第8話オルガノン少女の答え合わせ

『今日は蒸すな…』

井草永輔はふと携帯を見た。

午後2時…。

昼飯が遅くなったな。

『はぁ〜情報があるとはいえ…

ここまで聞き込みに来るのは

めんどうですよね〜…』

運転席の車谷が怠そうにぼやいている。

『そう言うな。

最も基礎的で大切な仕事だ。』

と言いつつも、見事なまでの成果のなさに正直、井草も気怠さを覚えていた。何せ”高梨栞”の遺体が消えた件の事件。

その後数ヶ月音沙汰も無く、都市伝説ブームも鎮静化しつつあった。


がしかし、2日前のことである。

新たな神隠し事件が起こった

被害者は伊波修也。

現場付近に落ちていた生徒手帳で判明した。

彼は…これは不慮の事故というべきなのか…?

彼は歩道橋の手すりが壊れた拍子に6mしたに落下。そして、運悪く通りかかった大型トラックに…

彼は肉塊になったはずだがその肉塊は現場から消え去り、血飛沫だけがただ残っていた。

『これでまたマスコミが騒ぐぞ』

窓の外を眺め言う。

『先輩ここを右ですか?』


『あぁ、そうだ。

その後国道にでるまで直進な。』


今は俺の最後の希望へと向かっていた。

無論、署には言っていない。


『どこへ向かってるんですか?』

車谷が尋ねる。

『あまり”頼りたくない奴”のとこだ。』

俺達は、香川県のある寺に向かっていた。

この街は俺の故郷でもある…

『あれだ…』

俺は古びた寺を指差した。

民家の狭間にあるその寺は

築百年を裕に超えているであろう面立ちだった。

『相変わらず厳ついな…』

そう呟いていると境内の方から見慣れた女性がやってきた。

『永輔ちゃん…?そうよね!

永輔ちゃんだわ〜!』

その女性は俺の肩をバシバシ叩いてきた。

『こっちも相変わらずだ…』

思わず苦笑。

『先輩が…(爆笑)ちゃんずk…』


”その後車谷に拳が飛んだのは云うまでもありませんね。(^^)”


『金長さん、あいつは?』

目的の人物の所在を問う。

『今日も部屋に篭って本ばっか読んでるわよ〜!!皐月ちゃん!巫女になったはいいけど仕事も殆どないから仕方はないんだけどね〜あっそうそう…』

相変わらずおばさんは話が長い…

『上がっても大丈夫ですか?』

俺が問う

『どうぞ〜嬉しいわぁ久々の

普通のお客さんで〜!』

おばさんが答える。

車谷が

『あの…俺は…?』

『お前は近所のガキたちと遊んでろ』

気づけばあいつの周を子供が囲んでいる。

『そ、そんなぁ〜…』

車谷が弱々しく答える

あいつはああいう仕事のが

向いてるんじゃないか?

そう思いながらおれは金長宅に上がった。

二階の一番奥の部屋をノックする。


応答はない…

部屋には鍵が掛けてある。

『やれやれ…』

どごっ!

鈍い音と共にドアをぶち抜いた




『あー!もー!これから出に行こうと思っていたのにー!弁償だー!弁償!』


『お前絶対出てくる気なかっだろ…』


小難しい本や、雑誌、怪しい薬品や

ら、まるでマッドサイエンティストの部屋だ。

その部屋のなか、ベッドの上に本をめくりながら怒り露わにしている少女(?)。

そこらの中学生と大差ない身長と童顔の

彼女。

彼女の名は金長皐月。

年齢は28…俺の同級生だ。







『珍しいねぇ君が僕を頼るなんて〜』

彼女がドヤ顔で云う。

『いちいちドヤ顔するな…

まぁこっちにも色々あるんだ…』

俺が渋々答える

『世間を騒がせてる神隠し事件わかるだろ…?あの件だ。』


『ヘェ〜永ちゃんあれ担当してんだぁ〜』

彼女は目を輝かす。

『お前ならわかるんじゃないのか?

あの事件。』

俺が尋ねる。

『神隠しねぇ〜…基本はスタイリッシュな誘拐が本筋だけど…全国で複数起きてるし、消えた子に共通点とかは?』

彼女は問う。

『勿論、幾つかある。一つは事故に遭った後に消えている被害者は3人とも高校二年生だ。二つ目にその事故の後に消えると言う神隠し事件の発生後に複数の神隠し事件に近い事件。または失踪事件が起こる。』


ふと彼女を見る。


これだ。



彼女はただ考えている。

彼女は一度詰め込んだ情報を

頭のなかで辞書のように整理整頓しておくことができるらしく。

彼女はこれを”オルガノン整理”と呼んでいる。


目を開けた彼女はこう問いかけた。

『最初に事件が起きた場所って広島の港町だったよね?』


『あぁ…そうだが…それが…?』

俺が疑問そうに問う。

『まずはそこからだね…』

『??』

意味がわからなかった。

『広島に行くよ!そこに答えがあるはずだから!』



俺たち3人は皐月に言われるまま広島に向かった。








さぁ、答え合わせの始まりだ。

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