ひとまずの決着
「いででで……」
「ほら、動かないでズレちゃうから」
それから数日が立って、俺は彼女の家で包帯を変えられていた。
「魔法で治せたりしないもんなのかよ」
「前のは傷が表面的だったからできるけど、今回は結構深いし広いから、自然治癒のほうが今後を考えるといいわよ」
「今後?」
「魔法での治癒になれちゃうと、体が傷を治す能力が低下しかねないの」
「やっぱり、それなりのデメリットはあるんだな」
「そういうこと。はい、できた」
服を着直しながらそうつぶやく。ていうか、一応洗ってるとはいえ、結構いざこざあってボロボロになってきたな。
「町の復興は進んでるのかね」
「アタシが知るわけ無いでしょ。まあ、近々手紙を送るとはミラエに言われたけどね」
「……言ってるそばから、なんか飛んできたぞ」
看板にコンドルが降り立って、ベルがなる。
「ちょっと、見てくるわ」
「おう……さて、じゃあ畑でも見てくっかな」
俺も一緒に家を出て、横の畑にいく。
勇者の武具はじょうろにもなれて、そのじょうろで育てると成長が早いらしいことが最近判明した。
「お、花咲いてるじゃねえか。もともと成長早い種類だったのか?」
乾いた土に水をやろう。
「ちょ、ちょっと! ランサー!」
「あん? どうかしたか」
「町に行くわよ!!」
「……は?」
そのまま流れるように引っ張り町に連れて行かれた。
町にたどり着くと、そこには予想外の光景が広がっていた。
「こいつはまた……」
建物は数件除いて放置され、人もとにかくいなくなった。
最終的に町に残っている状態なのは、ミラエさんと剣士のふたりだけだったようだ。
「おい、魔女。何故きた!」
「何故って、そもそもなんなのよこの状況!」
「それは……魔族が襲ってきたことで、外に出ていくというやつらが後を耐えなくてな。町に愛着も何もなかったようだ」
「そんな……」
剣士はぶっきらぼうながらにそう話してる。俺はその間にコソコソと少し離れた場所でミラエさんに話しかける。
「それで、実際どういうことなんすか」
「キジリが言ってることも間違いじゃないのよ。ただ、その理由がちょっとね……」
「……なんとなく想像はできましたけど」
「まあ、魔女のせいで魔物や魔族に襲われた。とかそうやって都合のいい理由に使われちゃってね。たったひとりで襲ってくるようなことありえないのに」
「反りが合わないんじゃなかったんですか。あのふたり」
「反りが合わないというか、どっちも感情表現が苦手なのよ」
遠くてはふたりがしんみりしてたと思ったら、言い合いに発展してるし。
「はぁ……おら、そこらへんでやめておけ」
「……ふんっ」
「もともとボクはこいつと何かするつもりなどない!」
「素直じゃねえやつらだよ。何言い合ってたかはしらねえけど」
てか、なんで俺のいうことはすんなり聞くわけ。
「とりあえず、これからどうするか決めなきゃ行けないんじゃねえのか」
「これからって……どういうことよ?」
「俺含めてになるが、この町をでて別の町にいくか。意地でもここに残って気合で復興させるかってことだよ」
まあ、さすがにこういうのは悩むと思うけど――
「やるにきまっているだろう。父が守ってきた町を捨てるわけがあるか!」
「そうよね。この本を放置するわけにも行かないし」
町民のおふたりは即答だった。
俺はちらっともうひとりの姿を見る。
「何よ?」
「お前はどうする……一応、最寄りの町ってことになるが」
「まあ、手伝ってあげなくもないわ。ここじゃない町だと、いろいろ不便だし」
「そうかい……そんじゃ、一宿一飯の恩義というかそれ以上の恩だし、しばらくは付き合うよ」
「怪我が治るまでは無茶しちゃダメよ?」
そういう不意打ちの心配やめてくれねえかな。
「おう、わかってる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます