第25話~茨姫~Ⅵ

一方のかぐやたちはその炎の柱を確認すると、すぐさま即席ボートでの上陸を開始した。

「血税が燃えていくなあ」

「支払ってるのは私たちなのに、使い道決めるのは居眠りOKな会議じゃ国民も嫌気が刺すわねえ」

「それでも革命が起きねえのは、腐っても治安がいいからだろうよ。他じゃあ即戦争だ」

そう言いあうかぐやとニック。そしてフル装備した雪助が体育座りをし俯いていた。

そしてそれを心配そうに見るフォティアと時雨。そして時雨が口を開く。

「大丈夫!雪助くんなら助けられるさ!島にある塔の中に入ってからは、得意な室内戦だ」

精一杯の声援だった。

あの敗戦を体験した時雨とて雪助の実力でどこまでいけるのか、知れてしまっている。

そう一番怖いところ。


あの敗戦のときに確認した3体以外の童話がいた場合だ。


そうなれば、確実に雪助とフォティアは戦うことになる。

戦力が足りない。

わかってはいた。だが、それでもなにか言ってやりたかった・・・いつも彼を鼓舞する彼女はここにはいないのだから・・・

そこに眠姫が割って入った。

「葬頭河に潜って、お前のできる限界の答えを知ったかよ、嫌われ者」

その二つ名で呼ばれ雪助は身体を震わす。

「死んでも取り戻す覚悟はできたかよ?」

「そんな!眠姫さん!!」

時雨が止めようとすると雪助が顔を上げた。

「おあいにくと僕は死なない人間だ。覚悟はとっくにできた。自分に出来る最も相手を破壊できうる壊し方をずっと考えてた」

「・・・答えはでたのかよ」

「できなきゃ僕はここにこなかった。もう相手の手の内をばらす為の捨て駒だけじゃアリスさんは助けられない」

「それがその新しいスティンガーか?」

「僕にはこれしかないからね」

「使いこなせてねえだろ」

「本番には強いんだ・・・知ってるでしょ『烈火』さん」

にこりと笑う雪助に安心した様子の眠姫。

「ちげえねぇ」

そうしている間に4課と5課は島に上陸する。

そしてすぐさまかぐやの携帯端末が、敵影を確認する。

「両翼から既に上陸部隊・・・新自衛隊ね。その後ろから煤原のザコロボ・・・っとぉ、なかなか面白いものもってきたわねえ」

かぐやがにやりと笑む。

「なんだ童話か?」

「違うわニック、アメリカのステルス潜水艦『アンジェリカ』レールガンとミサイル積んだ鯨よ」

それを聞き顔を曇らすニック。

「任せなさい。そのまま走って!このままじゃあ囲まれるわ」

それを聞きニックが叫ぶ。

「2班は右!3班は左だ!1班はそのまま正面、時雨を全面に推して矢じりの陣形で突っ切る!弾幕切らすんじゃねえぞ!!!」

その号令と共に銃撃戦が始まった。

そんな中央で護衛されながら走るかぐやが端末をいじりインカムに命令する。

「レギオンちゃん『ばくばくぷんすか丸』」

『がってんしょうちのすけ!!!』

そう端末に映し出されると同時に、はるか洋上にある潜水艦に見えない攻撃が始まった。

まず始まったのは、ウェポンシステムの停止、そして急速潜行の指令だった。

アラートがなりやまぬ中に、各モニターには『レギオン侵攻』という文字が映し出されていた。

そのスピードと相手の先手をいく各操作系のハッキング。

さながらそれはあの災害とも言われるバッタの大量発生による穀物の根絶に等しい。

レールガンを打つ前に潜水艦はそのまま海深く沈んでいった。

「いい子よレギオンちゃん」

そして前を行く時雨がその望遠カメラの瞳で見つめる先に5mはあるであろう、ロボットを見つける。

「パパ、かぐや、フルアーマーが2体に国連仕様の義体部隊がいる。あと気がついてないのかその後ろにあの剣士がいる」

その報告を聞き、ニックとかぐやの表情が真剣なものとなる。

「・・・中期型って聞いてたが『ペシェ』の野郎か・・・」

眠姫がつぶやく。

「フルアーマーからの迎撃のほうが早い。時雨、一瞬でいいその2体を先に行ってどうにかして隙を作ってくれ」

「破壊しなくていいのパパ?」

「お前の相手はそいつらじゃねえ・・・お前にしか出来ない相手がいる。こっち見ずまっすぐ今度こそ突き進め」

それを聞き一瞬呆けた顔になるが、時雨はぐっと真剣な顔になるとうなづいた。そして雪助のほうを向く。

「雪助くん必ずアリスを助けてよ。彼女がいないとボクも調子でないんだ」

「ああ、必ず」

拳を付き合わせると、時雨のブースターが火を吹くそれと共に砲撃が迫る。両手に剣を構える前に大きく手を広げる。そして見えないなにかによってあらぬ方向に飛ばされる砲弾。

「メガマグネットドライバー」

そして敵の前で直角に上に低くギリギリに飛ぶとその手を下に向ける。

それとともに磁力の圧力によって義体は足が破壊され、フルアーマーは姿勢を崩す。

そしてくるくると高速回転すると共に、両手に刀を構えると、時雨は真の敵に向けて両手を振りぬく。

それを長い太刀で受け止める青年のアンドロイド。皮のベストに皮のグローブ、長く伸ばした黒髪を無造作に一まとめにしている。まじかで見れば普通の青年だ。

「うむ、やはり貴様がきたな奇術使いの二刀少女よ」

「ボクもこの時を待ってたよ!『桃太郎』!!!」


モデル『桃太郎』のペシェ

中期型近距離対アンドロイドタイプの童話シリーズ


「今度は腕でなく首を切り落とそうぞ」

「やれるものならやってみなっ!!!」

ズンッという上からの圧力に表情が歪むペシェ。

すぐさま横っ飛びに飛ぶ。

「逃がすか!!!」

そのまま着地せず時雨は二刀を振りぬこうと迫る。

「間合いも読めぬのか・・・うお!?」

グンッと今度は引き寄せられるペシェ。そこに時雨の二刀が振り抜かれる。

「くっ!・・・ふふふ、流石にこの前とは違うか」

「童話通り真っ二つに切ってやるよペシェ!!!」

そして遂に始まった対童話戦。

だがそれはシンフォニアのほうも同じだった。


「恋・・・」

「予想よりも早かったね・・・充電できた?」

恋に抱かれその唇には恋の唇とをつなぐ透明でか弱い橋が出来上がっている。

「こんなんじゃあイケないわ」

自らの股に手を入れるシンフォニア。そしてスカートから艶かしく伸びる太ももに垂れる愛液。

「う・そ。2回はイッたね」

「やだぁ・・・恋焦らすんだもん。最初のごほうびキスで1回イッただけだもの」

恥らうシンフォニアとその彼女を抱きしめる恋に3体のまるで覆面レスラーのような3人の筋骨隆々のふざけた豚の覆面をかぶった男が現れた。

「彼らにも僕らの愛を知らしめるかい?」

「豚に教える愛なんてないわ・・・」

そう言ってシンフォニアは3人に向かう。

「僕はどうしてればいい?」

「んふ♪これが終わったあとのこと想像してて」

「それじゃあ48手から行って見ようか」

「想像しただけでゾクゾクしちゃうわ・・・すぐ終わらすわ」

そして5つのプラズマを生み出すシンフォニア。

「さあ!今度はその皮を剥いで!肉を焼いて!!煮て!!!切り裂いて!!!!まっずいチャーシューにしてやるわ『3匹の子豚』どもっ!!!」


前期型対多人数アンドロイド近接戦闘タイプ


モデル『3匹の子豚』ドライシュヴァイン


その不気味なまでの身体と不釣合いなマスクは、凶悪な狼を知恵でなく力でねじ伏せたという風な圧力を持ってして、それらは現れた。

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