第5話~マッチ売りの少女~Ⅴ
そして部長室からでたかぐやと烈火は廊下を歩き、4課の棟まで向かっていた。
「ああ~もうどやされるのは勘弁だわ、鼓膜破けそう。ねえ烈火?」
「んあ?俺はあそこ入るときはいつも聴覚器官切ってるからな、なんも聞こえねえよ」
「ずるいわ~今度のメンテでその機能オフにしてやろうかしら?」
「おいおい!それだけは勘弁だぜ!それだったらあそこにいた連中を無傷で確保とかのほうがマシだ、ジジイの説教はマジ勘弁」
よほどイヤなのだろうげんなり顔の烈火。
「・・・で?どこの部隊かしらん?」
「ジジイ直轄の公安時代のツテのやつだな。義体が少なすぎる。・・・しかしよくレギオンをだまくらかせるダミー短時間で作ったな。レギオンのシステムって防衛省のお偉いさんも見れるんだろ?」
「くくく、一応魔女って呼ばれちゃってるからそれなりのことしとかないとね。まあ今回はアリスちゃんのお尻拭きよ。あ~この歳になって娘の尻拭きするハメになるなんて思っても見なかったわ」
「いつものことだろ。まあ今回は相手が相手で、こっちも雪助がしばらくおねんねだ。雪助の妹たちのほうにはなんて?」
「長期任務ってことにしてるけれど、ふぶきちゃんはカンカンになりそうね・・・・・っと、こんなところで会うなんて珍しい」
会話しながら歩いていたかぐやと烈火の目の前には、頭に包帯を巻き左目に眼帯、右手を骨折したのか三角巾で吊っているスーツ姿の青年がいた。
「やあ、ミセスかぐやにミス・・・でいいのかな?烈火?」
「ミスターだ恋」
そう目の前に現れたのは、傷だらけになった青年・・・特機2課隊長にして特機ランキング10位の地獄巡恋がいた。
「あらら痛々しい姿ね恋くん」
「恋人を・・・守れなくてね。悔しいよ」
恋は強がることなく、隠すことなく目じりに涙を浮かべた。
「あなたのそういうところナロードに似てて私はとても好きよ。人と人より人間らしくてこの上なく純粋ですもの」
「ありがとう、かぐやさん・・・よかったらお茶でもどうかな?」
「あら、じゃあ人妻の私がうんと慰めてあげるわ」
そういうと3人はエレベーターに向かっていった。
そして部長室にレギオンの声が響く。
「ぶちょ!かぐやとれんがいっしょ!いっしょ!!」
「・・・地獄巡から来たか・・・そのまま監視を継続。情報は防衛省のほうのサーバーにもアップロードしとけ」
「もっち!もっち!!」
『・・・・・うまくやれよかぐや』
岩谷は祈るように下を向いた。
エレベーターに乗ると烈火はさりげなくかぐやの横に入る。その巨体は天井すれすれであり、ほぼかぐやを覆い隠すように立つ位置になる。そして階数を押す恋・・・それは4課棟の連絡通路ある3階ではなく1階。
そしてかぐやがすぐさま携帯端末を取り出し、すばやく操作していく。
降りていく階数。9から7、6、5、4となったところでエレベーターが止まり扉が開くとともにすぐさま外に出る3人そしてそのまま、無人のまま1階に向かっていくエレベーター。
「いけるかかぐや?」
「誰に言ってんのよ、ダミーにここをこうして・・・ほい完了。いきましょ、おいしい茶葉があるの」
そう言って3階と4階の間に作られた薄暗い通路を進んでいく3人。
そしてレギオンが気がつく。
「ぶちょ!3人おそとでおはなしするみたい!いま出てきた」
岩谷の目の前の画面には特殊機甲部隊ビルの正面ホールを歩く3人がいた。
「口唇の動きから会話は読み込めるか?」
「らくしょ!らくしょ!」
そうして出される会話が字幕で映し出される。
「ボクも大人気なかったとはいえひどくないかい?全治4週間だよ」
「ざまあねえな恋!おめえは盲目的すぎるんだよ」
「そういう点で言ったら、うちのアリスちゃんとそっくりよねえ」
「今彼女は?」
「あなたの彼女に助けてもらってから、ずっと愛しい彼氏に付きっ切りよぉ。ママとしては嫉妬しちゃうぐらいに」
「そこは娘の成長として喜ぶべきところじゃねえのか?」
「いやん!いやん!もうちょっとアリスちゃんといれなかった時間を埋める為に私にはアリスちゃん分が必要なの!ましてや今日の分もう切れそうなんだから」
「なんだ話してもいねえのに充電できるなんて便利だな」
「昨日の脱ぎたて戦闘服クンカクンカしたわ」
「「うわ・・・・・・」」
「ちょっと!なんでドン引きなのよ!!!」
そう写される画面をみる岩谷の口角が上がる。
「防衛省サーバーに優先的にアップロードしとけ。監視はレベル2まで下げろ。あとは公安がやるだろう・・・」
そして岩谷が公安本部の友人に通信を入れる。
「おう、嵐山か件のうちの連中は外を出たぞ?え?いない?アップロードで出たの見ただろ?今や都市部に限っては昔の渋谷と一緒だ。見失っちまうのもしょうがねえが・・・こっちで探せ?手柄立てたいならてめえで探せ。ここから出るまでの面倒は見たし、それをカヴァーしちまうリスクはこっちのがでけえんだ、人使う癖やめて基本の歩いて探せ、増えてうれしいのは自分の銀行残高の数字だけでてめえの体脂肪率なんて誰もみたかねえんだ!」
ブチッと強引に通信を切る岩谷。
「ぶちょ、なんかたのしそう!」
「ふん、物事がうまくいくところをみるのが好きなだけだ」
ここにきてようやく岩谷の眉間の皺がなくなった。
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