本当の気持ち②

クリスマスイブ当日。


三宮駅で待ち合わせをし、買い物をしたりする。

2人にとってクリスマスデートが初デートで、2人はどことなく緊張していた。


クリスマスイブということもあり、街にはカップルなど人が多い。


「はぐれたら困るから…手…」

そう言って渚と手を繋ごうとした純に

「はぐれたりなんかしませーん!」

と茶目っ気に言う渚。


「アホかっ!お前女の子だろ?心配なんだよ!」

そう言って手を繋ぐ純。


普段お前なんて言わないのに…照れ隠しで言ったのかもしれないが、いつもより男らしい姿と、初めて言われた「お前」にドキッとした渚だった。


夜になり、晩ご飯にファミレスへ。


「ごめんな。クリスマスなのにファミレスで」

「ううん。しょうがないよ。2人ともまだ学生だし。ファミレスって結構カップル多いし、デートでファミレス行ってみたかったんだよね」

「それならよかったよ」

純がハンバーグセット、渚がチキンセットを頼んだ。


「あたし、ここのファミレス来たらいつもこのチキン頼んでる気がする」

「チキン好きなの?」

「お肉の中では1番好きかなぁ」


「クリスマスは毎年家族と過ごしてたからか、24日にデートだからって言ったら、あんたがクリスマスに家族以外と過ごすなんて…って、お母さんに感動されちゃったよ」

「いいお母さんだな」

「いつも明るくて自慢のお母さんだよ」


食べ終わり、会計を済まして外に出た。


クリスマスムードで、街はイルミネーションでキラキラと輝き、人で活気づいていた。


「クリスマスは毎年家族で家で過ごしてたけど、外ではこんなにもイルミネーションがキレイだなんて知らなかったよ」

「オレも、クリスマスを外で過ごすのは初めてだなぁ」

「前の彼女さんとは、クリスマスにデートしなかったの?」


「オレが部活だったんだよ。初めての彼女と初めてクリスマスを過ごすってことで楽しみにしてたのに部活って言われて。せっかくのクリスマスに部活って、意地悪かと思ったで。デートできないからって部活が終わったあと、彼女の家で過ごしたなぁ」


「でもそれも、1つの思い出だね」

「そうだな」

話ながら歩いていると、駅に着いた。


「今日のデート楽しかったよ。ありがとう」

「オレの方こそ楽しかったよ。ありがとう」

「じゃあ、また…」

そう言って別れ、歩き出そうとした渚に


「渚ちゃん!」

と言って呼び止める純。


呼ばれた渚は振り返った。


「実は、伝えたいことがあるんだ…」

真剣な目差しの純に、渚も真剣な顔になる。


「渚ちゃんは覚えてる?オレと渚ちゃんが屋上で出会う前、1度図書室で会ったの」

覚えていないのか、一瞬キョトンとした顔をした渚。



「オレが途中で鼻血を出しちゃって焦ってたら、気がついた渚ちゃんが、大丈夫ですか?ティッシュは持ってないんですけどハンカチでよかったらどうぞって、ハンカチを差し出してくれて。オレそのとき、まだ妹のことで引きずってたというか暗い気持ちだったから誰も話しかけてこなくて1人だったんだ。そんなときに優しい笑顔で優しく声をかけてくれてすごい嬉しかった」


図書室で会ったことを思い出したのか、あのときの…って顔をした渚。


「ハンカチは洗って返そうと思ってたんだけど、あのあとしばらく会わなかったから返すタイミング逃しちゃって。半年ぐらい返せなかった。ごめん」

そう言ってハンカチを渚に返す純。


「屋上で見かけたとき、あのときの子だってすぐ分かって声をかけようと思ったら渚ちゃん泣いてて、図書室で渚ちゃんがオレに優しく大丈夫?って声をかけてくれたように、今度はオレが渚ちゃんに優しく声をかける番だって思って声をかけた。もしかしたら構わないでって思うかもしれない。でも図書室の日からずっと気になってたし、今逃したら会えないかもしれないって思ったんだ」


「あのとき、泣いてるのを見られたことが恥ずかしくてぶっきらぼうな対応をしちゃったけど。本当は、あたしに声をかけてくれる人なんていなかったから嬉しかったよ」


「オレが明るさを取り戻せたのは、渚ちゃんのおかげだよ。ありがとう」

「あたしの方こそ、明るくなれたのは純くんのおかげだよ。ありがとう」

お互いに感謝を口にする。


そして、一瞬深呼吸をするように間を置く純。


「出会ったときからずっと好きでした。付き合って下さい!」


渚の返事は…



「はい。よろしくお願いします」


言いたいけど、言って関係が壊れるのが怖くて言えなかった本当の気持ちを、やっと伝えることが出来た純。


家に帰ると、大和に報告をするため電話をした。


電話をしてきた純に

「デート上手くいかなかったのか?」

と冗談で茶化す大和。


「実は、今日渚ちゃんに告白をして付き合うことになりました」

と報告をする純に

「やっと気持ち伝えたわけだ。よかったよかった。おめでとう!」

と大和。


「ありがとう」


自分のことのように喜ぶ大和に、本当の気持ちを伝えてよかったと思う純だった。

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