礼人は警察に逮捕された。しかしこのことは報道されることは無かった。

後日Sは率いていたカラーギャングの抗争から殺された、という事になっている。

Oは「自殺」ということで話が落ち着いた。

木崎は怒っている。

「なんで、あいつを裁判にかけないんだ。まったく上の連中と来たら。。。。」

と椅子をけった。

礼人の「消した」人物はほとんどすべてが「寄生虫」のような人間たちだ。

「巨大な利権に住み着く寄生虫」だった。

彼等は「たたけばホコリ」が出る体だ。

事実、彼らの脱税、人身売買、なんていやな過去がほじくり出された。

それを明らかにすることは「警察組織」の職務怠慢となってしまう。

よってこれらの「殺人」は事故、または抗争という取って付けた事件で片付けていた。

礼人はその時「ヘリコプター」でとある場所に連れていかれた。

そこがどこなのかもわからない。

恐らくは島のような場所であろう。

「俺が裁判にかけられる」とは礼人も思ってはいなかった。

知らない場所で「殺される」それがヘマを打った殺し屋のさだめだ。

それがどこなのか?礼人には分らなかった。


ヘリはどこかの島に着いた。無人島同然の島なのにちゃんとヘリポートが作られている。

「着いたぞ。降りろ」

揺れるヘリから礼人と警官は降りた。

ヘリはすぐに離陸して元の場所に戻っていった。

「さあ、ついて来い」

礼人には手錠も腰縄もされていなかった。

「逃げれば銃殺」ということを意味している。

警官を殺す。という考えも浮かんだが、どうせこんな島では逃げることもできない。ついていくことが最善だった。


しばらく歩くと、そこに「トンネル」のようなものが見えた。

警官は礼人が「自分についていくことしか」選択肢がないことをわかっている。

「クライムヘブン、、、聞いたことがあるだろ?それがここだ」

「え」

クライムヘブンとは前述の「裁判にかける必要のない人間」の格闘場だ。

真っ暗なトンネルを歩いていくと、頑丈なドアがあり、前にボディーガードの黒人が二人、門番をしていた。

「新しい選手を連れてきた。入れてくれ」そう言うと門番はうなずきドアを開けた。

礼人の目の中に「閃光」が入ってきた。


外は人気のない島なのに、ドアをくぐれば世界が違った。

恐らくは歌舞伎町やススキノの比ではない。広い場所に昔の遊郭のような作りがしてあった。さらに奥に進むと、格闘場がある。

「これが、クライムヘブン。。。。」礼人は言葉を失った。

「おまえも運がいいな。殺ったのが「寄生虫」ばかりだったからな、おかげでここで死ぬまで殺しあえるぜ」警官は冷たく笑った。


リングはフェンスで囲まれていて、時にこのフェンスに電流が流れる。

ここの電流は「気絶」してしまうほど強く、時にこれによって死ぬ奴もいる。


呆然としていると警官が礼人の手をつかんだ。

「次はお前の番だ」そういってつかんだ手をフェンスの中に放り出した。

不意の出来事で礼人は体がフェンスのゲートの中に入ってしまう。


「レディー アンド ジェントルマン。今宵もリングが血に染まります。さあ。今日は何人死ぬでしょうか?」

いけすかないアナウンスだがこの言葉に「変態」達は興奮する。

声を高らかに上げる。

「さて今宵は初めての選手が一人、名付けて「静かなる殺し屋」くろさきーあやーとー。」

「うぉぉ」会場は唸る。

「対するは向かう所敵なし。「不敗の帝王 高杉 勝」


「皆さまご存知の通り、ここでの勝負は「先に死んだ方が負け」となります。さあ、ベッドをお願いします。」


このアナウンスに「変態たち」は持て余した財産をどちらが勝つか、に賭ける。

高杉という男は40代で中肉中背だが体の動きは「切れる」

簡単に勝てる相手ではない、そう礼人は思った。どうやら武器を使っていいようだった。高杉は日本刀を手にしている。

「どれをお使いになりますか?」といって武器を見せられた。

拳銃以外、日本刀、青龍刀。ナイフ、短剣が並べてあった。

礼人は迷うことなく「短剣」を選んだ。


「さあ、今夜命日になるのはどちらか?」

巨大な電光掲示板があり、そこにどちらが勝つか、倍率が表示されている。

高杉勝0.9倍 黒崎礼人112倍

完全に礼人は「大穴」扱いだ。

「フッ」礼人は笑った。

「なんだ、おめぇ死にたいのか?」

「あいにく俺の生命線は人より長めになってるんだよ」

高杉はこの言葉に興奮した。


「ファイト」とゴングが鳴った。


高杉は日本刀で礼人を斬りつけるが、紙一重で礼人はそれを避ける。

まるで「踊っている」ようだった。

高杉に疲れが出ると礼人が攻撃に出る。

「短剣」で高杉を突く。

高杉という男は「タフ」らしい。

やがて高杉の右手の筋を短剣が切った。

高杉は「うっ」とうなったが、すぐに左手に日本刀を持ち替えた。

そして再びの攻勢にでる。

これに礼人は短剣を使って受けた。

鉄と鉄がぶつかり合う。火花がおきた。

何度目の火花がおきたとき、高杉は刀を上段に構えた。

その時礼人の短剣の先は高杉の首を刺していた。

高杉から力が抜けてその場に倒れる。

短剣をゆっくりと抜くと、それを鞘に納めた。

血が「噴水のように」首から噴き出してくる。

それを見ていた、観客は興奮する。

血の匂いが会場に匂った。


「カンカンカン」とリングが鳴った。


「ウイナー 黒崎あ~や~と~。不敗の帝王高杉勝やぶれた~」


しばらくしてリングのゲートが開き礼人が出てくる。

「やるじゃないか。お前でたっぷり稼がせてもらうぜ。」

そういうと警官は出口に向かった。


高杉の死体はすでに運ばれていて血も拭き取られていた。

こうして「生き残ることが出来た。」




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死刑宣告者の終着点 若狭屋 真夏(九代目) @wakasaya

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