覇王と蛇の女王 1

 蟲の民の国、初会議中。


 その頃のドメキア王国。


 グスタフ元王を勾留している、客間。


***


 王だけが知ると言う、ドメキア王国と蟲に関する書物。シャルルの問いかけに、予想通りにグスタフは回答拒否。意外にもティダは壁際で沈黙を貫いている。それにつられて、アシタカもグスタフに話しかけられなかった。ティダに連れてこられたルイも黙っている。アンリ、ゼロース、パズーも当然話さない。


 筆談用の紙とペンを放り投げてから、グスタフは椅子の上で微動だにしない。うすら笑いをしているだけ。


 ふいに、アシタカの手をシュナが握った。キツく握られて、シュナの爪が食い込む。シュナの横顔は、憎々しげな右手とは違い満面の笑み。


「セリム様が憎いでしょうが、処刑から守ってもらったのですよ。説明不足な兄上からの話では信じないようなので、わたくしからもお話ししましょうか。きっと手を貸す気になると思いますよ。死ぬ気はないようですからね」


 アシタカは思わず、シュナに向かって首を横に振った。アンリがアシタカの反対側にそっと立った。腕を撫でている。グスタフが笑うのを止めた。


「グスタフ元王よ、正直に申しまして胸がすきました。長年死ねと言われ、ついには戦場に死ねと放り出されましたもの。しかしセリム様がこう申しました。娘のシュナ姫が賢いと知っていたなら、戦場に送る時点で謀反むほん降伏こうふく、亡命を読めない方ではない。確かに、グスタフ元王は賢い方。それで聞きに参りましたの。セリム様が言う通りならわたくしは親不孝者です」


 シュナはもう泣きそうだった。声が震えている。


「セリム様はお優しい方。蟲の王は貴方の首も、国も、何もかもを殲滅せんめつする予定だったようですよ。それが交渉の場を設け、グスタフ元王とこの娘がいつか仲直りするかもしれないと非現実的な夢も見ている。夢なんて思いましたが、あながち非現実的ではないようですね」


 シュナがアシタカから手を離した。壁際に立つティダは身じろぎ一つしない。むしろルイとシャルルが一歩踏み出したのを目で静止した。アシタカも動くなというようににらまれた。


 グスタフが口角を上げて鼻を鳴らした。グスタフの目は見えないのにシュナは笑顔を止めない。ドレスの裾をめくり、足にくくった短剣を鞘ごと取り出した。動こうとしたアシタカの肩が押さえつけられた。右にはティダ、そして反対側はアンリ。強く首を横に振られた。


わたくし、王になろうなどとせず、阿呆などと偽らず、貴方に助力すればよかった。よくよく思い出してみれば、わたくしへの謀殺の数々は貴方からではありません。兄上が母ナーナの死に貴方が心を痛めていると申しております。わたくし、信じ抜いて刺される道を選びましたの。とても素晴らしい方と出会いましたから、なるだけ清く、正しく生きていこうと思います。天も味方してくれますし」


 シュナが握る剣がガタガタと揺れている。それでもシュナは力強くグスタフの手に短剣を握らせた。グスタフが明らかに動揺し、シュナを振り払おうとしたがシュナは避けた。それから短剣を鞘から抜いて、グスタフの手を自らの手で固定した。シュナは剣の刃を自分の心臓に向けた。


「セリム様のことですからそのうち声も目も戻るでしょう。グスタフ元王、貴方がいなければそもそも生まれてこなかった。わたくし、セリム様のようになりたいので一生かけてその視力と声が戻るように助力します。親不孝を許す気が全くないのなら、刺し殺して下さい。これからとてもひどい話をします。貴方が死ぬなら共に死にましょう。本気です。それを踏まえた上で聞いて下さい。嘘だと思っても構いませんが、多分信じてくださると思います」


 グスタフの口元が弛緩しかんし、眉根が寄った。グスタフへシュナが優しい微笑を投げた。見えないのに、演技を続けるらしい。グスタフがシュナの手を離させようとして、シュナの頬に一文字の傷がついた。シュナが小さな苦悶の声を漏らすと、グスタフの手から短剣が落ちた。


 アシタカはティダとアンリに羽交い締めにされた。ティダには口も塞がれた。


 シュナが素知らぬ顔で短剣を拾い、もう一度グスタフの手に短剣を握らせた。真っ青な顔になったグスタフが短剣を拒んだ。グスタフから声にならない呻き声が出る。


「見えないからわたくしを傷つけるのが怖いと?そう思えますよ。安心して下さい。ちょっと顔にかすり傷が出来ただけです。とても悲しい話です……こんな話をしたら殺されても文句は言えません。もう一度言っておきます、自死したらわたくしも死にます」


 突然、シュナが刃を両手で握った。ポタリ、ポタリと血が滴る。それからグスタフの膝の上に短剣を置いて、両手でグスタフの頬を包んだ。


「見えないでしょうが、貴方の頬を濡らすのはわたくしの血です。死なば諸共もろともは本気です。わたくしの気持ち、よく考えて下さい。さて、私わたくしに双子の兄と姉がいますね」


 予想外の発言に部屋中静まり返った。


 双子の兄と姉?アシタカを抑えるティダとアンリも目を丸めている。ゼロース、ルイ、パズーも同様だった。


「何故それを知っている?帰国してすぐ、母上の日記を見つけましたの。はっきり言って、知りたくなかったことばかりです。母が愛人に溺れたのはわたくしが生まれたずっと後です。わたくしにカール、声や顔も貴方や親族に良く似ているではないですか。その目が見えなくなる前に見たでしょう?わたくしの容姿、魔性と呼ばれたお祖母様にそっくりではないですか。わたくしとカールは確かに貴方の娘ですよ。美人の娘が二人、良かったですね」


 グスタフの眉毛がピクリと動いて、唇が真一文字になった。唇の端が震えている。グスタフが益々青くなった。それから首を横に振った。シュナはグスタフの頬から手を離さなかった。


 カールも娘?


 アシタカはやはりそうかと息を飲んだ。あの顔立ちに、一人でペジテ大工房に乗り込んできた理由も、そうでなければしっくりこない。問題は、シュナがずっと違うと言っていたのにここにきて真実を語り出したこと。日記を見つけたばかりというのが本当なのだろう。


わたくし、セリム様の言葉だけで貴方を許そうと決めた訳ではありませんの。貴方を一先ず許す理由は母上です。母上は男の趣味が大変悪い。ペジテ大工房との架け橋?聖女?違います。単に貴方の愛嬌あいきょうある容姿と、ペジテ大工房にはいない褒め上手。あと品の良さに心打たれただけです。あと豊かな大自然に焦がれてやまなかった。貴方がペジテ大工房の権力が欲しいと分かっていて、それを逆手にとって結婚した。そこまで好いてくれていた母上を先に裏切ったのは貴方です」


 シュナがグスタフの頬を思いっきりつねった。


「誰よりも強くあれ。それがこの国の教育方針。十三人もの兄と姉を、嘘と策略で蹴落として王になったグスタフ元王よ、確かに貴方の思惑通り王の器が育ちましたよ。疑心ながらも娘だと信じたかったから、死なぬように采配してきたのでしょう?わたくし、自分の為にそう思うことにします。母上が愛した方。わたくしが生まれるのに必要だった方。だから、貴方を暗殺しようとしたこともびます」


 シュナがポロポロと泣き出した。グスタフのがシュナの手を握り、だらんと力を抜いた。


 部屋にバースが入ってきた。手に三冊の本を持っている。シュナがアシタカにすがりつくように抱きついてきた。そのまま、ズルズルと崩れ落ちて床にへたり込んだ。アシタカもしゃがんで、シュナの体を抱きしめた。


 バースが即座にシュナの傍に片膝ついた。


「こんなものさえ飲み込んで、よくぞ耐え抜いてきましたシュナ姫様。カール様は何も知らないのでしょう?」


 バースが何故かアシタカに本を差し出した。静寂な部屋にシュナのすすり泣きがひびいた。本をパラパラとめくると確かに日記だった。グスタフへの恋心を表現する文字を見つけて、アシタカは本を閉じた。シュナは嘘をついていない。シュナがバースに首を横に振って立ち上がった。


「アシタカ様、血で汚したくないので後で貴方から彼に渡して下さい。目が見えないようなので、少しだけ話そうと思います」


 シュナが嗚咽しだしたので、アシタカはさらに力を込めて抱きしめた。しかしシュナがアシタカをそっと押して離れた。それから力強く立ち上がった。アシタカがシュナの肩を抱いたのは拒まれなかった。


「バース、見つけたのは帰国してからです。ラステルと子蟲君が発見したのですよ。カールは、わたくしの姉というのを知っていたかもしれません。それならペジテ大工房へ一人乗り込んだことが理解出来る。さて、読んでみましょうか。父親そっくりなのに、グスタフは信じてくれない。目が青いからだ。長年授からなかったのに急におかしいなどとも言われた。おかしいのはグスタフだ。他の誰との子だと言うのだ。双子を殺すとうばわれた。でもきっと殺しはしない。必ず探し出して連れ戻す。きっと大丈夫。あの人は疑ぐり深く自信がないが、良心を持つ方」


 読んでみましょうか、と言ったのにシュナは暗記しているのか何も見ずに話し始めた。グスタフが思いっきり動揺を見せた。


「ほら、嘘ではないでしょう?こんな話城の誰が知っていると思います?私に教えます?飛ばし飛ばしで続けますね。やはり殺しはしてなかった。しかも双子騎士にちなんでシュナとエリニース、そう名付けてくれたらしい。見つけたと思ったら、さらわれて行方不明。生きていて欲しい。王家の始祖にちなんだ名をつけてくれたということは、何か理由があって城から子供達を離したのだろう。しかし、いくら聞いても教えてくれない。私の勘違いなのだろうか。話して欲しい。きっと何か理由がある。きっと子供達の為だ」


 シュナはわなわなと震えているが、声は凛としている。グスタフが茫然としたのか、大きく口を開けて固まっている。


「娘にシュナ・エリニュスと名付けてくれた。双子のことをやはり後悔しているのだろう。また目が青いが今度は自分の娘だと信じたらしい。何故だろう?はぐらかされる。シュナは重い病で長生き出来ないかもしれない。グスタフが病の原因である、蟲森を破壊し尽くすととんでもない事を言い出した。それよりもシュナを抱きしめてあげて欲しいのに触れてもくれない。死んだ時に辛すぎるからだろう。王だからとすぐ人を罰するが後でとても落ち込んでいる。侵略してくる二カ国にも怯えている。忙しいと言って最近ろくに話しが出来ない。あまりに迫ってくるラーハルトを愛人だと疑われている。他の妃が言いたい放題嘘を吹き込んでいるらしい。味方が少ないからどうして良いのか分からない。何もしてあげられてない」


 シュナは涙を流しながら、淡々と語っていく。グスタフが震えだした。


「双子の娘の方が見つかった。第二王妃の手先に売り飛ばされていた。奴隷なんて可哀想に……。早く見つけられて本当に良かった。メルビンと相談して、一先ず従者として育てることにした。誤解され続けてグスタフと全く近づけない。目も合わせてくれない。すっかり浮気女と信じ込んでいるらしい。この城は嘘ばかりで息苦しい。いっそ本当に浮気女になりたいと思ってしまう。なのにどうしてこんなに好きなのか。出会った頃に戻って欲しい。会って話せば届くかもしれないのに、全然会えない」


 グスタフが椅子から転げ落ちた。体を丸めて慟哭しだたので、胸が苦しくなった。シュナが悔しそうに唇を噛んだ。それからグスタフの膝から床に落ちた短剣を拾い上げた。グスタフが短剣を探すように床の上で手を彷徨わせた。シュナが目配せしたので、アシタカは護衛人にグスタフを取り押さえさせた。


「貴方の気持ちは、本音はその口から語ってもらうまで待ちます。その前に自死したらわたくしのせいなので死にます。もう少し続けましょうか。メルビンのおかげで息子も見つかった。スラムにいたとはカール同様なんてこと。王子が増えると王位継承問題はさらに深刻になる。ラーハルトが騎士として育てると言う。シュナ、カール、ゼロース、三人揃ってペジテ大工房へ亡命させようか。しかし、賢いグスタフならカールとゼロースが子だと気がついているかもしれない。時折そういう目を感じる。逃げたらそれこそ信じてもらえない。グスタフは自身の良いところを見失っている。問題ばかりの政治に、流行病。きっと疲れているのだろう。何もしてあげられてない」


 アシタカは言葉を失った。振り返ってゼロースを見た。ゼロースが愕然がくぜんとしている。


「これほど貴方をしたった母上の為に、あと娘が二人に息子が三人もいるので生きて下さい。先に許すので、いつか親不孝を許して下さい。前半は恋に浮かれる母上の言葉が恥ずかしくて読み飛ばしました。後半や最後にはどんな恨みがあるかと思ったら、母上の日記には最後まで真心しかありませんでした。夫を信じきれずに浮気してしまった後悔。死刑が決まって、子供達をこの城に残す無念と心配。なのに恨みは一つもありません。目を治して、読んであげて下さい。貴方、カールとゼロースのことに気づいていたんですよね?ちょこちょこ不可解な恩赦おんしゃがありましたもの」


 シュナが護衛人に取り押さえられているグスタフの頬をもう一度撫でた。グスタフの目に巻かれた包帯が赤くにじんでいく。傷口に涙が混ざったのかもしれない。


「こんなの知りたくありませんでした。貴方を恨んで呪って殺したかった。しかし、もう無理です。信じることを教わってしまったので、貴方の行動にそこはたとなく愛情を感じてしまうのです。母上はこの国を愛していたのではありません。貴方を愛していた。悔いて死ぬなら、話したわたくしのせいだから共に死にますよ。この話と、わたくしの話を踏まえてもう一度尋ねます。王に伝わる書があるのならば、どこにあるのか教えて下さい。シャルル兄上ももっと話があるでしょうし、貴方も心の整理があるでしょうから少し時間を空けます」


 シュナが護衛人からグスタフを離させた。それからそっと抱きしめた。グスタフは放心している。しばらくしてからシュナがグスタフから離れた。目が真っ赤に充血しているが、もう涙は止まっている。


 シュナが振り返って一瞬シャルルを頼るように見た後に、ゼロースを見つめた。シャルルが「父上……」とだけ口にしてグスタフを抱きしめた。ゼロースはずっと茫然としていたらしく、シュナに見られてからハッと目を大きく丸めた。


「私がシュナ姫様の兄?カール様と双子?」


 シュナが泣き笑いした。


「らしいです。帰国して、この日記を見つけて知りました。わたくしとしては大変嬉しいです。ゼロースとカールが双子と言われると似ているような?似ていないような……。年も偽りのようです。日記を少し読んでみて下さい。受け入れてくれるのならば今日から兄上と呼びたいです。義理の姉においめいも出来るので、とても心強いですがどうでしょう?いつ言うか迷っていたの……」


 恐る恐るという様子のシュナに、ゼロースが勢いよく駆け寄った。ゼロースがアシタカからシュナを奪った。


「日記など読まなくても本当だと分かります!色々と合点がいきます!なんて光栄なのでしょう!妻も息子も娘も大変喜びます。我が自宅で暮らすというのはどうでしょうか。もう姫君ではないですし、弟子もいて護衛もいるのでそれが良い。スラムから拾われてから、ラーハルト様が毎日のようにシュナ様とカール様を大事にして守れと言っていたのはこのことです。遺言も三人で仲良くと不可解だったのですが、謎が解けた。ああ、ルイ国王。王位など全く興味ないので知らなかったことにして下さい」


 ゼロースがあまりにもウキウキし出したので、アシタカは面食らった。しれっと話しかけられたルイも驚いている。シュナもゼロースの反応が予想外らしく唖然としている。


「へえ、匂いが似てると思ってたが、長年近くで仕えていたからかと。目元がそっくりだしな。心酔している主が妹とは良かったなゼロース。シュナとしてもゼロースが兄とは嬉しい以外ないだろう。従兄弟なんざ要らないな。良かったなアシタカ。過労死しなくて済むぞ。ヴァナルガンドの説得が済んだらとっとと国へ帰れ。お前は用済みだ用済み」


 沈黙貫いていたティダがアシタカの肩に手を回した。思いっきり愉快ゆかいそうな、腹立たしいくらいのニヤニヤ笑いを浮かべた。用済み?この男は頭が悪いのか。シュナにはアシタカが一番必要だ。


「シュナ様。いえシュナ。ティダ皇子の護衛をしようとも考えていましたが、誰かに嫁ぐまではずっと近くにいます。いや、嫁ぐ?そうすると離れるのか?それはダメだ。ああ、そうか、アシタカ様に雇ってもらいます。国にではなくシュナに仕えてきたので王国騎士など未練なし。アシタカ様、このゼロースはとても頼りになる男だと知っていますね?近衛兵になりましょう。優秀な護衛が必要でしょう?心身共に支えられる」


 決定事項だというように、ゼロースがアシタカに満面の笑顔を向けた。ティダが不愉快そうに鼻を鳴らしたので、アシタカはついうなずいた。ゼロースがそっと優しくシュナを抱きしめた。シュナがますます唖然とした表情になった。


「アシタカ様が不在でもいつでもお側にいます。今まで通り守り抜きます。長距離通勤?そんなもの必要ありません。私だけでなく、妻と子もいるので安心して下さい。アシタカ様、仕事でしたら書簡や通信機器などでも出来ます。貴方の体調不良をシュナが自分のせいだと悲しんでは困ります。なるべく自国でお身体を大切にして下さい」


 拒絶の笑顔にアシタカはたじろいだ。ほとんど話したことがないのに敵意剥き出し。何故なのか。ティダのせいか?


「そうだなゼロース。全くもってお前の方が頼りになる。ポッと出の従兄弟なんざ足元にも及ばない。血の濃さも年月が築いた信頼関係も、何もかもが家族。良かったなシュナ、アシタカ」


 ゼロースがティダとがっしり握手をした。アシタカへの拒絶感はティダへの忠義なのだろう。ゼロースもアシタカの従兄弟になのだが、誤解をなくすまでしばらく酷い扱いをされそうだ。察したのかゼロースの腕の中でシュナが呆れたような顔になった。アンリがティダの背中を叩いた。それからゼロースを睨んだ。


 アンリがゼロースからシュナをひったくった。


「二人して、こんな時にくだらないことはやめなさい。アシタカも、貴方ってこんなに変だったかしら?シュナのこの手と顔の手当が先よ。シュナもなんでこう自分が傷つくことばかり……。行くわよ」


 アンリがシュナの頭を撫でながら歩き出した。グスタフに聞こえないようにか、小さな声で「我慢しなくてよいのよ」と囁いていた。アシタカは思わずアンリの肩を掴んだ。アンリが振り返って、シュナから離れた。それからアシタカに接近して、小声で耳打ちされた。


「それが一番良いわ。ほら、頼んだわよ。こっちは任された」


 アンリがアシタカから離れてティダとゼロースの腕をがっしりと掴んだ。アンリにあごで早く行けと促されたので、すぐさまシュナを横抱きにして走り出した。


 あの二人、嫌な予感しかしない。


 チラリと振り返るとティダとゼロースが鬼のような形相でアシタカを睨んだ。アンリに服の後ろを掴まれて止められているのが見えた。


 そんなに頼りない男だと思われているのかと、情けなくなった。


「やり過ぎですよ。グスタフに対してではなく、貴方に対してです。"兄上がいる限り、わたくしは何処にも行きません"という言葉はシャルル王子ではなくゼロースさんにだったんですね。どれだけ抱えているのです?他には?」


 シュナはまだ唖然としている。


「あんなにすんなり受け入れられるとは思ってもいませんでした……」


「むしろ早速兄貴風。ティダはすっかり父親気分。何なんだ、用済みとは。僕が一番必要なのにティダの奴は頭が悪いのか。アンリは相当苦労するな」


 アシタカの腕の中で、シュナが笑い出した。


「急に家族が沢山増えて嬉しい限りです。アシタカ様がわたくしに一番必要です。穏やかで安心できる。父も兄も姉も戦士ですからね」


「そうです。ゆっくりとシュナの話を聞くよ。一生かけて仕事をしながらゆっくり語り合う。シュナに刺さった棘は急には抜けない。仕事もはかどり、大切な家族も楽になる。やる気しか出ない。それにしてもしばらくは近くで見張ってないと何をしだすか分かったものじゃない。手も顔も、そこまでする必要はなかった。やり過ぎるところはなるだけ早く治してもらいますよ」


 傷跡が残ったらどうするというのだ。ドメキア王国ではろくな治療薬もないだろう。顔だけでも綺麗に治さないとならない。アシタカはシュナを胸にくっつくくらいまで引き寄せた。何故かシュナが大笑いしはじめた。


〈蟲の民の国、国王セリムが告げる。古きテルムの子を筆頭に呼ばれている者は進言したように速やかに第一境界線へ参れ。さもなくば交渉までもたない。もって日没までだ。交渉決裂ならば仲立ちしない〉


 セリムの声だ。アシタカは足を止めた。蟲の声と同じ現象。蟲の声も聞こえたり、聞こえなかったりするのにセリムの声?


 蟲の民の国、国王セリム?


「アシタカ様?」


「セリムが呼んでいる。手配しきれないうちに移動せざるを得ない。シュナの手当をしながら向かうしかないな……」


 アシタカは方向転換して部屋に戻ることにした。既にティダが追いかけてきていた。頭の上に子蟲のアピが乗っている。ティダの顔色が悪い。


「聞こえたな。俺達以外に考えさせろという訳だ。手厳しい奴め。俺達に何をさせるつもりなんだかな。探ろうにも邪魔ばかりでうるさくてならねえ。選択権がこっちにないのが腹立たしい。アシタカ、シュナ、戻るぞ」


 セリムらしい考えだが、背筋に寒気がした。ティダが顎で示すよりも早くアシタカは歩き出した。ティダも即座に追いかけてきて横に並んだ。


「セリム様に何て言われた?」


「第一境界線に早く来いと。日没まで」


 アシタカが口早に告げるとシュナが理解したというように、ため息を吐いた。


蟲の王レークスが聞こえる者にだけ告げる。第一境界線で大蛇蟲アングイス)と|小蛇蟲《セルペンス戴冠式たいかんしきを行うそうだ。日没までに第一境界線に来なければ迎えに行くという。我等との交渉もあるので蟲の民の国、国王セリムが忠告したように速やかに参れ。108名の意味は分かるな?なお交渉の場に、約束までの時間に一人でドメキア国王ルイが現れなければその時点で交渉決裂である。最終勧告だ〉


 ティダと目が合った。ティダの頬が引きつった。それから大きくため息を吐いた。


「ったく次から次へと問題かよ。シュナ、セリムは蟲の民の国の王で蟲が戴冠式もするってよ。アングイスとセルペンスとは何だよ、108名ってお前を殺そうとした奴を集めろって要求もわからんしな」


 ティダの発言にアシタカは驚いた。


「シュナ姫を助けた108名だろう?」


「さあな。どっちだって丸め込めば同じだ。お前ら二人で決めろ」


 ティダがグスタフがいる部屋の扉を勢いよく開いた。


「おいルイ!俺達からお勉強の時間は終わりだ!蟲の王レークスもヴァナルガンドも俺達に頼るなってよ」


 ティダがルイの胸倉を掴んだ。


「あ、あの。突然どういうことです?」


「俺は蟲の王レークスとドメキア王国の交渉なんざ知らん。しかし俺は苦労してこの国にシュナを配置した。水の泡にされてたまるか。よって遺憾いかんながら最大限の手配をする。アシタカ、シュナ、俺の部下と群れについて俺は俺の為に交渉する。俺はいざとなれば己の優劣で取捨選択するからな。それを覚えておけ」


 ティダがルイをアシタカへ向かって突き飛ばした。それから壁際で存在感を全く消していたようなパズーに向かい合った。


「第一境界線へ早く来いと呼び出された。俺は部下55名と月狼スコールを連れて行く。ドメキア王国国民ではなく俺の群れだ。パズー、ゼロース、残れ。ルイを引きずってでも交渉日までにヴァナルガンドの元へ連れて行け。ゼロースは俺の代理でパズーはヴァナルガンドの代理。ルイをそれなりにしろ。特にパズー。お前だ。ヴァナルガンドのことならお前しかいない」


 アンリがパズーの横に並んだ。


「私とヴィトニルさん、ウールヴさんの名がないのはこういうことで良いかしら?」


 ティダが思いっきり嫌そうな顔になった。


「そうだ。何よりも君が俺の代理。この数日、ヴァナルガンドにもついていたしラステルのことも分かるな。俺の知り合いでは君が一番ヴァナルガンドに近い。パズーを働かせて後押しをして欲しい。ゼロース、パズー、お前らアンリを任せるという事がどういうことか分かってるな?役に立たなかったら蟲より前に俺がなぶり殺す!それじゃあすまねえ、親族郎等全員骨まで残らねえと思え!」


 鬼のような形相のティダにパズーが恐怖で引きつってパクパクと口を開け閉めした。


「了解しました。このゼロース、必ずやアンリ様とパズーを守りますし我が王の代理として奮闘します」


「えっと、あー、俺?確かに俺か?ああ、うん。死にたくないし、大丈夫……」


 パズーがすんなり了承したのに驚いたが、ここぞというときは度胸があることを思い出した。ティダが満足そうに二人に微笑みかけ、足で強く床を三回踏み鳴らした。ゼロースが堂々としているのは変わらないが、パズーが大きく息を吸って胸を張った。これだ、真似したくても出来ない鼓舞方法。


「あら、私にも鳴らしてくれないの?そうですパズー君、大丈夫です。蟲が居並ぶ境界線とやらより安全。護衛人長官、ティダと並ぶ大狼二頭、そして一番の部下ゼロースさん。いざとなれば逃げて欲しい者達だから、危険がないけど重要な役に選ばれた。実力や性格への信頼もあります。共に頑張りましょう」


 アンリがパズーとゼロースに、にこりと微笑んだ。アンリに思考を見透かされたパズーが目を丸めた。ティダが大きく頷いた。何処と無く嬉しそうだ。すっかりアンリに首ったけらしい。腹が立つので今度真珠に引きずられる子犬と呼んでやろう。


「賢い妻と部下で助かる。そうだ、はっきり言って何があるか分からん。これが俺の最大限。君達とウールヴとヴィトニルならば上手く立ち回るという信頼だ。ルイ!ヴァナルガンドがいるから交渉なんざ心配するな。俺はもうやる事がないからすぐに発つ。バース行くぞ。お前にはゼロースの代わりに騎士団をまとめてもらうからな。ビアーに背中見せてやれ。あいつはまだまだ足りな過ぎる。シュナとアシタカもとっとと決めろ」


 不安げな様子で部屋を後にするように動いたのに、ティダがいきなり方向転換してアンリを壁に押し付けた。その瞬間予想がついたのでアシタカは背中を向けた。視界の端でティダがアンリにキスしたのが見えた。気持ちは分かるが、場を弁えろという注意には全く耳を貸さないらしい。この件が終わったらもう一度説教してやる。


「さて行ってくる」


 凛とした声がしたので、振り返ると何事もなかったかのように、威風堂々とティダが部屋を出て行くところだった。アンリを油断させる演技か。真っ赤な顔をしてポカンとしているアンリが甘ったるい幸福感に満ちた表情になった。熱視線でティダの背中を見つめている。ティダの背中に子蟲のアピが張り付いていた。


 こんなアンリの姿を初めてみた。ゼロースは素知らぬふり。パズーは赤くなって固まっている。


「ここまで手配されたらわたくしはもうあまりする事がありません。わたくしが言い辛いことを見透かして素早いこと。ゼロース、パズー君、アンリ。頼みました。ルイ、シャルル、全軍に待機と国民への避難勧告をするように指示を出してありますが頼みましたよ。疑心で蟲に討って出られるのが一番困る。第四軍とゼロースとカインを上手く使いなさい。シャルル、貴方の手元にはセリム様の真心こもった手紙が沢山ある。ルイと読みなさい」


 シュナがアシタカを不安なんてないという笑顔で見上げた。肩が少しだけ震えている。


「シュナ姫様……俺……」


 ルイは真っ青だが逃げ出しそうには見えなかった。


「姫ではもうないですのでシュナとお呼びください。ルイ、帰ったら美味しい紅茶を飲みましょう?酒で宴会など、特に粗暴者達のやかましい席は好きではありませんの。ヴラドやリチャードも上手く掌に乗せて、誉れがあるようにしてあげなさい。ゼロース……ゼロース兄上、カインと共によろしく頼みましたよ」


 シュナの笑みにゼロースが涙目になった。ぶんぶんと大きく首を縦に振ったゼロースに、何とも言えない気持ちになる。


「ルイ、セリムはとても人を見る目が良い。グスタフの根底にある愛情深さを見抜いていた。シャルル王子の勇敢さや根っこがシュナに似ていることもだ。誰も信じなかったのに一人だけ信じ抜いていた。結果正しかったのはセリム。ルイ、君なんてさっさと去ったティダ含めてこの場の全員が信じている。だから自分を信じろ。君はセリムに部屋から追い出されないどころか支援された。交渉の場でも守られる。誰にでも第一歩がある。先駆者のパズーやシャルルを見習うと良い。パズー、僕の情けなさも話して欲しい。自分を信じろ。無理なら信じるべき者が誰を信じているか考えろ」


 アシタカは何も手配出来ずに行くしかないかとシュナを抱いたまま部屋を出た。


「シュナ姫、僕達はペジテ大工房の飛行船で向かいますよ。しばらくその傷我慢していて下さい。飛行船で手当てします。ベルセルグ皇国兵と護衛人は連れて行く。僕の部下は僕の背の後ろだ。108名はどう解釈する?」


 アシタカは駆け足で廊下を進んだ。


「第四軍から108名を選んで連れて行きます。護衛という名目でです。危険だがどうかお願い、怖くて助けて欲しいと泣きつきでもします。蟲に手を出さない者でないと困る。だいたい決めてあります。わたくし、何もかも許して国民を全て背の後ろにしたので108名などではとても足りません。せっかく身を切るような思いで、多くの支援を得て変わろうとしている国です。何も見捨てません。死なば諸共もろともそう主張し続けます。セリム様にだけ背負わせたりません」


 シュナの瞳は強い光を帯びている。アシタカは強く、強く抱きしめた。彼女が訴えたいことは合ってるだろう。


「行き先は第一境界線ではなく、その後ろで良いですか?」


「ええ。もうドメキア王国シュナ姫ではありません。大陸和平を願う人類の至宝アシタカ様の右腕です。大陸和平には蟲も含まれますね。大狼一族同様に文明を築く種族ですもの。話し合いに応じるのならば協定対象者でしょう?わたくし、ラステルがとても好きなのでラステルが大好きな蟲くらいすぐに好きになります」


 シュナの途方も無い野望と、貴方なら出来るという信頼が重くのしかかる。不思議な高揚感と震え。武者震いというのはこれかもしれない。


「セリムの真似ですか。人類の至宝?大陸和平の対象が大陸のあらゆる文明?まあ、僕はそういう理想論が大好きです。口で言われると何て重圧。至宝を飾る紅の宝石はそこらへんの宝石とは訳が違う。飾られる至宝はこの大陸一輝かないとかすんでしまう。貴方が隣にいてくれるなら励みますよ」


 かつてペジテ大工房が蟲や蟲の民を死へ追いやった。二千年かけてペジテ大工房が変わったと示したい。アシタカは外界へ踏み出した。禁じられている科学技術も持ち出し、今後も悩みながら続ける。ならば蟲との和解も推し進めなければ、また祖国が過ちを犯す。ペジテ大工房のそして大陸の歴史上の愚者には決してなりたくない。


 逆だ。逆になる。独善ならばとことん突き進む。


 テルムは若草の祈り歌を捧げよ。


 テルムが誰だか、何なのか知らないが平和を祈れというのならば、アシタカは誰よりもその道を突き進む。伝承など塗り替えてしまえば悩むこともない。


〈そのような意見がそちらから出るとは予想していなかった。さすが人の王である。民が怯えるので二人で参れ。我が直々に迎えに行く。その間セリムはしばらく中蟲なかむしと相対させる。セリムはシュナ・エリニュスに負担をかけたくなかったらしいが取り越し苦労だな。我は他に出てくるまで二人を人の代表と認識しよう。覇王アシタカ、そして蛇の女王シュナ・エリニュス。大蛇の間で待て。蛇の女王は我が民の救済者。傷は我等が治そう〉


 蟲の王レークスの声でアシタカは方向転換した。筒抜けなのか。


〈ヌーフの息子なのに何故ここまで未熟なのか……。覇王は早くセリムや大狼人間から学べ。筒抜けなのは覇王が開ききっているからだ。大蜂蟲アピス総出で孤高ロトワやアラーネアから弾いている。近海の民もだな。我が民に迷惑をかけるな。我も疲れる。しばし離れる。迎えまで待っていろ〉


「アシタカ様?」


蟲の王レークスが僕とシュナの二人を迎えにくると。人の代表、覇王と蛇の女王だと言われた。僕達の案を知って気が変わったらしい。僕の思考は筒抜けのようだ。未熟だかららしい。孤高ロトワやアラーネアとは何だ?それに近海の民……」


 シュナが下ろしてと暴れるのでアシタカはシュナを下ろした。シュナがアシタカと腕を組んだ。


「ちっぽけな国の王なんぞ、至宝に飾られる紅の宝石の足下にも及ばんからいらないと申しましたがまさにその通り。わたくし、子々孫々そして未来永劫アシタカ様の隣に飾られます。誰にも譲りません。蛇の女王?大鷲おおわしの女王でないのが不服ですが、毒蛇の女王でなくて良かったです。覇王に蛇の女王とは、何だかおどろおどろしくて嫌ですので、人の世では素敵な名をつけて残しましょう。誰にでも第1歩がある。優雅に参りましょうアシタカ様」


 怖いという感情など全くないというように、シュナがあまりに可憐に微笑んだのでアシタカはつい見惚みとれた。


 夜な夜な語り合って知ったシュナの寄る辺なさがよみがえる。手を離したら、一人で突き進んで行くだろう。シュナはセリムやティダと同じ人種だ。どこまでも上を目指していく。


「同じ道を歩くのですから隣に並んでましょう。というより並んでいてもらいます。一人では大変心細い。シュナ、僕を助けて欲しいので常にご自愛を忘れないように。常に僕を頼り、それから情けない僕を鼓舞して下さい。あと置いていかないように。苦難すぎる道です。見返りなくとは言いません。僕一人だけでは足りないでしょうし他にも貴方に色々と与える者もいますが、誰よりもこのアシタカが全身全霊でこの世の誰よりも大切にします。具体案がなくて申し訳ないが僕なりの誠心を最大限に捧げましょう」


 ここまで明け透けなく話すのは気恥ずかしくて、アシタカはシュナの顔を見ないで歩き出した。


 何かを変えたいと、大反対押し切って崖の国へ単身向かった時に、ペジテ大工房を飛び出した時に平穏など捨てた。無謀すぎる理想だと悩みに悩みながらも、大陸和平を進めると口にした時に残っていた未練と自信なさも無理やり投げ捨てた。


 そしてもう一度捨てる。新たな未練が顔を出しても何度でも捨てる。


 協力者の次は隣に絶対的な支えが欲しいとさらに願った。アシタカが失い続けてきたもの。今、隣にいる。だから強く前を向いて歩いていける。彼女を守り、一つでも多くの幸福を与える為になら今までよりも身を粉にして働く。平穏も休憩もなくて構わない。その時間分、その労力分、与えたい。


 鮮やかな未来を作りたいという巨大な野望に向かって走り続けられる。


「まるで求婚のようですよアシタカ様。良いのですか?」


 シュナが悲しそうな声を出した。アシタカの心を読んでいるのかもしれない。チラリと見ると憂いを帯びた表情に涙を浮かべていた。傷のせいで頬が赤い。


「他の者には使わぬから良いのです。僕は妻を諦めます。というか前から諦めている。今まででも逃げられていたのに、ここまで決意すると働き過ぎて絶対に逃げられる。思い返しても面倒だ。こんなの付き合ってくれるのは家族くらいですよ。母上や姉上達が、いやララ達が一番だな。全員揃ってシュナと張り合いそうですが、断固拒否。僕は隣は貴方が良い。君の伴侶は探さないとな。ティダとは違う本物。ラステルさんでいうセリムのような者だ。しかしシュナに相応しいとなると大陸中探して見つかるのか……」


 シュナが突然アシタカから離れて走り出した。それから振り返った。全身真っ赤にして怒っている。


 具体案がなくて誠心しかないなどというのが、不誠実だと思われたのかもしれない。


「余計なお世話です!心に決めた方がおりますので心配無用!わたくし、絶対にあきらめません!早く大蛇の間へ行きますよ!諦めませんが伴侶などずっと後の話です!余裕が出来てからでないとわたくしもアシタカ様も足元すくわれますからね!仕事第一でいきますよ!」


 シュナがアシタカに背を向けてズンズンと歩き出した。


 


 アシタカは慌てて追いかけて問いただそうとしたが、シュナの雰囲気があまりにも険悪なので声が出なかった。シュナがアシタカの手を握ってグイグイ引っ張るので、何が気に障ったのか判断出来ずに放り投げることにした。


 足元をすくわれる。仕事第一。


 シュナがそういうならばと無理やり自分を納得させた。一先ずシュナの気が変わるまで他の方法で幸せにしてやるだけだ。

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