第797話

 さて、今度はこっちの番だとばかりに、朝倉がハーボウに肉薄する。

 すぐさま魔法陣を展開しようとした彼女だったが――。


「遅い!! 遅い!! 遅すぎる!! その程度の反射速度で神を名乗るとは片腹痛いぜ!! せめて、攻撃を先読みするくらいのこと、してから言いな!!」


「――ぐぅっ!!」


 魔法陣を突き破って、朝倉の拳がハーボウの脇へと入った。


 肋骨の隙間を抜く刺突である。


 限りなく人間の体に近づけてあるホムンクルス――カミュ。

 彼女と同じ体の組成をしているのであれば、その姉妹であるハーボウの体の構造もまた、人間とそう変わりないはず。


 ならば、人間相手のこの致命的な攻撃も有効だろう。

 そう踏んでの朝倉の一手であった。


 はたして、彼女のその読みは当たった。


「かはぁっ!!」


 空気を吐き出して後ろに下がるハーボウ。

 展開しかけた赤色の魔法陣は、それが完全な円を描くより前に、消失した。

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