第5話雨声はただ残酷に
答えは簡単。
死ねばわかるさ。
am7:50
朝は、春の兆しが見えはじめたような暖かさだ。
桜はまだ咲いてない。
”昨日まで真冬じゃなかったか?”
俺”伊波修也”((と今は呼ぶしかない))
は
ただ何気なく歩いていた。
学校への道なんて正直わからなかったが
足が勝手にこの方向へ進む。
すると、やはり学校に着いた。
安堵した『ふぅ…』
だが落ち着くのもつかの間、
新たな問題が発生した。
クラスがわからないのである。
慌てて、考える。
『まて、これじゃあ靴も入れられない…』
すると、後ろから誰かが
『おーい!修!二組の靴箱で何してんだよ(笑)』
と声が聞こえた。
思わず振り返り、声の主を見つけた。
見覚えのない顔だが何故か名前はわかった。
『倉…』
『なんだよ!物憂げな言い方で!』
『いや…なんでも…』
僕は何気ない会話で6組であることを知り、教室へ向かった。
教室にいる奴の顔は誰一人としてわからなかったが名前だけ頭に浮かんだ。
『なーなー伊波〜』
呼びかけがあっても途端に振り返りれ無かった。
『ぇ…あ!どうした?』
『どうしたよ?そんなビクついて(笑)』
『そ、そうか?』
冷静を繕う。
あくまで冷静に。
一時間目は数学だった。
机の中には
びっしりと記されたノート。
自分のじゃないみたいだ。
教師が来たが、見覚えのない、が覚えてる。そんな不可解な感覚だ。
授業がはじまり違和感を覚えた。
『授業は…あれ…?ここもう終わらなかったか…?』
そう思いふと机のなかのノートを片っ端から覗く。
これも…これも…やった…これもだ…。
おかしい…このノートに記されていることのさらに先をやった記憶がある。
杞憂か…そう思いノートを片付け、ケータイを眺める。
ふと気づく。
”201*/5/2*
え…?今12月じゃ…
12月…そう12月だったんだ。
昨日まで。
『先生…あの…』
手を挙げる。
『どうした?』
『あの…腹痛が酷いので保健室へ行っていいですか…?』
あくまでナチュラルに。
『構わんが』
教室を出て向かったのは、保健室ではなく図書室。
今朝から頭を離れない名前。
”高梨栞”のことだ。
誰だ…俺の周りにいる奴じゃない。
パソコンで名前を調べる。
もしかしたら某SNSのアカウント
とか、わかるかも。そんな軽い気持ちだった。
しかし、高梨と変換した途端
”高梨栞”の名前が検索ランキング上位に上がってきた。
『そんな著名人なのか…?』
だがそうではない。
高梨栞と検索すると。
そこには某SNSのアカウントなどではなく。
こんなページが出てきた。
”前代未聞!神隠し!消えた男子高生”
クリックした
そこには去年末に起こった、前代未聞の事件についてだった。
概要はこうだ。
ー被害者は高校2年の男子生徒。
高梨栞。彼は妹と登校中不慮の事故で即死。
ー目撃者の証言では頭に古い看板が降ってきたらしい。ー
問題はここからである。
この事件が前代未聞なのは、彼の遺体が野次馬の前から忽然と消えたと言うことだ。ー
目が眩みそうだ。
この事件を知ったのは今が初めてだし、こんな都市伝説みたいなことが起こっている事も初耳だ。
仮に数ヶ月前の事件で記憶から薄れてきたという可能性も捨てれないが、高梨栞という名前に覚えがあるそれだけならまだしも、もう一つ不可解な点がある。妹、優香の事である。俺は彼女の顔を見たことがない筈だ。あるわけがない。未成年の顔はテレビでも規制されるし顔が晒される訳がない。
だが、何故かわからないが俺には彼女の顔がわかる。
か何故かわからないがわかるんだ。
優香…優香。
そう…俺は、あいつとテストの…
え…?なんで…俺は彼女と話しを
いや違う。彼女と話した記憶だけがある。彼女の言葉が鮮明に浮かぶ。
『お兄ちゃんテストどう?』
お兄ちゃん…?
そう俺は彼女、優香の兄だ。
彼女の兄。優香の兄
俺は、俺は栞、高梨栞だ。
は…?
そんな訳ないだろ、彼は2ヶ月前に死んだ人間だし、そもそも、俺は伊波修也だ。
『なんなんだよ…』
頭がパンクしそうだ。
とりあえず、俺は伊波修也である俺は、この後何気なく授業に戻り放課後、家へ帰っていた。
爽やかな春日和の朝とは反して、どしゃぶりの雨。
『五月雨ってやつか』
ふと独り言。
雨は嫌いじゃない。
雨は色んなものを掻き消してくれる。
愁いや想い。
僕の身体さえも。
僕は傘をもってなかったから
濡れながら、走って帰っていた。
信号機を待つのが煩わしい。
歩道橋を渡ろう。
僕は歩道橋を走って渡る。
歩道橋の手すりに手を掛け細い道を駆ける。
ガゴッ。
『ぇ…?』
何が起こったか、今考えたら察しがつく。
雨が僕を殺した。
手が手摺から外れてそのまま…。
僕はそのまま6m程下へ転落した。
『嘘だろ…』
『あれ?もう帰ってきたんですか?(^^)』
彼女が笑う。
『…ひとつ、わかったことがある』
『ヘェ〜(´∀`)』
彼女が嘲る口調で答える。
僕は、死んだのか。
First answer:-)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます