パズーの怒りと超災難 1
玉座の間の真下。秘密の地下室。
***
ひんやりとした空気に閉塞感。パズーはゼロースにしがみついた。壁に不気味な絵が描かれている。見たこともないような景色、それに地獄絵図のような争いの様子。
グスタフがシャルルに支えられながら廊下を歩いていく。地下室に降りるのに床が光ったのにも驚いたが、廊下に点在する扉も不思議な文様が彫られていてグスタフが手をかざすたびに光って扉が開くのにも
「物語のようですね。徐々に破壊が終わり、豊かな自然へと変化している」
ランプを持ち、シャルルの隣に並ぶアンリがぽそりと呟いた。気持ちが悪くて目を逸らしていたが、確かに絵は美しい大自然へと変化していた。
また扉が現れた。今までの大理石のようなものとは違い金属製の扉。鉛色で古ぼけているが、見事な彫刻。ドメキア王国の国紋をもっと
竜の背中に向かい合って手を繋ぐ人。片方は長い巻き髪で、片方は短髪。
「この中央、ペジテ大工房の国旗と酷似しています」
「そうですね。しかしこうしてみると、双頭竜ではなく蛇だ」
アンリが呟くとゼロースが答えた。ゼロースの隣、パズーの反対隣でルイが興味深そうに観察している。顔立ちといい、今の表情といい、何処と無くセリムに似ている。
「毒蛇の巣などと呼ばれてきたが、元々は大蛇の国と呼ばれていた。この国の始祖エリニースにちなんでだ。エリニースは蛇の形をした神であったという」
シャルルの言葉に、パズーは「セリムが好きそうな話だな」と思った。
「聖騎士エリニースと聖乙女シュナ伝説ですね。この地を守った双子神。双子だから体は一つ。そして絶対に裏切らないから無防備に背中を見せ合う。それが我が国の国旗だと聞いています」
ルイが悲しそうに告げた。何が悲しいのだろうか。
グスタフが扉に手をかざすと、また扉が光った。正確には双頭竜のエンブレム部分だけが青白く輝いた。どんな原理なのだろう。
ゆっくりと、そして勝手に扉が開いた。
円形でだだっ広い石造りの部屋。壁際にズラリと蛇の石像が並んでいる。中央にチェスのルークの駒のような台座があった。
「不思議な雰囲気の部屋ですね。偽りの庭の近辺と似ています」
誰よりも早くアンリが部屋に入った。その瞬間、バチリと床から放電したのでアンリが後方に飛んだ。
「アンリ様、大丈夫ですか?」
ゼロースがアンリに駆け寄った。
「アンリで構いません。それから過剰な警護は必要ありません。己の身くらい守れるようには努めてきてます」
アンリが何もなかったというようにゼロースに微笑みかけた。大丈夫だから近寄るなという雰囲気。ゼロースが苦笑いを浮かべた。アンリは昨日から化粧をしだしたのでもう少年には見えないし、むしろ今のように凛々しいと艶やかさが増す。服も護衛人のものをやめて、ドメキア王国のワンピースにズボン。武器は携帯しているのだけが同じ。この急な変化は絶対にティダの影響だ。アシタカと結婚予定と聞いていたのに不思議でならない。パズーがしげしげとアンリを見ても、アンリは特に気にしてないのか無視された。
「この部屋、入室者を選ぶのでしょうか?」
アンリがシャルルとグスタフに近寄って問いかけた。グスタフの筆談を確認したシャルルが
「王族
シャルルに言われてもピンとこない。部屋と廊下の境には取り立てて何も見当たらない。放電とはどういう原理なのだろう?パズーは屈んでしげしげと部屋と廊下の境を観察した。やはり何もない。
王族
パズーはチラリとシャルルを見上げた。
シュナと全然似てない。いや、口元は似ているか?太って丸いこの男の胸元に真っ赤な
「シャルル王子なら入室出来るということですね。王族伝承の蔵書を持ってきてください。持ち出せないのならば、
アンリの言葉にシャルルが大きく首を縦に振った。しかしグスタフが首を横に振った。手に持つペンと紙に何かをさらさらと書いた。
「恐ろしくて入りたくない。ここに本などない。シャルルは無理だ。叔父との子。故に我が血を混ぜた
震え声のシャルルの言葉にルイが目を丸めた。一同がシャルルを見つめた。
「私とターラは蛇。ジョンは薔薇。ジョンを
またグスタフがペンを走らせた。シャルルが嬉しそうな顔をして、それから悲しそうに笑った。何だろう?
その時、グラグラと足元が揺れた。
地震?目眩?パズーは床に転んだ。
「パズー君。あなた……」
アンリに呼ばれて、パズーは体を起こした。それから周りを見渡した。部屋に放り出されている。隣にルイとゼロース。ルイは同じように座り込んでいて、ゼロースは立っていた。
え?
呆気にとられているとゼロースも不思議そうに自身とパズーを眺めていた。
「俺がシュナ様の兄というのは本当なのか……。王族
ゼロースと目が合った。
「
酒がほぼ飲めないゼロースが、酔っ払って自慢した
だから王族
バースとゼロースの意志を継げとビアー、最初に吠えた期待の若輩アルマ、そして小群れ入りしているパズー。合計三名が許可された。呆れながらも楽しそうにシュナが手配してくれると言って昨日彫ってもらった。
アシタカがとてつもなく怒っていたので、ティダが酒で潰した。
小群れとは何なのだ。教えてくれなかった。三人は他の騎士達に酒を浴びせられ、揉みくちゃにされ、
あれは気分が良かった。
「父上が、ゼロースには彫らせたと言っています」
シャルルの発言にゼロースが大きく目を丸めた。パズーも驚いた。グスタフと話が出来ないのがもどかしい。本人も頑なで殆ど語らない。最低限、そう思っているのかもしれない。声を奪ったセリムのせいだ。
「あの、私には
ルイが全員を見て告げた。ゼロースがルイ、パズーと順番に腕を引いて立たせた。その時蛇の石像が動いた。石と石が擦れる音と振動が伝わってくる。ゼロースが背にルイとパズーを庇いながら部屋を見渡した。
蛇。
蛇の群れ。
鉛色の金属みたいな、蟲に似たような蛇がわらわらと石像下の穴から現れた。人の腕くらいの大きさの蛇が部屋の壁際を這う。
「ひいいいいいいい!」
パズーはルイとゼロースにしがみついた。
警戒心を強く発するゼロースが腰の剣の柄を掴んだが手を離した。
「その通りですゼロースさん!蟲かもしれません!手を出したり武器を見せたりしない方が良いと思います!」
部屋の入り口に立つアンリが叫んだ。部屋の入り口前の床にも蛇が這うが、外には出ないらしい。アンリ達の前を通り過ぎる蛇が、アンリだけに
ふと見下ろすと、ルイが楽しそうに蛇を眺めていた。
やっぱりこいつ、セリムに似ている。何か嫌な予感がする。
「ドメキア王家の守護神が蛇というのは本当なのか!アルム海岸やあの辺りの海で見かける、海蛇達だ!力強く泳ぐこの海蛇がこの国の象徴なのは大いに納得」
ルイの感嘆の声に、パズーは益々嫌な予感がした。ルイが嬉々として部屋を見渡している。セリムだ、これはセリム2号だ。パズーの脳内にルイから離れろと警告がしたのでルイからは離れて、ゼロースにしがみついた。
「アルム海岸?あそこは禁足地です。王族本家の催事でしか入ってはならない。それも王族しか入れないと聞いています。踏み入れたことがあるのですか?」
咎めるようなゼロースの睨みに、ルイが悪戯っぽい苦笑いを浮かべた。こいつ絶対に末っ子だ。それか似たような立場で育ってる。パズーは更に嫌な予感がしたのでルイから離れた。親しくなったらいけない。
「いや、はい。幼い頃母上に連れられてからちょこちょこと。海蛇が格好良くて面白くてつい。まあ、もう国王ですし」
悪びれた顔をしているが、ルイは反省していなさそうだった。この蛇が面白くて格好良い?ゼロースが黙った。
〈王だ。王が遊びに来てくれた。やっと来てくれた〉
蟲の声?久々だがそうだ。この脳に直接響いてくるようなのは蟲の声だ。他の蛇よりも倍はある大蛇が一匹、パズーの足元へ向かって来た。こいつら蛇の蟲なのか。
〈新しい王がきた。バジリスコスが新しい王を選ぶと言っていた。蛇の子を連れて来てくれた。遊びに来てくれた〉
全身に汗が噴き出した。蛇蟲がみんなパズーを見つめている。
「お、お、王?違う。違う!こいつが王!蛇の子ってゼロースさんのことか?」
パズーはルイを指差した。それからゼロースにさらにしがみついた。それから思い至ってゼロースから離れた。蛇蟲達はゼロースを眺めている。とりあえず、ホッとした。
「パズー、この蛇が何か言っているのか?」
ゼロースに引き剥がされて問いかけられた。
「パズー殿、海蛇と話せるのですか⁈」
ルイが
〈王と王の子と蛇の子しか
「蛇の子」の時はルイ、そして「変なの」の時には蛇蟲が一斉にパズーを見た。大きめの蛇蟲が群れに戻って壁際を回るのに混ざった。
〈ペジテ大工房から参りましたアンリと申します。蛇の方々、三人の中で一番背が低い方が新国王ルイです〉
パズーは振り返ってアンリを見つめた。蛇と喋れるのか?ペジテ大工房の長官にはそんな特殊能力があるのか?
〈ペジテ人が話しかけてきた!〉
怖い怖いの大合唱に頭が痛くなった。時折「匂いが変」という台詞も混じる。
アンリが突然ワンピースに巻いているベルトを二つとも外して後方に投げた。銃とポーチがなくて無防備の提示らしい。さらにワンピースの裾を捲った。下に履いているズボンにも短剣と銃をベルトで固定してあった。それも放り投げてから、アンリは両手を高々と挙げた。
〈何もしません。拒否されているのならば入室もしません。新国王ルイが挨拶にきました。それから
蛇蟲達が部屋の入り口の前にわっと集まった。先頭は大蛇蟲。
〈ペジテ人は嘘つき。怖い。酷い。嫌い。でも嘘をついてない。それに変な匂い。獣と陸上蟲の匂いがする。姫の匂いも少しする。ペジテ人?〉
蛇蟲が一斉に頭を斜めにした。
〈違う。違う。あっちのと同じで変な奴。ペジテ人じゃないなら入っても良い〉
蛇蟲達が二手に分かれて道を作った。アンリからパズー達まで一直線の道。
「あー、蛇蟲君達。この人はペジテ人だ。でもとても良い人だ」
パズーが話しかけても無視されている。アンリのような特殊能力じゃないと話せないらしい。何も分からないゼロースとルイがパズーを見つめている。シャルルもそう。勘違いされるのでもう蛇蟲には話しかけない、と決意した。アンリに任せよう。しかしそれで良いのか?
パズーは勇気を出して蛇蟲に近寄った。蟲なら手を出さなければ手を出してこない。しゃがんでゼロース達に聞こえないような小さな声を出した。
「変なのじゃなくてパズー。あー、バムバムなら通じる?あの人はアンリさん。ペジテ人が嫌いなのか?あの人はとても良い人だ」
喉がカラカラで声が出にくい。全身震える。怖いので即座にゼロースの元に戻った。
「話せなかった」
パズーはルイとゼロースにそう告げた。聞こえるけど、こちらの言葉は通じないので嘘ではない。
「そうかパズー。セリム様と同じかと期待したが違うのだな。違うと聞いているしな。しかし、これはどうなってるんだ?海蛇?」
ゼロースが蛇蟲を眺める。ルイはパズーを信じてないといように見つめてくる。思いっきり無視した。ルイがセリムと似ているとなると、嫌な予感しかしない。断固拒否。
〈変な奴は何て喋った?変なペジテ人教えてくれ〉
蛇蟲が「変な奴。教えて」と鼻歌のように喋る。同じ言葉が延々続く。かなり
〈彼は挨拶をしました。パズーという名前です。私はペジテ人です。ペジテ人が怖くて酷い嘘つきとは心外です。ペジテ人にはそういう者もいますし、そうでもない者もいます。人はみなそれぞれです。獣の匂いは大狼でしょうか?私は大狼の妻です。陸上蟲は分かりません。ゼロースさんを新しい王と呼ぶなら、姫はシュナです?シュナとは友人です〉
今度は「分からない」という言葉が延々と続いた。それから「大狼とはお話しない。陸上蟲とは話す。変な奴とは話していいのか分からない」に変わった。低くも高くもない声だが、あどけない様子。子供か?船で見た、巨大な蛇のような生物の子供?この数があんなに大きくなる?パズーはルイとゼロースと迷ってゼロースにしがみついた。
蟲と大狼の次は蛇。世界は怖すぎる。目付になるとかティダの背中を見たいとか高望みせずに崖の国にいれば良かった。
〈バジリスコスだ。今は話すな帰れって。まだ遊んでないのに帰れって。親も呼んでるから帰るしかない。次の王は女王。しかもバジリスコスの隣に並ぶ本物の蛇の女王だって。遊んでくれるよきっと。姫は歌ってくれた。変なペジテ人は蛇の子になるなら入室してもいいって。変な奴も蛇の子にしなさいだって。伝言、ここには欲しい情報は何もないって〉
アンリが眉根を寄せた。アンリの首に蛇蟲が噛み付いる。蛇蟲はすぐに離れたて群れに加わった。
「アンリさん!」
「アンリ様!」
ゼロースとパズーが叫ぶと、アンリは腕を伸ばして掌で静止の指示を出した。
「床に目をとられて天井を確認してませんでした!しかし敵意はなさそうなので動かないで下さい!パズー君は分かってますね!」
〈変なペジテ人が蛇の子になった〉
〈新しい蛇の子が遊んでくれるって!こっちの蛇の子はいつもつまらない。陸上蟲の子が陸上にきても良いって。新しい蛇の子はとても楽しいって。アングイスとセルペンスの子も遊ぶ!〉
あっという間に蛇蟲達が出てきた穴へと帰っていった。
アングイスとセルペンスというのか。そしてやっぱり子供なのか。新しい蛇の子?
それから石像が元に戻った。アンリが噛まれた首を抑えて座り込んだ。相当痛いようで、苦悶の表情に荒い息をしだす。それなのにアンリは無理やり笑った。
「少々痛くて熱いですが大丈夫そうです」
ゼロースが真っ青な顔でアンリに駆け寄った。パズーも慌てて後を追って。ルイもついてきた。シャルルがアンリを見下ろして、青白い顔で茫然としている。
「パズー!これはどういうことだ?あの蛇達と何を話した⁈絶対に話していただろう⁈様子が変だった!」
ゼロースがアンリの首の噛み傷を確認しながら怒鳴った。アンリの首の噛まれたところが真っ赤になって腫れている。左側の首が倍くらいになっていて痛々しかった。
「話したのは私です。少々辛……」
微笑みながらアンリが後ろに倒れた。ゼロースがアンリを抱き止める。アンリは気を失っていた。大汗を掻いているし、呼吸も荒い。
こんなの知られたらティダにぶっ殺される。
「痛いっ!」
足首に激痛が走った。見ると蛇蟲に噛まれていた。あっという間にパズーの足首から離れて、まだ石像で閉じてない穴へと入っていった。すぐに石像が穴を塞いだ。
「変だな。痒いくらいで何ともない」
パズーはズボンの裾を捲った。腫れてもない。アンリとは大違いだ。
〈こちらはあっさりと蛇の子だな。妙な匂いのペジテ人は血が足りなくて死ぬかもな。人の王にも思えるがどうなのか。孤高ロトワと全面戦争かもしれん。ふむ、困った。どうするかココトリス。やはり蛇の子の判断は難しいな〉
低い大人のような声がした。
〈
〈ありがとう
似ているが別の声。バジリスコスにココトリス。蛇蟲の親玉?
要求通りに蛇の子にしたぞ?三名?
〈近海の民とは古い盟友関係。孤高ロトワの皇子の妃を囲っておくと役立つ。我等はもう囲っているので親切心だ。蛇の子二人と蛇の王子に救わせろ。我が民の子らが毒消しを大量に贈ったので残っている。治ったら扉を開くので少し話すと良い。向こうにはしばし待てと伝えてある。後の会談で妃の救済は絶対に使える。既に
何だ何だ次々と。孤高ロトワの龍の皇子の妃?アンリが妃なら、孤高ロトワの龍の皇子はティダ?蛇の女王がシュナ?
〈手打ちも何もとっくに解決している。恩着せがましいのは相変わらずだな。
ココトリスは臆病かもしれない。少し親近感を覚えた。しかし、絶対に姿を見たくない。大きな蛇の蟲だろう。声だけで十分。
〈ココトリスよ胸を張れ。古くからの盟友もいる。北西アシタバは決して
パズーは考えることを放棄した。話についていけない。耳を塞ぎたくても、耳から聞こえてくる訳ではないのが辛い。無視したくても無視出来ない。
〈して
新しい蛇の子は三名。
状況分析するとアンリとパズー。そしてセリム。
「パズー、何をぼーっとしている。アンリさんの手当てをしないとならない。ルイ国王が部屋を探してみたが何も見当たらない。一度戻る。グスタフ元王に筆談で質問をするしか……」
ゼロースに体を揺さぶられてパズーは我に返った。気がついたが、水の中にいるような感覚だった。今は視界良好。これが蛇の子?
「いや、あの。少し待って。王交代がセリム?違う!全然違う!」
冷たい水の感覚がした。海蛇だから海?訳が分からない!
〈蛇の子よ、知らぬからだな。人の世の王と我等が認める王は時に食い違う。グスタフは一応一致していた。
話しかけるんじゃなかった。全然理解出来ない。セリムの奴、何やってるんだ?蛇蟲が現れて、大興奮しているのが目に浮かんだ。
蛇蟲ではなく海蛇か?
一刻も早く崖の国へ連れ帰ろう。元々トラブルメーカーだったが、セリムが崖の国を出てから問題ばかりだ。それも巨大な珍事件。
〈その通り。アラーネアからセリムを全力で隠している。そちら側からも入ってこないように続けて欲しい。時がくれば謁見だが、セリムにはまだ早い。トムにして蛇の子パズーよ、
水の感覚がなくなり、静かになった。もうバジリスコス、ココトリス、それに
「ゼロースさん!あとルイさん!それに何よりグスタフとシャルル!訳が分からない。この国って蛇に支配されているのかよ!意味が分からな過ぎる、助けてくれ!」
パズーは震えながら呻いた。それからアンリを抱えて立つゼロースの腕にしがみついた。
「またセリムだ!いつもいつもセリムだ!目付を交代したのに何で俺が巻き込まれるんだ!いや、ルイだ!ルイがセリムに似てるからだ!絶対セリムが何か
パズーはゼロースを引っ張った。それからルイにも来いと目で訴えた。とにかくアンリを助けないとならない。毒消しとは流星みたいに空から降ってきた子蟲からの贈り物のことだ。金平糖みたいで、ラステルが寝泊まりするシュナの寝室の机にに飾ってある。ラステルが几帳面に三角形に積み上げてパズーに自慢してきた。あれだ。
「おいパズー!何だ。教えてくれ。蛇と話したのか?」
「パズー殿、君は海蛇と何を話したんだ?」
ゼロースとルイに訳が分からない会話を教えながらパズーはズンズンと進んだ。
「僕が蛇の子?」
キョトンとしているルイにパズーは返事をしなかった。アルム海岸とやらで海蛇に好かれたに違いない。絶対にそうだ。私と口にしていたが、本来は僕と言っているのか。素っぽいとますますセリムっぽいので、海蛇に好かれるルイを想像しやすい。無意識だろうがセリムにルイの世話役として残されたんだ。最悪だ。ティダに頼まれたから、もう逃げ道がない。逃げたらティダに殺される。
「セリム様への回答はどうするんだパズー?」
「そんなのはっきり分からないって怒鳴りつけてやる!二千年分の蟲への仕打ちへの回答って聞いた時から違和感だったんだ。アシタカのせいた!ティダのせいだ!そんな昔のこと知るか!怒った挙句に他国情勢にというか、蟲とか海蛇まで巻き込んで何してるんだあいつ!ジーク様や兄弟に顔向け出来るのかって注意する!アシタカ達が深刻そうだから
目付代理になると言っていたシッダルダは何してる?ラステルも何をしている?
「
他国に蟲に今度は蛇!他所様に首を突っ込んでやりたい放題のセリムを止めないと、とんでもない厄介がやってくる!既にやってきている!
「
なのに、なのにいつも巻き込む。パズーも出来るよというキラキラした目でその気にさせる。また巻き込まれた。蛇の子とか訳のわからないものになった。しかも既に蟲の子らしい。通りで子蟲に懐かれるはずだ。セリムが何か吹き込んだ。絶対にそうだ。
「あのパズー殿。それは何か誤解なんじゃ……。ヴァナルガンド殿が蟲を止めてくれているんだろう?」
「そうだ。あいつはいつも無意識なんだ。それで世界の中心にいる。交渉とか知らない!というかあいつなら話に行けば勝手に自分の想いを語り出すから会いに行く方が早い。問題が大きいし皆が深刻だから気づかなかった!単なる
そうだ、さっさと会いに行くべきだった。滅多に怒らないセリムが怒っているという時点で手がつけられない。他の人と怒り方が違うから、知ってないと中々
セリムがいなくなった
あとこんなだとすぐ死ぬ。絶対に死ぬ。お前のせいだって、いつか絶対に背中を刺される。今までは運が良かっただけだ。そんなの見たくない。
セリムをよく知る自分が、正解だろうという方法で横っ面叩いてやる。
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