第14話 カオステラー

「カオステラー?」


 僕はエクスの言葉を聞いて後ろを振り返る。

 すると、後ろを振り返った際に何やら白い何かが横切った気がした。

 そういえば、さっきから羽のような白いものがフワフワと空中に浮かんでいる。


 僕はその一つを掴み顔に近づけ。


「鳥の羽? キレイだ... ...」


「こんのおおおお!!!」


 羽に見惚れているといきなり、タオの愛用している白い槍が目の前を通過。

 反射的に避けることに成功したが、タオが突然斬りかかってきた事に動揺して尻餅をついてしまう。


「ちょっと! タオ! 危ないじゃないか!」


 タオはまるで戦闘中のような険しい表情をしている。

 そして、間髪入れずにもう一撃。

 これは避ける事が出来ない... ...。


 そう思い、目を閉じる。


「あれ? 痛くない」


 タオは槍使いの名人でどんなヴィランもその槍で一突きとしてきた。

 タオが僕に本気で槍を突く。ケガで済む話ではない。当たり所が悪ければ致命傷になるのは間違いないのだが数秒経っても何も感じない。


 恐る恐る、目を開けると目の前には白い壁が。

 _____壁?

 何故か僕の手は自然とその壁に触れていて感触が直に伝わってきた。


「... ...柔らかい。これ、羽だ... ...」


 どうやら、白い羽によりタオの渾身の一撃から身体を守られているようだ。

 そして、驚く事にその羽は僕の背中から生えている。

 

「暖かい... ...」

 

 触れた瞬間に血が通っているのが感じ取れた。

 

「これ、動かせるんじゃ... ...」


 四肢を動かす要領で丸まっていた羽に力を入れると膨張した球体が破裂するように宿の壁や天井を破壊。

 そして、その羽を目いっぱい広げると羽と羽の間の長さは5m以上ある事に気付いた。


「き・綺麗だ... ...」


 不謹慎な発言だったかもしれない。しかし、思わず口に出てしまった事。

 雨に打たれ若干羽が濡れて重たい感じがするが、羽が付いているという事は飛ぶことが出来るという事ではないだろうか?


「スペア... ...。君がカオステラーだったなんて... ...。嘘だろ... ...」


 宿が破壊された衝撃で四人は宿の外に投げ出されていた。重傷ではないものの所々怪我をしているようだ。

 これは僕がやった事... ...。

 

 _____カオステラー。


 まあ、この姿はもう人間でない事は確かだ。

 そうか... ...。そうか... ...。

 うん。うん。


「... ...ごめん」


 気の利いたセリフも弁解の言葉も見つからず、思いついた言葉は謝罪の言葉としてはありきたりなモノだった。

 そして、羽を動かし天に向かって飛翔し、その場を離れた。



 □ □ □



 行く当てのない僕が降り立った場所はみんなでピクニックに行ったあの町はずれの丘だった。

 エクスが見付けてくれるはず... ...。と考え、滝のような雨を全身で浴びながらも直立不動でエクスを待ち続けていた。


「スペア。ここにいたんだね... ...」


 丘の頂点から曇り空には似合わない、エクスの青い髪が見えた時、僕は嬉しさのあまりに全身の毛が逆立った。


「エクス... ...。どうだい? 僕、女の子になったよ。ね? これなら、結婚出来るよね?」


 僕は念願の女の子の身体をエクスに自慢するように見せつける。


「ごめん。それは出来ない」


「え? なんだよ。僕の事好きって言ったじゃないか... ...」

 

 ... ....分かっていた。

 そんな事を言われるのは初めから予想してた。

 でも、今の僕には道化を演じる事くらいしか思いつかなかった。


「スペア。君はカオステラーだ。僕は君を倒さなくちゃいけない」


 やっぱり、戦う事は避けられないか。これが、宿命いや、運命。

 エクスに遅れを取りながらも、レイナ・タオ・シェインも合流して。


「はあはあ。いい? みんな、あいつはスペアじゃないわ。カオステラーよ。私情は捨てなさい」


「そんなの分かってます。まあ、元々、私情なんてものはありませんでしたが... ...」


 レイナ、シェイン、タオが武器を僕に向け戦闘態勢に入る。

 この四人と戦う事。それが、僕の運命だったのかな... ...。

 

 戦闘は逃れられないと覚悟を決めると目の前に複数のヴィランが現れ。


「クルルルルアアアアア!!!」


「よし! 行くぞ!」


 ヴィランの鳴き声を合図に、望まぬ戦闘が始まった。


 

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