第2話 分かつ世界

 前々から、世界状況が緊迫していることは、わかってはいた。いずれその時が来るということも、わかってはいた。二つの思想の衝突が実力行使された。生まれ育った都市も星も壊れ、残った人類は宇宙に出ていた者だけになった。一握りの富裕層と研究者や開発者、運よく試験移住に抽選で選ばれた一般人、そして研修に宇宙へ出ていた学生。


 地球を破壊して終わったかに思われたが宇宙にまでも、その思想争いは着いてきた。まるで人から切っても切り離せない呪いかのように。


 その壮絶な争いに訓練艦で研修中だった実と桂は巻き込まれた。研修は船外で開発されたばかりの機械操作と、システムを実際に動かすというものだった。宇宙へ出るのももう五度目であり徐々に実は宇宙空間にも研修にも慣れてきていた。のんびりと地球の見下ろせるテラスで友人と談笑をしていた。そしてそれは凄まじい光を放って起きた。宇宙から崩壊する地球を目の当たりにし星へもう戻れない事を知った学生たちは絶望しパニックに陥ていたが、数日でそれもひと段落し、これからどうするべきか艦のみんなで考えるべきであると話しがまとまりだした。実はその中心近くでなんとか事を収集させるため奔走していた。なんとかこれを機に桂ともう一度やり直せないかと思いながら。ここで気丈に振る舞えば、一人前の人間のように見え桂も認めてくれるのではないかと一抹の希望を抱いて。


 地球が崩壊して二日後、突き上げるような激しい衝撃が艦を襲ったかと思うととにかく脱出口へと向かえという緊急避難サイレンが鳴り響いた。動揺は感染し、誰もが数箇所ある脱出ゲートへ押しかける。実は脱出ゲートへ向かう友人たちとわかれ、桂を探さなければと人の流れに逆らい、懸命に走った。


 広大な宇宙ではぐれてしまえば二度と会うことは出来ない。桂はきっとまだ艦内のどこかにいる。まだ間に合う。離れたくない。絶対にだから、だから探さないと。


 本能的に動いていた。勢いよく閉じかけるロックゲートをすり抜ける。走るスピードを緩めず次のロックゲートへと迷うことなく突っ込んでいく。けれど目の前で艦の隔離用ブロックゲートは閉じ、再び開くことは、無かった。壁と化したロックゲートに衝突し倒れる。呆然と二度と開くことのない扉の前に崩れ落ちる。


 嗚咽交じりに、何度も何度もその名を呼んだ。


「けいちゃん」

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