第821話

 と、そんな不毛なやり取りを続ける二人の前に、歩み寄る影が一つ。


「……なにを言い争っているの?」


「その声は!?」


「カミュ係長!!」


 ノエルたちが居る警察署。

 その捜査一課の係長であり、彼らの直属の上司であるカミュ係長が、騒ぎを聞きつけてやって来たのであった。


 上司の登場に、思わず、顔を引きつらせる二人。


 ずさんな捜査をしたことにノエルは負い目があった。

 一方で、ポン子はポン子で、我を忘れて騒いでいたことに負い目を感じていた。


「……仕事はきっちりとやる」


「……はい」


「……私たちが、税金泥棒になっちゃ、ダメなの」


「……わかりましたポン」


 しごくまっとうなそのお小言に、刑事二人は首をうなだれさせた。

 そんな二人を確認して、ふんすとカミュ係長は鼻を鳴らす。


「……パラケルスス老人の事件に謎は多い」


「そうですね」


「……けど、ここでくじけてはいけない!!」

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