第12話紫陽花
背徳は花の苗床に
とても蒼くて綺麗な花だったな。
忌々しくも、その花は
僕のそばで囁くんだ。
『もう諦めたら?』
ーさぁ付きましたよ!皆さん!様々な文化財や美味しいものに溢れる夢の街!!ー
バスガイドが煩く叫ぶ。
『マイク持ってるだろ…』
思わず囁くと、隣で寝ていた少女が目を覚ます。
『あぇ?もうつぃたの…?』
いや、少女と呼ぶのは少し可笑しいか…何しろこいつは二十は…
不意ににやけているとガイドが
また叫び出す。
ーさぁここからはこのバスに乗られて観光される方と自分達で観光なさる方の二つに分かれられます!個々で観光なさる方々は十分に御気をつけて下さい!ー
全員の把握の元、
俺たちはバスを降りた。
俺たち…と言ってもたったの3人だ。
後輩の車谷俊谷
ビビりだが明るく生きる面白いやつ。
同級生の金長皐月
外見はどう見ても中学生だが
年齢は28だ。
そして俺。井草永輔。
この三人で広島へ来た。
勿論、遊びでも観光でもない。
これから福山へ…っと
振り返り広島駅を眺める。
改札を抜け福山まで続く電車へ…
新幹線の方がいいのでは?っとも
思ったのだが、これは皐月の案だ。
本人曰く、窓の外が著しく変わる
新幹線よりゆっくり電車で行きたい
らしい…。
階段を上がると、いきなり
悲鳴が上がった。
よく見えなかったがどうやら誰かが倒れ、線路に落ちたようだ。
そしてもう20秒もしない内に電車は来る。
最悪の状況だ…。
俺は思わず飛び出すと皐月に遮られた。
皐月は少し顔を暗くして
『死にたいの?』と囁く
『俺はこれでも警官だ…こんな時に俺が動かなくて誰が動く⁉︎』
彼女の手を振り払おうとした途端
別のざわめきとその後すぐ
悲鳴が上がった。
⁉︎…
どうやらある青年が線路に飛び込み
倒れた誰かを助けだしたが、彼は
その後、電車に…。
自分は何もできなかった。
『くそ!!』
一人で床を殴る。
すぐさま駅員が集まり電車の下
確認しに向かった。
そしてさらにざわめきが生まれた。
駅員話をきいた。
『あの…非番ですが警官の者です。
どうかされたんですか?』
『あぁ…!警官の方ですか、ちょうどよかった…!あの…先程青年が年配女性を助けようと線路に飛び込み
電車に轢かれたのですが…』
年配女性というのは初耳だ。
『無いんです。彼の遺体が…』
寒気が駈しった。
今、まさに目の前であの現象が
起きていたのだ。
『あっ…あぁ…』
思わず蹌踉めく。
皐月にその事を告げに行くと
彼女は一言
『そう…』っとだけ答えた。
そして彼女はゆっくり告げた。
『道徳ってものを捨てたら少しは楽になるんじゃない?』
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