これから

 そんなことを言ったとはいえ、何から手を付ければいいかがわからないのが現実だった。

 建築方法なんかについては、図書館の本を読んで、どうにか俺も軽い作業はこなせるようになったが、本格的な家となると無理だし、いいところ解体ができるって程度だ。

 壊れかけてる家については、直すという手もあるが、そもそも現状住む人間がいないのにどうしろという話だということにもなって、結果的には図書館にミラエさんの家にキジリというあの剣士の家を直すことで収まっている。


 後は、畑の植物が育った。どうやらこの世界特有の芋らしいが――ひとつだけおかしな実をつけていた。

 彼女に聞いてもわからずじまいで、図書館でも似たような実は見つからない。見た感じでは、実というよりは種な気もしないでもないが、まあ同じようなものだろう。


「ふう……こいつで収穫終了っと。また、少し土寝かしてからだな。てか切り株と岩も処理しねえと」


 手の泥を払う。

 すると、家からでてきた彼女とタイミングが重なった。


「おっと、すまん」

「……ねえ、あんた」

「ん? なんだよ」

「いや、別に家もう誰も住んでないし、あっちに住んでもいいはずよね?」

「あぁ、もしかして邪魔だったか。ていうか、男女が同じ屋根の下ってのも、よく考えればやばいもんな」

「そういうのはいいのよ! なんで、わざわざアタシのところにいるのってことよ」

「なんでっつわれても……なんでそんなこと聞くんだ?」

「な、なんとなくよ」


 …………なんか顔赤いな。


「熱でもあんのか?」

「なっ、ちょっ!」


 額に手を当てたら固まっちまった。微熱ある気がすんな。


「も、もういいわよ! 健康なのはわかったでしょ!」

「いや、微熱ある気がするけど……まあ、元気そうだけど無理すんなよ」

「はぁ……なんでこんな奴のこと――」

「俺のこと?」

「なんでもないわよ! ほらっ!」


 彼女はそう言うと、俺に何かを押し付けて家の中に戻ってしまう。

 渡されたそれを見ると、服だった。この世界のなんだろうが、きてみると俺のサイズにぴったり合わされている。


「……不器用な奴だな。こういう場合はちょっと空気を読まない行動をしてやれば、さらに面白い表情が見れるんじゃないか?」


 なんとなくいたずら心が働いてしまった。

 家の中に入って、彼女の後ろから――耳を軽く指で挟んでみた。


「ひゃっ!?」

「はははっ!」

「な、何すんのよ!」

「いや、なんかやってみたら、いい反応しそうとか思ったけど……思った以上に可愛い反応でなんか、っ」

「笑いこらえてるんじゃないわよ!」

「ははっ、すまんすまん。あぁ、これありがとうな」

「……ふんっ」


 そうだ、ついでにこれを機会に聞いてしまおう。


「そういやお前の名前ってなんて言うんだ?」

「あれ? 言ってなかったかしら?」

「聞いてねえな」

「アタシの名前は――アリシア・セラフィエよ」


 何故か立ち上がりどうどうと彼女はそう名乗った。


「アリシアね。そっか」

「何よ……」

「いんや、なんでもね。可愛くていい名前じゃねえの」

「だから、可愛いとか言うなー!!」

「はっはっは!!」


 なんつうか、最初は不安だらけだったが。案外、楽しい日々を過ごせそうだ。

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ブレイブ・ファクトリー~人形使いのRe:すりーぷ~ Yuyu*/柚ゆっき @yowabi_iroha

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