第115話 なぜ僕にだけ

まだ若い頃の話だ。

小売業で店長として働いていた…お客様に、知能障害の子供と買物に来るお母さんがいらっしゃった。

車の助手席でシートベルトをしたまま、お母さんを待っているのだ。

愛想がよく、通る人に笑いながら手を振る子供だった…。

僕以外には…。


なぜか…僕が車に近づくと、唾を吹いてくる。

窓は閉まっているので、かけられることはないのだが、なぜか僕だけに敵意を向ける。


不思議だ…僕は何をしたのだろうか…。

他の人には、めっちゃ手を振るのだ。

僕にだけ!!


「面白い…」

僕は車の外に立ち続けた、唾を吐きだし続けていた。

来るたびに、僕たちは車のガラス越しに戦っていた!!


転勤になったので、その後は知らないが…いいライバルだったのかもしれない。

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