第3話 女神様の過去

宿に向かう途中にも

レイナとドリーミアは目を輝かせていた

「はーぁ 今日は楽しかったです」

「そうだね〜早く宿に行きたいわ〜」

「シェインは体のあちこちが痛いです・・・」

「え、シェイン大丈夫!?」

「姉御は覚えてないんですかねぇ・・・」

そんな風にゆっくりと会話して歩いていた。

ちょっと宿が見えたかなって頃だった


「レイナ待って!」

「えぇっ!?」


慌ててレイナの手を握ったなぜなら・・・


「ヴィラン!?ここにまで・・・」

「っ・・・」

僕の背中に震えた手の感触があった

見るとドリーミアが怖がって目を閉じていた

「ドリーミアは休んでて?」

僕は優しく微笑んだ

でも、ドリーミアは僕の背中から出て、

「いやです。私も戦います!

守られてばかりは嫌です!」

「そうですか。では、新入りさん、ドリーミアちゃんも

行きますよ!」

--------------


宿についた僕達は、

ドリーミアに呼ばれ、話を聞くことになった

今は午後8時。


「今まで言ってませんでしたね。

私の過去をお話します。」


「私は、空の上で産まれました。

そこそこ恵まれていて、『いつかは管理塔の女神だな』

なんて期待されていました。なので夢の監視の仕方

悪夢の解決法など、様々な方法を母から教わっていました

・・・でも」


「「「「でも?」」」」


「私が10歳の時、あの怪物・・・ヴィランが来ました。

当時父は管理塔の警備員、母は夢の管理女神

私は母のお手伝いでした。私が母のいる最上階に

続く階段へ登っている途中でした・・・」


「それで?」


レイナは優しく声をかけた。

安心したのか、ドリーミアは1度まばたきをして続けた。


「下の方が騒がしくて、見に行ってみたんです。

そしたら父があの怪物を1人で止めていたんです。

私わけがわからなくて・・・その時」


『お父さん!どうしたの!?貴方達誰!?』


『っく・・・分からないが侵入者だ。

ドリーミアは早く母さんと逃げろ!』


『っでも!お父さんが・・・』


『大丈夫だ、ドリーミア

必ず行く。だから逃げろ!』


「父はそう言って1人で怪物に立ち向かって行きました。

もう私は怖くて怖くて。無我夢中で階段を駆け上がって

やっとついたんです。最上階の母の元に。」


「そうなんだ。それでお母さんは・・・?」

シェインがいつもより暗めの声で訪ねた

でも、どこか優しげに。


「母の元に怪物がいました。下にいた怪物よりも

もっと大きな・・・」


「・・・」

タオはとっても悲しい顔だった

ドリーミアは少し目を伏せて言った


「もちろん母は凄い魔力を持っています。

そんな怪物、すぐ倒せるはずなんです。

でも母は、『 今まで戦ってきたなにより強い!』

って言いながら苦しい顔で戦っていました。

そして・・・」


『お母さん!お父さんが言ってた!

2人で 逃げてって!だから逃げよ!!』


『そうね。でも逃げれない。

ここは思い出の場所ですもの。』


『 でも・・・お母さんもうボロボロでしょう!?』


『ねぇドリーミア。女神が次の女神にやる

儀式は覚えてる?』


『お、覚えてるよ。『 自分が次の女神にふさわしいと思う

相手に、自分の全魔力をあげる』でしょ? 』


『そうね。今が・・・その時よ』


『な、なにいってんの。まだお母さんが女神でしょ?』


『ごめんね。お母さん、もう疲れちゃった。

だから、ドリーミア、交代だよ。』


『や、やだ!疲れてるなら休んでていい。

その間私がやる!だから

お母さんが死ぬのだけはダメ!! 』


『ドリーミア。お母さんもう魔力はほとんどないの

だから、ごめん。この怪物を倒したら、交代。 』


『やだ!やだよ!その魔法はお母さんも死んじゃう!

そんなの嫌ぁぁぁ』


『いつまでも元気でね ドリーミア・・・ 』


『 嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!』



「・・・辛い・・・過去だったね。」

「なんか聞いちゃってごめん」

「いえ。もう気にしてませんし。でも・・・

やっぱり、あの怪物に会うのは・・・怖い・・・です。」

ドリーミアは笑っていたけど、涙目だった

そりゃぁ大好きな両親を殺した怪物が

怖くないなんて人いないだろう。

「あの・・・今日はもう寝ませんか?

時間的にも・・・ドリーミアちゃんも疲れてるだろうし」

「そうだね」

「だな」

「すいません。変な気分にさせてしまって・・・」

「気にしないで。ドリーミア」

僕達は、女子の部屋を後にし、

自分達の部屋へと戻った。

「ドリーミア・・・可哀想だな・・・」

僕はポツりとつぶやき目を閉じた。


---------------

私の名はドリーミア

雲の上に住む夢の管理人

『女神』です。

普段はおっちょこちょいで、ドジな私でも、

やる時はしっかりやります。

こんばんは

私は今宿のベランダにいます。

眠れないから。布団に慣れないとかじゃなく。

ここで出会った皆さんに過去を話したら

悲しくなってしまったから。

やっぱり会いたいです。お母さん、お父さん


時刻は11時。


本当はずっと会いたかった。

でも、悲しい顔じゃお母さんもお父さんも

きっと悲しむから、私はいつも笑ってた。


泣きたい時も、誰かにこの気持ちを聞いてほしくて

たまらない時も、出会ったみんなといる時も。


「お母さん・・・お父さん・・・元気かな・・・」


誰にも聞こえない小さな声で呟いた。

気づいたら、頬が濡れていた。

そっか。私、泣いてるんだ。


今、すごく嬉しくて悲しい。

皆さんに私の気持ちを話せて、共感してくれた嬉しさと、

思い出してしまった悲しくて辛い過去。

どうしたって、過去には戻れないけど、

もう2度とお母さんとお父さんには

会えないけれど・・・


「会いたい・・・です ずっと笑っているのは・・・

すごくすごく・・・辛いです。」


気づけば涙で溢れていた。

私の弱い心は今にも折れそう。

辛い。ただそういうだけ。

嘘の笑いは嫌なんです。

心から笑いたい。

そんな日が私に来るんだろうか。

誰かに慰めてもらいたい。

いつでも優しくて、時に怖い

でも、私を好きでいてくれた

あのお母さんの優しい暖かな手で。

優しく私の頭を撫でてほしい。


それと同時に1人にしてほしかった。

いつも怖そうな顔をしているけど、

すごく優しかったお父さん。

いつも私をわかってくれて、

1人にしてくれる時は

そっとしてくれて、寂しいときは

そっと「どうしたんだ」って

言ってくれた。


「神様・・・1度で・・・いいです。お母さんに・・・

お父さんに・・・会わせてください」


って、私が神ですよね・・・

ははっもう・・・私、本当、馬鹿。


「わがままだなぁ・・・私。

私の・・・願いなんて叶うわけ・・・ないじゃん」


私は、涙を拭った。

それから笑って、お母さんとお父さんに

『おやすみ』って言って

自分の部屋に戻った。

そこでは、レイナさんと、シェインさんが

スヤスヤと寝息を立てて寝ていた。


「おやすみなさい」


軽くつぶやく。

今は午後12時を回ったところ。

あと、数時間すると、お母さんとお父さんの

思い出の場所に戻るんだ。

絶対に取り返す。あんな悪魔に渡さない。

あそこは皆の素晴らしき夢を見る、

私の大好きな場所。


「でもやっぱり、怖いよぅ・・・」


震えた声で、泣きながらいう。

少し怖いけど大丈夫。

皆さんが・・・優しい皆さんがいるから・・・

でもやっぱり・・・怖いかな?

なんかおかしくって、笑いながら、少し泣いて、

レイナさんとシェインさんを見て

目を閉じた。寝るのが少しだけ怖い。

でも、きっと大丈夫。


『大丈夫。ドリーミア・・・お母さんとお父さん

ちゃんと見てるよ・・・』


少しだけ、聞こえた気がした。

それは私が勝手に思っている、幻なのかな。

でも今は、幻でも、どうでもいい。

ただ、お母さんの声が、聞きたいだけ。

------------------


こんばんは。ドリーミアです!

夜ですが、お部屋紹介!

私たち、女子組がいる宿は、

とっても広かった。

3人で泊まるにはもったいないくらい。

ベットもとってもふかふか。

ベランダからの景色はとっても最高!

夜空がとっーーーーーても綺麗!

そんな景色の下で泣ける私は

幸せだったと思うの

今日も色々ありましたが、

今日はぐっすりねれそうです!

それでは♪ おやすみなさい。


明日は何か強敵に出会いそう!

みんなのために、頑張んなくちゃ!

そう考えると、明日になってほしくて、

ほしくなくて。少し矛盾しているけれど、

とりあえず、ドキドキしているのに、

違いがないんだと思う。


明日がとっても楽しみ!

早く明日にならないかなぁ

戦いに行きたいな♪

絶対にお母さんとの思い出の場所を

取り返してやるんだから!

悪魔になんか、汚させない!


私は、強く心に決めて、目を閉じて、深い眠りについた。

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