第809話

 続いて繰り出すのは火炎の竜。


 疑似生命魔法は、南条の専売特許ではない。

 朝倉とて、基本魔術であるゴーレムはもとより、それらしいものを作り出す技術は持ち合わせている。


 作り出したのは岩を溶かして作り上げた、溶岩の竜である。

 単純な火炎魔法とは違い、これは簡単に風の刃で断つことはできぬであろう。


 咆哮と共に口から零れ落ちたマグマが大地を焼いた。


 その雄たけびに、消火活動をしていた魔法協会の職員たちも、異常に気が付いたようだった。朝倉と鉄柵の仮面の男が対峙している姿を遠巻きに見て、彼らは一斉に消火活動を取りやめ、避難行動に移った。


 賢明な判断である。


 もはや、なりふりは構っていられない。

 多少周りに被害が及ぶかもしれないが、それでも目の前の外道魔法使いを倒さなくてはならない。


「ふむ。なるほど、火炎の竜か、また鬱陶しいものを」


「そう思うなら、出させないように引っ込んでてほしかったね」


「そうは行かぬ。私も、自身の最高傑作を失う訳にはいかんのでな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る