第819話

「ポン。それはそれとして、人間は一人では生きていけないものだポン。パラケルススが陶芸教室をやっていたのは事実だとして、それ以外にも交友関係があるはずだポン」


「なんだポン子。お前、先輩のノエルが言うことが信じられないっていうのか?」


「……ポン。けど、そんな頭ごなしに犯人と決めつけるなんて、間違っていると思うポン」


 あくまで正論を通すポン子。

 これには流石のノエルもぐぬ、と、顔色を曇らせた。


「たとえば、なじみのスーパーの店員さんとか、弁当屋さんとかはいないポン? そういうのもちゃんと当たってから、犯人扱いはするポン」


「……むぅ、確かに、パラケルススが自炊していたという記録はない」


「それに、朝倉以外にも、弟子がいるかもしれないポン。過去に師事していた人なんかの洗い出しはちゃんとやったポン」


「……ぐ、ぐぬぬ」


 この口ぶり。

 やっていないのは明らかである。


 先輩刑事に向かって容赦なく、ポン子はあきれたとばかりの溜息を浴びせかけたのだった。


「違うのだ、ポン子。やっていないのではない。囁くのだよ、私のゴーストが!!」


「……それは刑事じゃなくって公安だポン」

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