第762話

「さっきの話の続きだ」


「はい」


「朝倉の鍛錬の賜物だろうな。お前の身体はその歳にしては出来過ぎなくらいに出来上がっている。そこまで見事に自分の身体を鍛え上げているのはそういない」


「いやぁ、師匠は何もしてませんよ。これはノエルの日ごろの鍛錬の賜物です」


 ひどい言いぐさもあったものである。


 しかし、あえてそこはツッコまないのがギムレット。


 この娘ともかれこれ二カ月も一緒に居るのだ。

 となると、朝倉とノエルがどういう関係性なのか、だいたい彼も把握していた。


 まぁ、距離の近い師弟というのもよくある話である。


 話の本質からそれた。

 咳ばらいをしてギムレットが続ける。


「しかし、お前さん、身体は出来上がっていても、心の方はてんで駄目だ」


「ふぇ!?」


「心ここにあらず。なんというかな、身体に対して、心がちゃんと居座っていない。十全にその体を使い切るだけの落ち着きが、会った時から感じられなかった」


「そんなことないです!! ノエルこれでも落ち着いて――」


「そうやってムキになって否定するところが、尚さら説得力がないところだ」


 言い切る前に黙ったのは、ノエルもまたそう感じたからだ。

 確かに、それはギムレットの言う通りの事実であった。

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