第786話

「やっぱり、こっちから向こうにアプローチをかけるのは難しいか。向こう側から、こちらに対して何か仕掛けてくれるのを待つしか――」


 そんなことを思った時だ。


 言葉にできぬ怖気おぞけが彼女の身体を襲った。

 黄金竜に睨まれたとて、臆しない彼女が感じた恐怖。


 それはかつて、ノエルと初めて彼女が遭遇した時のものに似ていた。


 その気配の主を探して、朝倉は辺りを見渡す。


「……ここです、朝倉氏」


 そう言ったのは、監獄長の部屋の隅に立つ小柄な影。


 おそらく身の丈から言って少女であろう。

 華奢な体つきが、灰色のローブに覆われているにも関わらず、透けて見えるようだった。なんとも病的な感じのその魔法使い。


 しかし、その顔には――。


 フクロウを模した面が飾られていた。

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