第828話

「身内? 身内ってことは、やっぱりあの試験管フラゥコンって奴は」


「あ奴は、二歳離れたワシの兄だ。魔法の才に長け人徳溢れる優しい兄だった――二十を超える頃までは」


「どういうことですの?」


「……詳しい話を聞かせてくれないか?」


 たびたび、魔法協会おいては朝倉達を襲撃する仮面の魔法使いたち。

 その首魁について、思いがけず知っている人物が現れた。


 師であるパラケルススとはいえ、憚っている場合ではない。

 この王国内で魔法使いの最高権威たる魔法協会が襲撃を受けたのだ。


 朝倉達にとって、それを問いただすことは理事としての役目であり、そして、仮面の集団の目的であるノエルを守る為に必要なことであった。


 ふたたび、済まぬ、と、パラケルススが頭を下げる。


「すべては、我ら兄弟が、禁忌に触れし時より始まる」


「禁忌?」


「我らは作ろうとしたのだ、疑似ではない、本物の新しい生命を……」


「……一麦の重さの錬成ですか」

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