第3話慟哭はまだ早い

枝分かれ。


そして始まってすらない


ストーリーのプロローグ。



冬の朝は先刻まで

車の暖房に浸っていた自分の皮膚を

突き刺さる。


『先輩!これ…』

車谷刑事が慄く…無理もない

実質俺もビビっている。

いや実際一番衝撃を受けているのは

恐らく彼女だろう。

『えっと…君は…』

『高…梨です…』彼女は答える。

『高梨優香です…』

『通報したのは君かい…?』

優しげに問う。

『いえ…通り過がりの…あっ…今、

他の警察の方とお話しされている…』

彼女は指差す。

『なるほど…貴女は…その少年の…』

『妹です…』彼女が苦しげに答える。

『いや…すまない…大変ショックだったろうに…あっ!今お家の方と連絡が取れたらようだから君を迎えに来てもらおう。』

『あの…!兄は…兄の”身体”は…

どうして……』彼女が泣きそうな顔で問う。

『それは我々にもわからない。これから調査するから…ただ絶対に”彼の身体は見つけてみせる!”約束しよう!』

彼女は沈んだ顔をしている

無理もない。

彼女をご両親に引き渡す。

ご両親も何が起こったか

わからず、現実を呑み込めない

ようだった。

彼等を一時的に家に帰すことにした。

『いずれ署から呼び出し

があると思いますが….』

そんなオーソドックスな会話

をして車谷との話にもどった。

『どうなってんですかね….?』

彼は震えている。

『俺に聞くな…だが…

こんな前代未聞な事件が…』

『今月までに6件近く起こってますよ…

これと似たケース。』

『あぁ…切先は広島で起きた

転落事故か…?』

『そうです…!

きっと死神か何かの仕業だ〜!』

車谷…中学生じゃないんだぞ…

もう少し真面目に…と言いたいが

確かにこんな馬鹿げた現実離れした

事件がこう立て続けに起こると…

『最初の被害者って

確かに…網谷…祐って学生でしたよ!』

『お前…よく覚えてるな…』

『はい!確か…転落事故に遭い、転落事故の原因の車の運転手が警察に連絡、その夜、警察官40人がかりで捜索したけど見つかったのは自転車と彼が落ちたであろう場所に広がっていた血だまりだけだったって…』

『あぁ…あれだけの血を出た被害者を血痕を残さず運ぶのは不可能。それに運ぶのにメリットがない。』

『その捜索まだ続いてますよね…?』

『らしいな…それで今回のケース』




スナック囲炉裡の看板が頭に

直撃し即死。そこまではわかる。

ここからだ。

被害者の妹、優香が泣き叫び。

近寄る。周りの人間も恐れ慄き逃げ出す。懸命なサラリーマンが急いで警察と救急車に連絡したようだ。

目撃者多数のこの状況から

死体は忽然と”消えた”。



消えたのだ。


妹の目の前から

野次馬市民の前から。



被害者は”高梨栞17歳”

彼の妹、高梨優香。



『慟哭は、まだ早い。』


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