第1006話

「師匠にできる事なら、弟子であるこのハーボウにもできる!! 何故ならば、このハーボウこそが、師匠を倒す者だから!!」


「どういう理屈ですか。無茶苦茶です」


「という訳で、ちょっくら時間をすっ飛んで、歴史改ざんしてきました。テヘペロ」


「そんな窓ガラス割っちゃいましたみたいな感じで言われても!! なにしてるんですかもう!! あぁもう、そのせいで歴史が大きく歪んだらどうする――」


 その時、ぎぃ、と、直りかけの理事長室のドアが開く音がした。


 足取りは力強く、堂々とした足音。

 しかしながら、しなやかで女性的なすらりとした足が、ドアの開いた先からは覗けている。


「エドワールくんは言ってました。師匠に、大切な人を助けて貰ったって。だから、ハーボウも師匠の大切な人を助けて来ましたよ」


 鬱陶しそうに結い上げられた長髪は黒真珠のように真っ黒で、結い上げられてなお地面に着きそうなくらいである。髪をまとめあげたからだろうか、日に焼けたりりしい顔がなおいっそう輝いて見えた。


 そして――どこまでもどこまでも、まっ平らなその胸。

 女性にあるまじき、究極的平面。

 まったくのまな板。


 それは紛れもなく、そして、ここ数年見て居なくても分かるもの。

 歴史改ざんにより補完されても尚、そうだと確信をもって言えるだけの――彼女の特徴だった。

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