第808話

 ちっ、と、舌打ちして次の魔法を展開する朝倉。

 手数については彼女も自信がある。


 すぐに槍の炎を転化させる。

 そうしてそのまま、燃え盛る炎の礫にそれを変えると、鉄柵の仮面の男に向かって浴びせかけた。


 だが。

 それもまた、鉄柵の仮面の男が起こした風によって、簡単に跳ねのけられる。

 実力差は歴然。


 大陸最強をして、赤子をひねるようである。


 当然であろう。

 元、大陸最強の名を冠していたパラケルススを凌いでみせたのだ。

 そう簡単に倒せる相手ではない。


 しかし、戦わねばならない。


「師匠も手傷の一つでも負わせておいてくれよな。尻拭いするこっちの身にもなれっていうんだよ、まったく!!」


「師の死を悼む間もないとは、パラケルススも浮かばれぬな」


「……あの爺ならそんなことするより、お前をぶち殺せと俺に言うだろうよ!!」


 師の意志を継ぐ者は自分しかいない。

 その自覚があるからこそ、朝倉は手を緩めることはしなかった。

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