魔法ってこんなんなのか!?

 家に入れてもらって、飯などを済ませた後の話。

 勇者についての新しいことがわかったということで、教えられる。


「まず、勇者には武具に対して特有の技が身についているはずらしいわ」

「特有の技?」

「そう。昔の勇者だと、剣なら剣から斬撃を飛ばす技とかね。その全ては魔力を使って行うものらしいわね」

「魔力か……そもそも魔法どころか魔術すらなかった世界に生きてきた、俺にそんなもんがあるのか?」

「魔力は何も本人の体にしか存在しないわけじゃないわ。空気中とかにもあるの。まあ、魔力の本流と呼ばれる地中にある魔竜脈の位置次第なんだけど」

「ふうん……じゃあ、まあ方法がわかれば使えなくはないんだな」

「そういうことになるわ……まあ、本当は魔法は自分の魔力を使うのが一番なんだけどね」


 そのことをいう彼女の表情はどこか曇っていた。昔に関係するんだろうか。


「んで? 俺の技はどっかに残ってなかったりしねえのか?」

「それが、本当に紋章以外の情報がないのよね……だから、どうにか自分で見つけなさい!」

「前から思ってたけど、真面目そうに見えてかなりアグレッシブだよなお前!」

「異世界にきて、動物に襲われて死にかけてた勇者には言われたくないわね!」

「言わせておけばあ!!」


 どさくさに紛れて、どこか触ってやろうかとすら思ったが、人形に足を掴まれてすっ転んで諦める。


「……まあ、いい。そんならとりあえず、その魔力の使い方とやらを教えてくれ」

「人によるけど、基本的には丹田に力を入れて、力を感じたらそれを道具や魔法を発動させる場所。基本的には手まで移動させて放出するイメージね。だからこの場合、武器に魔力を移動させて放つ感じだと思うわ」

「鍬とか斧でどうしろっていうんだか」

「まあ、とにかく実践あるの見よ」


 そういって、移動してきたのは畑だった。


「なんでまたここなんだ?」

「鍬の技なんてここ以外のどこがあるのよ」

「そいつは俺もしらねえけどよ」


 俺はしぶしぶと手に鍬を取ろうとしたが、止められた。


「まずは魔力を使う基本からよ」

「……おう」

「簡易的な魔法教えてあげるから。これは、才能あろうがなかろうが魔力あれば使えるもので、生活でも戦闘とかの荒事になっても全く役に立たない魔法よ」

「んなもんまであるんだな。それで、どうやるんだ?」

「さっきいったみたいに丹田に力を込めるイメージで、魔力をためて手に移動させる。そして水のイメージで外の放出するの」

「うおおおおおおおお!!」

「そんな叫ばなくていいわよ」

「……………………」


 俺は静かに集中してみた。

 お、たしかに今まで感じたことのないようなエネルギーを感じる。これを、ゆっくりと手に移動させるんだな。

 血管か何か知らんが、その辺を伝って手にエネルギーを感じるようになったぞ。


「おらああっ!!」


 それを一気に放出させる!

 実行した瞬間、俺の手からどぼっと液体がでてきた。


「なかなかセンスあるわね」

「これ、何がでたんだ?」

「汗よ」

「気持ちわりい!!」


 今、汗がコップの半分くらいの量でたぞ!?


「まあ、そこまでできるなら鍬持ちなさい。さっきと同じ感じでやってみて」


 俺は鍬を両手でもって、同じ容量でエネルギーを鍬の先の耕す部分にためる。そして、勢いよく鍬を振り上げて、畑に叩きつけた。


「うおおおおおおおらああああああ!!」


 鍬が土に触れた瞬間。9つに区分しておいた畑のブロックの1つすべてが一気に耕された。


「うおお!?」

「綺麗に耕したわね」

「でも、これ勇者か?」

「まあ、食糧難の国とかは喜ぶんじゃないかしら? 土の状態悪いところとか」


 触ってみると、土の状態も滑らかになっていい感じになってる気がするな。

 でも、マジで勇者か?

 しつこいようだが、勇者かこれ?

 その時、またあの視線を感じる。


「そういえば、この前から視線を感じるんだけどよ」

「視線? こんな森の中の家で? しかも、町民全員が嫌ってるであろう家で?」

「そんな卑下すんなよ。まあ、そんで確認してみたらでかい足跡とこの毛が残ってたんだよ」

「この毛は……うん、クマね」

「クマ? クマがなんで俺のこと見てるんだよ」

「そんなことアタシが知るわけ無いでしょう?」

「…………そうだな。すまん」

「謝られてもそれはそれで困るけど……」


 こういう時の正解ってわからないよな。

 話しているうちに視線は消えていた。

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