第2話「これが、バンコクマジックなのか?」
ツーリストで溢れかえる雑踏を眺めながらグラスを傾けていると、この国ならではのある特徴に気がついた。
行き交うタイガールの中に多くのレディーボーイが混ざっていることだ。
しかも、世の男性が彼女たちを見ても、容易にオカマだとは分からないほどレベルが高い。
さすがトランスジェンダー先進国。
日本のMtFは、一般社会から「オカマ」と揶揄されるのを脊髄反射のごとく嫌う傾向があるが、私は呼び方などどうでも良かった。
チンケな小者ほど無神経で差別意識が強く、一流の人間ほど寛容で理解があることを身をもって知っていたからだ。
※ ※
バービア嬢と間違えた男性客からの誘いをいなしつつ、何杯目かの水割りを呑んでいると、ふと、なぜだか自分がこの空間に溶けていくような、なんとも言えない心地良さがこみ上げてきた。
挙げ句の果てには「私は私のまま、自分らしく生きればいいんだ」などと、根拠の無い自信まで湧いてくる始末である。
「これが、バンコクマジックなのか?」
島国根性丸出しの日本を離れることで気持ちはスッと楽になったのである。
だが、こんなところで悦に入るのはまだ早い。
この先、私が進む道には、もっともっと自分を前向きにさせてくれる個性豊かな日本人が次から次へと登場する。
私は、そんな、やんちゃで憎めないキャラクターたちのことを「バンコクキッド」と呼んでいたのだ。
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