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――イッセ聴いて。クロイドには自爆機能がついてるんです!
飛びかけていた頭にコノハの悲痛な叫びが響いた。
今なんて?自爆機能だって?というイッセの心の声は届いていない。
――わたしたちクロイドは元々トーテムという一固体から生まれました。元はひとつ、死んだらそこに還るだけなんです。そしてまた生まれる。光分子の融合体として。
コノハは静かに続けた。
――アーサーのトーテムとメクロイアのトーテムは別物なので完全に侵食することはできません。けれど、ある程度の精神破壊なら起こすことができる。
コノハ?なにを言ってるんだ……?
話についていけず、回らない頭で懸命に考える。それでもイッセが理解するより先にコノハは続けた。
――これ以上イッセを傷つけさせたくないっ後悔したくないんです。だからお願い、わたしにイッセを助けさせて。
コノハ?
――おいっ無茶はやめろ!今は我慢だ!
――ヨシノさんも今までありがとうございました。イッセをよろしくお願いします。
コノハの意識が驚くほどの質量を持って膨張していく。まるでさようならとでもいっているかのように、イッセを優しく包み込んで。
「……コノハ……コノハ!」
身体の痺れを押しのけてイッセは全身で叫んだ。
みるみるうちにイッセの身体が眩い光に覆われていく。あんなに冷たかったコノハの体温が今は燃えるように熱い。光は膨張を加速させ、イッセの身体だけに留まらず、アルファの身体をも包み込んでいった。アルファの動きが一歩遅れて停止する。両手に持っていたナイフが滑り落ちて地面に転がった。
「なんだ?お前っやめろ……入ってくるなッぼくを壊すつもりなのか?ぼくを……いやだっやめろぉぉぉ」
頭を抱えてのた打ち回るアルファの姿が横たわるイッセの視界に映った。
「コノハ……」
アルファの抵抗が激しくなるにつれ、確実にイッセの身体からコノハの気配が薄れていく。
「そんな……こんな終わりかた……頼むッ頼むから行かないで……コノハ!」
軋む身体でコノハを押し留めようと必死に抵抗する。コノハの力が及ばなくなったことで、傷の治りが遅くなったのか、力を入れればあちこちがズキズキと痛んだ。でもそんな傷より、コノハの抜け落ちた胸が果てしなく痛い。
苦しそうにもがいていたアルファは、目に見えない何かから逃れようとヘッドグラスをむしり取った。下から覗いた銀の瞳にハッとする。
「だめだ!アカツキっシノノメっ出てくるな!」
「アカツキにシノノメ……もしかして二人いるのか?アルファにもクロイドが二人……それでフラクス弾が効かなかった?」
歯車を軋ませて少しずつ頭が回りだす。しかしそんな間にもイッセを包んでいた光は段々と輝きを失っていった。
「ごめんコノハっ俺のせいでっ俺がッ」
弱いから!
もう引き留めることは無理なのだ。頭ではわかっているのにどうしても受け入れられない。
――泣かないでイッセ。わたしは幸せです。イッセのクロイドになれて、イッセを守ることができて。だから生きて、自分のために……
ッ……コノハ――
「ぁああああああああっ」
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