第7話エンドロールに貴女がいるのなら
カタカタ…カタカタ。
ただ鳴り響くのはキーボードを叩く音。
最初に検索したのは
例の”神隠し事件。”
高梨栞。その前の自分を知ることが今現在の第一目標だ。
神隠し事件を改めて調べていくにつれて伊波修也の時にはわからなかったことが幾つか発見できた。
一つ目は、既に伊波修也が死亡して一ヶ月が経過していると云う事。
そして、その間に伊波修也以外にも”不慮の事故からの行方不明”になった人物が2人いる。
2人とも場所も時間もバラバラで関係も全くの不明。警察も頭を悩ませているとのこと。
そして、伊波修也の時だけじゃない。
高梨栞の時もだ、俺が高梨栞だった時、俺の他に1人。消えている。
そして。これらの不慮の事故からの神隠し事件の発端は、
201※/7/※※に起きた交通事故
ある男子高生が学校からの帰り道、車との接触にて、崖から転落。
その後、彼が落ちたであろう場所には、大きな血溜まりと、大破した自転車こそ転がっていたものの、彼の遺体はそこにはなかった。
県警は40名を超える捜査員を派遣し大捜索を決行するも結局、彼の遺体は発見できなかった。
その少年は網谷祐と呼ぶらしい。
……網谷祐…
交通事故で死んだ少年…
網谷祐が本当の俺なのか…?
彼が死んだのは…瀬戸内海に面した街。
鞆と云う町だった。
『そうか…あの人に聞けばいいんだ』
俺は自分の部屋から出て階段を下り、書斎へ向かった。
あの頭痛の後、俺は
岩間意次という高校生になっていた。
俺はその後不可解な点がないよう慎重に岩間意次という人物がどのような人なのかを調べた。
どうやら彼(俺)の父母は既に他界しており、祖父と祖母の家でお世話になっているようだ。
俺が岩間意次になってから丸2日が経過したが、祖父も祖母も優しく僕に接してくれた。
2日しか一緒に生活していないがいい人だと云う確信が持てた。
書斎に着くと軽くノック。
扉を開くと多分70代であろう老人が本片手に座っていた。
『どうかしたかな?』
老人は優しい顔に似合わぬダンディな声で訪ねた。
彼が祖父。大谷博茂である。
俺は祖父に訪ねた。
『じいちゃん”鞆の町”って知ってる?』
祖父は少し興味深そうな顔で答えた。
『鞆の町?それは鞆の浦のことかな?』
鞆の浦。どこか懐かしい響き。
『どんな町?』
祖父は思い出すように答えた。
『ええとこじゃよ。海は綺麗じゃし町も穏やかで美しい。静かで穏やかな港町じゃ。』
『行ったことあるの?』
僕が訊ねると
『一度若い頃にね』
僕は礼を述べると
自分の部屋に戻り”鞆の浦”と検索した。
海の綺麗な町が出てきた。
『場所は…広島県…福山市…鞆…
指が止まった。
やはり、この町か。
仮に本当の僕が網谷祐でなくても、少なくともこの町には何かがあるそう確信できた。
『ごはんよー!』
明るい声が響く。
声の主は大谷キヨ。
昔は男勝りな性格だったらしいが今では少しお茶目なおばさんらしい…
この家での食卓は非常に楽しかった。
本当に3日前まで死に続けていたなんておもえない程に。
他愛もない会話が心に沁みる。
ずっとこんな日々が続けばいいのにな。
自分の部屋に戻り思いふけっていた。
だがそうもいかない。
俺は、俺が犯した罪を償わなければまた死ななければならない。
そして、今になって気づいた。
『もし、俺が死んだらじいちゃんもばあちゃんも悲しむよな…』
大谷夫妻だけじゃない。
優香。高梨優香もそうだ。
あいつは俺が死んでどうなったのだろう。そう思うと、”これ以上死ねないな。”という意思が芽生えてきた。
もっと情報が欲しい。
明日図書館にでも行こう…(用心して)
そう思いゆっくり重い瞼を閉じた。
不思議な夢を見た。
子供の時の俺がいる。
その横に、中学生位の女の子。
誰だ…俺が6歳位だから逆算して24とか5とかその辺の歳の人か…
名前も思い出せない。
当然だ自分の名前も
思い出せてないのだから。
とにかく楽しそうに遊んでいる
小さい俺が彼女にひたすら話し、彼女は
ひたすら微笑んでいる。
彼女は俺のお守りをしてくれているのか?
わからないがこの際後回しだ。
そのままその少女と子供の時の俺は…
一緒に山へ遊びに行った。
一緒に行って…
一緒に…帰る筈だった。ーー
子供の頃の俺たちは
山の古びた杜でアレを
見つけてしまったのだ。
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