第830話
それより、パラケルススの独白が始まった。
彼とその兄、フラゥコンは、裕福な王都の商家に生まれた。
生家の家業は歳の離れたもう一人の兄が引き継ぐことになっており、二人は魔法使いとして、当時宮廷魔法使いを務めていたさる人物に弟子入りすることになった。
彼らの師匠は高潔な魔法使いで、大陸最強の名こそ他に譲ったが、数々の魔法を編み出し、歴史にその名を残した。
そんな彼には、一人の美しい娘が居た。
名をリーファ。
直接的な血の繋がりはなかった。
友人の魔法使い――当時の大陸最強――の娘だったのだが、その友人が急死したため、その身を預かり育てていたのだそうな。
「可憐な娘じゃった。ワシも、そしてフラゥコンも、彼女に恋をしていた。懐かしい話じゃ」
いつもの朝倉なら、いや師匠、昔話はいいですから、要件を早くまとめてくださいと、急かしていただろう。
しかし、今回ばかりは、その思い出話に静かに耳を傾けていた。
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