第796話

 墓穴とはこのこと。

 自分の仕掛けた魔法の仕掛けで、自分の首を絞めることになるとは――。


 皮肉に思わず朝楽の口元が歪んだ。


 ――と、もちろん、そんな訳がない。


「なんだよ、たいしたことねえな、大魔術師グランド・キャスター様の一麦の重さってのも」


「……なに?」


 その言葉と共に、朝倉が構えを直す。

 突き出される黄金色の拳に向かって彼女はすっと拳を突き出した。


 まるで、黄金の腕が砂糖菓子で出来ているように砕けていく。

 そんな不思議な光景だった。


 突き出された朝倉の拳により、それは、粉みじんと砕けて、吹きすさぶ風の中へと消えてしまった。


 なに、と、ハーボウがその顔色を変える。

 対して朝倉は、腕を組んで彼女を睨みつけていた。


ディアボリクァノエルにも神にもほど遠いぜ。軽い拳だな」

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