが驚きの声を漏らすが、彼女は気にせず魔物達に突っ込んでいく
狼型の魔物が、彼女の接近に気づき吠えた
すると、他の狼型の魔物達も吠え始めるが、その時には既に、ローザは
魔物達の目前に迫っていた
全身に闘気を纏い、両腕を前に構えて突進する
そのままの勢いで体当たりし、3匹の狼型の魔物はそれぞれ壁に激突して、
ぐったりと倒れ込んだまま動かない
その光景を目の当たりにしたハインツとカーリンは唖然としていた
ローザは一つ息を吐いたと思ったら、姿が消えた
「どこに!?」
カーリンが一瞬見失い慌てるが、打撃音に視線を向ければ、そこでは
次の標的を定めたローザが眼にも止まらぬ速さで拳を
叩き込んでいた
その姿はまるで瞬間移動をしているかのようだった
ローザが通り過ぎた後に残るのは、衝撃で吹き飛ばされた
狼型の魔物の死体だけだ
同族を殺されたのか殺意剥き出しで、次々と狼型の魔物が虎の
着ぐるみのローザに群がっていく
しかし、その判断は間違いだった
ローザは、地面に手をつき、まるで四足獣の様な体勢になる
虎の着ぐるみなためか、文字通り虎の如く姿勢が低くなり、
地面すれすれまで身を屈めた
そして、一気に飛び上がった
跳躍力は凄まじく、あっという間に迷宮の天井を足場にして
縦横無尽に跳ね回り始める
その動きはまさに野生の虎そのもの
ハインツとカーリンは、ただ呆然としてそれを眺めるだけだった
もはやローザの姿は眼では追える事は叶わず、拳をぶつける音と
足場を蹴る音だけが聞こえるだけ
しかも、それは一度ではなく何度も繰り返される
徐々に音が小さくなろうとした時、巨大な岩が衝突したような
轟音が響き渡った
ハインツとカーリンがぎょとして、そちらに視線を向けると
獣竜属の魔物が昏倒している
ローザがいつの間にか、獣竜属の魔物の傍に立っており、首筋あたりを
鷲掴み迷宮の地面に 叩き付けたのだ
「「なんだよ…これ…」」
ハインツとカーリンが同じ言葉を呟く
改めて見るローザの実力に戦慄していると、その本人は無邪気に手を振った
ハインツとカーリン思わず引き攣ってしまうが、タルコットと テレンスは『おおっ』と感心した声を漏らしていた
ローザの戦闘を改めて見て、『本当に新人冒険者なのか!?』と同時に思った
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