第46話 こういうときは…

 初めての海外出張…韓国だった。

 いい思い出が無い…。

 テーブルに大量に並べられた小鉢、いい気になって食ってたら…メインが出てきた。

 タダの御通しみたいなものらしい…知らずに、お通しで腹いっぱいになった。

 寿司屋に連れて行かれた…。

 緑の切り身?と思ったら大量のワサビが白身に透けているだけだった…。

 マグロの赤身…シャリシャリの冷凍状態で出てきた、唐辛子を溶いた醤油に韓国のりで巻いて食べる斬新な寿司だった…凍った刺身に味は感じなかった。

 唐辛子の枝に練り唐辛子を付けて食べる…もはや狂気を感じた。

 鉄板焼き…イカをハサミでちょん切ってウネウネ動く足を食わされた…吸盤が張り付き生臭く…死にかけた…。


 最終日…油断していた。


 私の胃は唐辛子に遣られて麻痺していたのだ…。

 甘いものが、虫の佃煮しかないのだから…。


 私はキムさんの自家用車で酔っていた…そう乗り物酔い、数年ぶりだ。

「Hey Mr Kim…」

「yeah」

「I'm bad condition…」

「Oh~Are you all right?」

「……No…feel sick…」

「Ok…all right…」

 なにがall right なのか解らなかったが、車に揺られること数十分…限界だった…。

「Hey Mr Kim…」

「yeah」

「Please stop the car……」

 正確に言うと…プリーズが言い終えてないと思う…。

 僕は吐いた…盛大に…口からチゲ鍋みたいな色の未消化のイカの足などを…リバースした…リリースしたのだ、母なるガイアに…。

 正確にはキムさんの車内に…。


 空港で別れるまで「I’m very sorry…」を繰り返した。


 仕返しなのだろうか…。

 キムさんはコンビニに立ち寄り、僕にドリンクを差し出した。

 口を、すすごうと瓶を開け飲み込むと…甘い…鬼のように甘い…吐き気が戻る。

 そう…ハチミツ飲料だった…。


 僕は再び吐いた…。

 コンビニの前で盛大にチゲ鍋放出だ。


 店員は優しかった…僕に水を差し出した。

 でも…入れ物は、さっきのハチミツ飲料…甘い水は気持ち悪かった…。


 こういうときは、スポーツドリンクとか!ミネラルウォーター!

 吐いてる奴にハチミツはダメ!


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