第829話

 新しい生命。

 その言葉に、ぎょっと、朝倉達は目を剥いた。


 疑似生命魔法。

 複雑な魔法の術式をくみあげることで、あたかもそれが生きているように見せかける、魔法術式の一つである。

 そして、ホムンクルスもその範疇――カミュのような例もあるが――に入る。


 彼らには魂というものがない。

 あくまで術式により編み出された反応を複雑に返しているだけである。


 故に疑似生命魔法であり、禁忌とはされて来なかった。


 南条などは、それを疑似の範疇におさめたまま、いかに生命に近づけさせるかというテーマで、研究を行っていたりする。


 しかし――。


「まったく新しい生命、一麦の重さの錬成、ということですの?」


「……いかにも」


「師匠、それは――魔法使いが触れてはならない、不文律!! 重罪でしてよ!!」


「承知している。それでも、我らは求めてしまったのだ」


「……そう言えば、ハーボウの奴も、そんなことを言っていたな」

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