第5話 脅威
「ごめんね、
「いいわよ別に。最終的にはこうするつもりだったし」
目を
本当は
それに人の海に
だから結果オーライだと自分に言い聞かせ、
その
少女を
それを
「にしても、あなたほんと足速いわね。人を
「そりゃ
「え?」
本気で追いかけていない?
それは、どういう意味だろうか。
言葉がうまく飲み込めず、少女はぽかんと口を開ける。
少女の理解が追いつくのを待たず、少年は続ける。
「理由は知らないし、君を
「……なんで、そう思うの?」
やっと
「そりゃ、さっきから距離が縮まらないどころか、そもそも最初っから変わってないからね」
その言葉に目を見開き、もう一度二人を眺める。
そして思い出す。
こちらが飛び出し、向こうが追い始めたときを。
「…………」
変わってなかった。
その距離は、まったく変わってなかった。
つまりわざと距離を一定にしているのだ。
しかし、それはいったいなんのため?
いや、それ以前にもう一人の男はどうした?
「…………」
これは、気を抜いてはダメだ。
全力で、確実に逃げ切らなければ、ダメだ。
だから少女は表情を引き
「わたしを抱えたままで、あの壁から
そう言って
ぐるりとこの街を
少年はそれを見
「……近くに木は?」
「少し離れたとこに森はあったけど……」
「……そう。一応、できなくはないよ」
「ほんと!? なら、壁を
「わかった」
少年がうなずいたときには壁は目前。
少年は屋根を強く
「…………は?」
突然
「ええええええええええ!?」
自分の
高さで言えば少女の十倍以上。
なんなら壁よりも人二人分ぐらい高い。
そんな高さまで、少女は放られていた。
「ちょっとあのバカいったいなにを! っていうかこれわたし死――ッ!」
そこで、少女の心臓が大きく跳ねた。
落下とともに身を包む風が、ひどく冷たく感じた。
死が
少女のすぐそばまで、死が迫っているのだ。
正直、ここまで死が迫ったのは初めてだった。
ここまで死ぬのが
なぜか目の奥が熱くなり、
そして、
「…………え?」
その身体が
ふいに感じた
少年は少女を抱きしめるように抱えて、
「口閉じといて」
短くそう
落下まであと一秒もない。
魔法の発動だって間に合わないだろう。
少年の
しかしあせることなくその身をよじった。
ぐりんと身体をひねり、飛び蹴りを繰り返すかのように地を蹴り、くるくると跳ね回る。
ある程度勢いの落ちたところで、ダンッ! と足を踏ん張った。
それでも身体は勢いに引っ張られてしまう。
力強く踏み込まれた
そのまま数秒ほど、その状態を
「……ふぅ。なんとか無傷でいけたな」
ようやく止まったのを確認すると、少年は
そして
「……ちょっと」
「ん?」
と、少女がブルブルと震えているのに気づいた。
勢いは殺したし、その
少年はそう考えて、心配そうに少女をのぞき込み、
「いきなりなにすんのよこのバカぁ!!」
「ぶふぉあ……!」
突然ほほを
それでも怒りがおさまらないとばかりに、少女はズカズカと
「ちょっと、別に投げることなかったんじゃないの!?」
「ま、真下に落ちるよりも、勢いを殺しやすいんだよ……」
「むしろこっちが殺されそうになったわ!」
少年はビクリと肩を震わせ、
その
なんなら子犬とかなんかそんな感じで……とか考えたところで、少女は気づいたように
そう考えれば自然と怒りが
なんてぐるぐると目まぐるしく回る
「ああもういいわ。こんなことしてる場合じゃないし、さっさと逃げるわよ」
そう言って少女は辺りを見回す。
いまだ道を
少女はやや遠くに見える城壁を確認し、頭の中で地図を開く。
駆けていた方向と投げられた方向は同じだ。
ならばいま自分がいる場所は……
「……よし、森はむこうね」
森はちょうど煙の向こう
それを確認した少女は急ぐように、
「まって」
しかし、少年がそれを止めた。
少年はいつの間にか起き上がっていて、少女の道をふさぐように前にでる。
少女は
「なに? 煙が晴れるまでのんびり待ってる時間ないわよ」
「そうじゃない」
しかし、少年はそうではないと、ただ一点を鋭く見据える。
少女は
しかし、そこにはやはり、巻き上げられた砂煙しかなくて……
と、そこで
徐々に
そして、
「よう、
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