第3話 交渉
「へぇ、あなた勇者祭に出るんだ」
料理を口に運び、フォークをぶらぶらと
場所はフェルバルト国の
品数も多く値段も
現在は勇者祭間近ということでがやがやといつも以上に
「ゆーひゃになりゅのが……ごくん、僕の夢だからね」
その向かいの席には、海色の
この少年は先ほど追われていた少女を助け、そのお礼としてこの店に連れてこられたのだ。
少年は運ばれてくる料理に手をつけては、
「…………」
少女は
少年は勇者に
けれど、それでも実力は確かだ。
自分の十倍はある高さから、無傷で飛び降りれるのだから。
少女はスッと
「……にしても、ほんとに好きなだけ食べていいの?」
「ええ、
「おお、
「…………」
だがそれでも、実力だけは確かなはずなのだ。
少女は
「ねぇ」
と、少年が言った。
その口にはベッタリと真っ赤なソースがついていてあんたは子供か! なんてツッコミたかったが、なんとかその
「なに?」
それに、
「君はなんで追われてたの?」
鋭い
それもそのはず、少年は勇者を目指しているのだ。
それも
そんな彼がもしも悪に
だが、まず
だからその質問をされた少女は内心、
――きた、と思った。
ようやくその話になった、と
お礼なんてただの
少女はこの話をするために、少年をここに連れてきたのだ。
しかしここでへたを打ってはすべてが水の
「実はわたし、売られたのよ」
「えっ!?」
目を丸くして
しかしそれをおくびにも出さず、できる限りの
「それで、
「…………」
少年はしばし
勇者を目指すという彼ならきっと、行動を起こすはずだ。
その
どうするつもりだろうか。
もしかしたら
少年がどんな選択をするか気になるところだが、あまりに
ここは
少女は力いっぱいに
それに少年がハッとして目線を上げれば、瞳を
少女は
「あなたの実力を見込んでお願いします。わたしを、
「もちろんですお
少女の震える手を優しく握りしめ、少年は力強く答えた。
少女はとどめとばかりに
「ありがとう、わたしの勇者様」
「そうです貴女の勇者です!」
少年はかつてないほどに瞳を
「さぁ、そうとなればすぐにでも行動を――」
「待って」
しかし、それを少女が引き止めた。
少女は
少年は
少女が言う。
「あなた、この街にきてまだ日が
「はい。先ほど着いたばっかりです」
「……別に
「
「姫ってのもやめて」
「えー……」
「えーじゃない。こっそり動こうってのに、子供がそんなガッチガチの敬語で話してたら目立つじゃない。それに
「ん? 僕はいま十四だけど……」
「なんだ、同い年じゃない。それじゃ
「…………わかったよ」
どれだけ姫と呼びたかったのだろうか。
少年はとても
少女は頭痛を抑えるかのようにこめかみに手をやるも、切り替えるように軽く
「それで話の続きだけど……相手はかなりこの街に
「じゃあ、どうすれば……」
「人混みに
「なにそれすでに
「だから引き止めたのよ」
少女はあきれたようにため息をつく。
しかしこれは少年が思ってた以上に逃げ場のない状況だった。
それでも
勇者とは、
少年は表情を険しくさせ、どうするべきか
「けど、ひとつだけ方法がある」
という少女の言葉に、少年は目線をあわせる。
すると少女はにやっとした
「あなた、かなり
「ん? そうなの?」
「あんなアクロバティックに飛び降りといてなんでそんな
「いやだって、あれくらい二人もできるし」
「二人?」
ピクリと
少年は思い出したように、
「ん? ああ、僕は三人でこの街に来たんだ。
「……へぇ、そうだったの」
三人。
その人たちの力も
そして自分はその間に街の外へ逃げ出せるかもしれない。
「あ、そうだ! 二人にも協力してもらおうよ! そうすれば簡単に外まで行けるよ!」
その考えを見
それを受けた少女は内心、
少年と同じくあれだけの動きをこなせるのならば、戦力としては
しかし、問題がないわけではない。
この少年は
少年が抜けてる分、かなりしっかりしている可能性は十分にある。
あるいは
少女はこの
しかし戦力は欲しい。
悩みに悩んだ末に出した結論は、
「……いや、それはやめときましょ」
戦力は欲しいが争いたいわけではないのだ。
あの追手と少年レベルの
場合によっては祭りを
少女は街の外に出たいだけで、街の
「え? なんで? 二人ともすっごい強いよ? 三人
まぁ、たった三人で祭りに出ようなんて考える時点でお
……と、そこまで考えてから、「あれ? 三人で出場するつもりとか、他二人も
そちらに舵を取ってしまった以上はしょうがない。
追手に見つからないうちに次に進もう。
少女はさっさと気持ちを切り替える。
そしてもじもじと、
「だって、わたしの勇者はあなただけだもの」
「
なんとも
チョロいな、なんて思いつつ、少女は言う。
「それじゃあそろそろ出ましょうか。
「
どこの元気な店員だ、というツッコミを胸に
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