第832話

 しかし、と、パラケルススが顔を落とす。


「魂の源泉――生命のスープへと至る途上で、フラゥコンはあるものを見た」


「あるもの?」


「そう。彼は、その魂の源泉の泉の中にあって、決して形を変えない、強力な極彩色の光を見たと言ったのだ」


 魂の源泉。

 生命のスープ。


 それは魔法使いたちの間でまことしやかに言われている、生命の来る場所である。

 誰も見たことがない、至ることができない、と、今までは言われていた場所だ。


 生命体は、全てその身の内に、魂の座というものを持っている。


 そこに、魂の源泉より湧き出た、一粒の生命のスープの残滓――つまり魂――を鎮座させることにより、生命は生命足りえるのだ。

 また、肉体が崩壊した――死んだ――あとは、残滓は再び魂の源泉へと落ちる。


 ――というのが、この世界の理である。


 先に倒した、黒曜石の仮面ジャン・バルジャンなどは、この生命のスープの残滓を、源泉へと還元せず、他の生命体の座に移動させることで、その不死を得ていた。


 だが――。

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