第4話輪廻と少女と教室と

ちゃんと踏みしめて歩けその後が轍となるまで。


教室の空気はやたらと澄んでいて。

僕は、1人。

一つしかない席に着いていた。

何故ここにいるのか

何故ひとりなのか

知る由もなかったが、席に着く。

ただ着かなければならない使命感に駆られた




ただひとり。誰かを待つ。

教室のドアが開く。

ひとりの人物が入ってきた。

女子生徒だった。

茶髪のショートにブレザーを羽織ってる。身長は低めの145とかそのあたりか…?まぁいい。彼女は誰だ見たことない…



いや…ある…俺は彼女を知っている…しかし…いつだ…?

いつどこで彼女に会った?


おそらくかなり昔…


そう考えてると彼女は

『おはこんばんにちわ〜(^^)』


沈黙。


『!?』

僕は不可解な挨拶の理解に苦しんだ。

『いや〜最短記録ですよ〜(爆笑)

10時間ちょいって!!(≧∇≦)』

待て、状況が掴めない。

『ちょ…ちょっと待ってくれ!なんの話だよ⁉︎10時間とか!…てか!お前誰だよ!』


彼女は薄ら笑いをし

『ひ♡み♡つ♡』っとあざとく告げ。

こう答えた。

『まぁまぁ(^_^)そんな小さなことは気にせずに!じゃあ逆に伺いますけど…あなたの名前は…?』

え…?

僕の名前。僕の名前は…

高梨 栞…だったっけ?

いや待て!なんで俺は自分の名前も思い出すのに時間かけてるんだ⁉︎

しかも自信ないし!

『記憶喪失ってやつか…』

ポツリと呟くと…

『違いますね。』

さらっと彼女が答える。

『は…?』

僕は理解できなかった。

『あなたの名前は…?』

彼女が再び問う。

『高梨…高梨栞だ』

『違います。』

彼女が即答する。

僕は理解出来ずに怒鳴った

『何が違うんだ!僕は高梨栞!それ以外になにがある!なんなら生年月日全部言ってやろうか!』

そう怒鳴ると彼女は怠そうに

『そうですね。確かにあなたはつい数時間前まで”高梨栞”と呼ばれる人物でした。けど…

『ちょっと待ってくれ。お前頭おかしいぞ!つい数時間前までとか意味わかんねぇよ!』

僕が口を挟む。


『はぁ…あなたは少し頭を冷やして下さい。あー…もう、時間です(´・_・`)』


『え?』

すると頭が狂いそうな程激しい頭痛に見舞われた。遠のいていく意識の中、彼女はこう告げた。


『自分の名前を決して忘れないで下さい。そして…これから起こり続ける…』



am6:45



目が覚めると

ベッドの上だった。


あれ…夢…?

頭の中にあるのは…


あの少女のことば。

”忘れるな、自分の名前…”か…

俺の名前は高梨栞…

そして…頭に…刺さる何か…

考えただけでサブイボが出た。

なんで…そんな事が頭の中に…



とりあえず学校へ行こう。


学ラン羽織りネームプレートを見る




違う…高梨栞じゃない。

俺の名は…





伊波修也


待て…学ラン…?

さっきまでブレザーだったじゃないか…!


『なんなんだよ!』

1人床を蹴る



いや待て、この感覚前…

いや、こんな夢前に一度…


頭を埋め尽くすのは

少女の顔とことば、

高梨栞の名前…そして、頭をかち割った何か…






かち割った…?

何か頭から出てきそうだ。


今は自分の名前を忘れると決めた。


俺は伊波修也でも高梨栞でもない。

じゃあ俺は誰だ?

少女は言った…俺は高梨栞じゃない

何故か彼女のことが単なる夢ではない気がしてならなかった。


学校よりも、宿題よりも大切な何かを忘れた



何なんだ…?何か頭に引っかかる

このピースのはまりきった世界にある微塵の違和感。


それが頭の中にある。

わかってしまう。



窓の外を眺めた。

薄汚い。コンクリートの壁があり

そこに潮風も船も、朝露も無かった。


なんだよ…?潮風、船、朝露って…


朝露…俺の部屋…こんなんだっけ?

そう思った。

確か昨日、教科書の並びを整え…

てない…?

教科書は乱雑に置かれていた…。

何故だ…昨日ちゃんと

そう昨日だ…昨日は優香と家に帰って…。優香…って俺の妹だよな…?

自分の妹の名前も忘れたのかよ!俺は!

そういえば優香は…夢の存在なのか…?

いや、そんなはずはない。

俺はあいつと登校もしたし

テストの事で何かをくらったんだ…

あれ…?あの時いつ優香といつ別れた…?

そうあの時、俺はあいつにテストの事を言われて、俺は走って学校に行ったんだ…それで…



俺の頭に何か…それであの教室にいた。


俺は…死んだのか?


とりあえず状況の整理をしながら学校へ行こう。









これから約12時間後に俺は死ぬ。


ひょっとしたら気付かなかったら

よかったのかもしれない。



この悲しい輪廻の好餌となるのだから。

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