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「心の準備はいいかい?」
イッセは緊張した面持ちで頷いた。
「それじゃあ孵化を促すよ」
目の前の巨大なシリンダーに入れられた、これまた巨大な卵を凝視する。てっぺんからはなにやらチューブのようなものが伸びていいて、その先に繋がれた機械を八十島は慣れた手つきで操作した。部屋にはゴゴゴと地を這う機械音だけが響いている。
不気味だけど不思議と落ち着く。そんなことを思っていると、不意にパシッという鋭い亀裂音が空間を切り裂いた。反射的に耳を塞いで卵を見る。無数のヒビが入った殻に小さな穴が空いている。そこから白い手がちらりと覗いたと思ったら、穴はみるみるうちに砕けて広がっていった。
「これは……」
卵の中身が全容を現した。ハッと息を呑む。
透けるように白い肌にふわりと軽い栗色の髪をした少女が、人形のように整った笑顔でシリンダーの向こうからイッセを見つめていたのだ。
はじめてクロイドを目の当たりにしたイッセの瞳は、目覚めたばかりのまだあどけなさの残る少女に釘付けになった。
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