第7話
「お前らなんぞいらん。帰れ!」
『シッシッ』と手で追い払うアクションをしながら吐き捨てた。
こんなものを貰っても困るだけだ。
信用ならない連中を身近に置くなんて疲れるだけだ。
「我らは御眼鏡にかないませんでしょうか」
「かなうかなわない以前にいらないと言っているの。ああ、そこの激突金髪馬鹿には用があるから置いていって。他の者はさっさと帰って。私を怒らせたくないなら『構わないで』と王に伝えて頂戴!」
本当にルフタ国王は何を考えているのだろう。
男をやれば喜ぶと思われているのか?
実に腹立たしい!
大体こいつらは何者なんだ。
「待ってください!」
代表である年長進人族の男とやりとりをしていたのだが、一人の男が間を割って入ってきた。
雪のような純白の髪に白い肌、瞳は吸い込まれそうなほど透き通った紫水晶。
種族は進人族か?
他の種族に見られる特徴が見当たらないのでそうなのだと思うが、纏っている空気が異質だ。
硝子のように儚いというか。
見た目は二十歳程で、美男子揃いのこのメンバーの中でも一際目を引く美しさだ。
執事服より王子様な衣装の方が似合いそうだ。
そういえば課金くじ引きで引いた中にあったな、王子様チックなのが。
あれ着せたいなあ。
神官ぽいものも持ってるがあれも似合いそうだ!
「なんでもします! 殺されてもかまいません! どうか……どうかお側において頂けませんか!」
「え、いや……」
どうした、白美人。
縋るような視線で必死に頼まれ、思わず引いてしまった。
他の連中も唖然とした様子でこちらを見ている。
「どうか……お願いします! やっと……会えぐああっ」
だから、そこからは入れないんだってば。
優男と同じ事をするなよ!
美人の間抜けな姿って何故かせつない。
「ともかく、あんた達は今すぐ立ち去るように! じゃ! よいしょ」
境界から手を伸ばし、優男の首根っこを捕まえて移動を選択。
「待ってください! お側において頂けるまでここを離れませんから!」
何の嫌がらせなのそれ。
聞こえなかったことにして、サニーと少年のもとまで一気に帰った。
ばびゅーんとな。
※※※
「ただいま」
「ぐええっ」
到着と同時に、優男を床に放りなげた。
ぐったりとしている。
首が絞まっていたようだ。
ごめん、わざとだ。
「兄さん!」
「ネル! ネ、え? …………ネ……え、ネル?」
どうした?
感動の再会と思いきや優男の足が止まり、その場に崩れ落ちた。
「ああぁぁああぁぁ……ネル……私のせいで……身を捧げてしまったんだね……私は、私はなんて愚かな兄なんだ!」
何なの急に。何スイッチが入ったの。
残念な兄だとは思っていたが、残念を通り越して危険な兄だったのか。
心を鬼にして少年と引き離すべきなのかもしれない。
「兄さん?」
「え、ちょ」
駆け寄った少年を見て、納得。
「少年! あんた、いつまでパンツ一丁なのよ!」
「あっ! 忘れてました」
『てへっ』とか言っちゃって、可愛くな……抜群に可愛いわ。
しかし、君がのんびりしていたから、兄が大ダメージを負っているよ。
「あのねえ、手を出したりしてないから」
「じゃあ、なんで裸なんですか!」
「パンツはいてるじゃない。脱いだのはこの子が自分から脱いだのよ」
「そんな馬鹿な」
「あ、本当だよ兄さん」
「あんたを助ける報酬を、私にご奉仕することで……」
「それはもういいじゃないですか!」
ズボンを穿きながら恥らう美少年。
ごちそうさま。
だが君は隙が多すぎるぞ、お姉さんは心配だ。
それはさておき。
「さて、早速だが報酬を頂こうかな」
「ほ、報酬? ……やはりご奉仕」
「だからそっちじゃない! もうそのネタはいいから! 掃除をして貰うんだよ、この城のね。もちろん、あなたにもやってもらうからね?」
「掃除ですか? やりますけど……そんなことでいいんですか?」
「いいの。でも、手抜きは許さないから」
それはもう、小姑のようにチェックしてやる。
城は広いから思っているよりきついぞ。
さあ、馬車馬のように働くがいい!
『(ルームアイテム):掃除道具ロッカー ★3』を取り出す。
各所に設置しているが、どうせなら新品を使ってもうらおう。
「今のは……ど、どこから……」
「ここに掃除道具が入ってるから。ぴかぴかにしてね」
「あ……はい!」
急に現れたロッカーを見て呆気にとられていたが、すぐに立ち直ったようだ。
少年は眩しい笑顔と気持ちの良い返事をし、兄を引き連れ城廻りお掃除ツアーへと旅立った。
あ、優男に一緒に来ていた連中のことや、こうなった経緯やらを聞いておけばよかった。
まあいい、後で聞くとしよう。
「サニー。一応、気をつけといて」
「かしこまりました」
敵意はないようだから大丈夫だと思うが念のためだ。
サニーがついているなら心配ない。
「貴様! 懐の物をだしてみろ! それは城の備品ではないのか!?」
「あ、え、っと…ちょっと見ていただけで、素晴らしい品ですね!」
「兄さん、僕は恥ずかしいよ……」
「ネル、違うんだ! あっ、従者様! お許しください! あああ!」
遠くから賑やかな声が聞こえる。
ずいぶんと楽しそうじゃないか。
混ざりに行きたい気はするが、私は放置してきた連中を地図で確認してみよう。
反応は四つ。
まだいるし。記号は『○』が一つに『△』が一つ、そして『×』が二つだ。
さっきの白美人は『○』だろうか。
いや、案外『×』かもしれない。
いずれにしても注意するに越したことはない。
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