イッセの身体からコノハの光が完全に失われた瞬間、アルファの身体が別の強い光に包まれた。光は二つに分かれて分離すると、瞬く間に人の形を形成した。

 「やだぁなにあのコ最悪だわ。頭ぐっちゃぐちゃ」

 「シロ様申し訳ございません、意識を保つことが敵いませんでした」

 「アカツキ、シノノメ……」

 シロと呼ばれたアルファが二人に縋るように手を伸ばす。その姿はまるで幼子のようだ。イッセは強く唇を噛んだ。

 逃がすかッ!

 イッセは反射的にクロスを手に取るとアルファを撃った。弾は僅かに軌道を外れ、アルファの左肩にめり込む。やはりヨシノだけでは能力に限界がある。それでもイッセは立て続けに発砲した。生身の身体なら傷口はすぐには塞がらない。

 「俺のコノハを……俺のコノハをよくも……っ」

 しかし二発目からはナイフを手にしたシノノメにより弾はきれいに弾かれてしまった。その隙にアカツキがアルファの身体を抱き起こし運び出そうとする。

 「待てよっ待て――」

 追いかけようと動かす手足が鉛でもぶら下がっているかのように重い。クロイドと分離した後と変わらないダルさがイッセの身体を襲っていた。

 コノハはもういないのだ。コノハはもう……

 視界が滲んだ。舗装されていない地面を次から次へと雫が濡らしていく。こうしている間にも視界から三人が遠ざかってしまう。泣いてる場合じゃないんだ。それでも涙は次から次へと溢れ出てイッセの視界に蓋をした。

 「せっかくコノハが命を張って与えてくれたチャンスなんだ。逃がすわけにはいかないんだっ」

 すっかり治っているはずの首の傷さえもズキズキと痛み出す。ぼやけた視界はせっかく動き出した頭の働きをも鈍くするようで、イッセの意識は次第に遠のいていった。

 ――違うだろイッセ、コノハが命を張ったのは敵を討つためじゃない。お前を生かすためだ。

 微かに聴こえたヨシノの声はボロボロになったイッセの心に子守唄のように静かに響いた。

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