第789話

「……ジャン・バルジャンとの連絡が途絶えて早三ヶ月。もし彼が、魔法協会の手の中に落ちているのであれば、救出するようにと、私は大魔導士グランド・キャスターから承りました」


「んだと!? ジャン・バルジャンは逃げたんじゃなかったのか!?」


「……どうやら、そうではないようですね。しかし、では、あの死んでも死なないジャン・バルジャンはいったいどこへ?」


 それはこっちが聞きたいくらいだ、と、朝倉。


 ジャン・バルジャン――黒曜石の魔法使いの失踪により、彼女は職を失った。

 それが、実は彼らの認識と違っていた。


 などと聞かされて穏やかな心地でいられるはずもない。


「ジャン・バルジャンの行方の捜索――つまりお前たちも、奴の居場所を知らないってことかよ?」


「……神出鬼没は彼の常でした。しばらく、連絡がないのは仕方ないことかと思っていましたが、まさか本当に死んだとは」


 まぁ、いいでしょう、と、フクロウ面の者が呟く。

 やはりその態度は、同じ志を持つ仲間を思う者には見えない、冷徹なものだった。

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