第11話寒空の駅へ

知らない世界へ入り込んでしまったら

決して振り返ってはいけないよ?

もう戻れなくなってしまうからね。


君の住んでた世界に帰りたい?

じゃあ、一緒に電車を待とう。


必読ーこの回では僕の世界観で神の存在を

書いています。宗教的な問題は恐らくないとおもいますが…あくまで個人的な世界観です。予めご了承下さい。

本文

ーようこそー

青年は言った。

僕の目にはその青年が

まるでこの世界の

神にでも見えたんだろう。


白い息を吐きながら、青年は告げた

『安心しろ、ここは地獄じゃない。

勿論、天国でもな。』


『つまり…死んでないって事か?』

彼に尋ねると彼は軽く頷く。

すると、今更ながら様々な疑問が一気に込み上げてきた。

ここはどこなのか?

さっきの駅はどうなったのか?

何故この駅に自分と彼がいるのか?

そもそもあんたは誰なんだ?と…


すると彼は

『そう揺蕩うな…全て話してやるから、まぁ落ち着け。』

彼はじいさんのような語り方で話す。

『まず、ここの事だな?ここは”残響の世界”さっきも言っただろう?』

『いやそうじゃない!残響の世界って何なんだ⁉︎』

『そうだな…確かに人にわかるスケールではないしな…』

彼はふむふむっと頷きながら

こう繰り返した

『ここはお前達で言う三途の川だ超特別製のな。』

『つまり…この世とあの世の境って事か?』

『まぁ、そんなとこだ。此処より下は…見てみろ』

彼は線路を指差す。

僕は線路の元へ近ずくと…

線路の下は鉄骨で支えられており

その下は都市になっていた。

東京を彷彿とさせるその都市を

見るなり僕はすごい寒気を感じた

高さ、気温じゃない。

ある不自然さ故にだ。

都市から、

微塵も人の気配を感じないのだ。

生活感のない。

国道だって、車ひとつ通らない。

ただの模型。

形だけの都市。

僕はそう思わざる負えなかった。

『あれは”ブリュージュ”お前達の世界で言う埋葬都市ネクロポリスだ。あの街に形はないが死んだ全ての生き物の思念、記憶、その他諸々が集まる。』

彼は淡々と語るが僕には

目の前の現状を理解するのでやっとだった。

『後、お前がここにいる理由だな?それは俺が招待したからだ。ここで死なすのは少々惜しいと思ってな』

『どういうことだよ…?』

頭の整理がつかないまま返事をする

『お前、俺の忠告を無視して老婆を庇ったろ?あれに敬意を表したんだよ。自分の命を投げやってもう風前の灯火の命を…馬鹿だなぁってさ』


『俺は、まだ…((『まだ、チャンスがあるっと思ったからって?折角の解答権をお前はチャラにしたんだぞ?』

彼が口を割って入る

…⁉︎

なんでこいつ、俺のループの事を⁉︎

それに、この口ぶり今までの事も…


『お前は一体何なんだ…⁉︎』

彼はやれやれと首を振りながら

『一言で言えば”神”だな。』

『神⁉︎世界を創った⁉︎』

『人間らしい人間の解答だな。だがな、全然違うぞ。俺は神だがそれはあくまでお前達がそう呼んでるだけだ。神は世界を創造してないし、お前達を救いもしない。俺たちは、全ての歯車をスムーズに回すことが使命だ。』

『歯車…?』

『そう、ソロモンが生まれたのも、 世界大戦が起きたのも、ヒトラーが殺されたのも、全て歯車が順調に回った故だ。お前達の行いを調節し世界は形を保っている。

だが、例外はある。それがお前のような存在だ。』

彼は僕を指差す。

彼は続ける

『輪廻とは覚者のみに起こりうる現象であり、決してお前のような生臭坊主では起こりえない。こちらの不手際が招いた結果だろう。』

彼は顔を伏せる

『どういうことだよ…?それってお前の所為で俺がループしてるってことか…⁉︎他の人間も巻き込んで!』

彼に強い口調で尋ねる。

『落ち着け。少なくとも俺の仕業じゃない。が、同種の仕業で間違いはないだろうな。お前過去に緑の服を着た男に出会わなかったか?奇妙な格好をして、ナンセンスな笛を持っている…』

『いや…わからない…前世の記憶が曖昧なんだ…』

『そうだったな。それでこれから向かうんだったな。ちょっと待ってろ…』

彼はポケットから分厚い手帳を取り出した。幾つもの付箋が貼ってあるその手帳を開きこう告げた。

俺に答えを告げる事は出来ない。

だが、何故お前が殺され続けるのか

誰に殺され続けるのか、それは教えてやろう。


『”ネロ”という同種の仕業だ。

日本でいう隠し神のことだ。

夕凪時に遊ぶ子供を言葉巧みに

誘い攫う、童話なんかでよく出て

くるだろ?

恐らくお前は過去に奴に攫われそうになり、何らかの方法で逃げ延びた

がその際何らかの矛盾点を作ったまま逃げ延びた為それに気づいた世界に殺され続けるか…転生を繰り返すのは別の誰かの仕業だ。あくまでお前を助けようとする。人じゃない別の誰かのな。』

『お前達は人間に危害を加えれないんだよな…?』

『あぁ。』

『じゃあなんでネロって奴は人を攫っている!』

彼はあぁっという顔をして

『ネロが攫う子供は基本一人でいる。お前達が気づかねば危害として受け取れぬだろ?今、お前は俺にこれを聞いたか故にそれを危害と認識するが、神隠しと聞けば危害よりも災害、自然現象における被害になるだろう?それに理由なしに攫う訳ではない。先程も言ったろ?”調節”だ。』

少し間を空け、僕は尋ねた。

『人を攫うことの何処が調節なんだよ!』

『輪廻は…スムーズに回さなければ廃れて仕舞う先端機器の様なものだ。このご時世貴様人ときたら…輪廻と寿命に逆らいおってからに…お陰でこちらもこうせざる負えな状況に発展したと言う事だ。まぁ逆に言えばこのご時世だからこそ大量の失踪者をだしても然程の影響もでない都市であれば尚更な。』

僕はあまりの理不尽さに黙ってしまった。

『理不尽か?世界とは常に理不尽なものだ。正直者は馬鹿を見る。それがこの世界の常だろ?』

長い静寂を切る様に汽笛の音だ。

『時間か…お前に話していた事は全て忘れろとは言わぬ。だがこれはこちらの事情。お前は気にしなくていい。先程の事故もそうだが、お前、そうやって詰め込みすぎるとそのうち自爆することになるぞ?』

電車が止まり、彼に尋ねた。

『僕はどうすれば…』

彼は少し微笑み

『どうすることもないさ。お前のやりたい様にやれ。それが正しいか正しくないかは、俺にもわからん。誰にもわからん。わからないから進め。お前の信じるように。』

彼が手を差し伸べた。

僕は少し気を落ち着かせ

それに応じ電車に乗った。

この電車が何処に向かうかはわからない。けど、どうであろうと必ず。全てを白日の元に晒して見せる。


列車は何も告げずゆっくり減速し出した。

そしてまた、似た駅に到着した。無人駅のようなので改札へ続くであろう、小さなドアを開けた。





炎天下は揺れて、

僕の手にあるラムネを温める。

あぁそうか、今日はあの夏の日。

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