第758話
「ノエルよ。もう話しても大丈夫だろうから、こうして話す訳だが。ワシが朝倉から請け負ったのはお前の肉体的な修練ではない」
「……ほぇ?」
さんざ山道を走らされ、滝の中に放り込まれ、薪を背負って走らされて――。
それで肉体的な修練ではなかった。
と、言われてもピンと来ない。
ノエルはギムレットの言葉の意味が分からないという感じに、首を傾げた。
そんな彼女の素振りに目もくれずに、ギムレットは一心不乱に鉄を打つ。
どうやらサーベルを造っているらしい。
徐々に薄く、そして反り上がっていくその赤い鉄の塊に視線を注いだまま、更にドワーフは訥々と言葉を続けた。
「ワシが請け負ったのはお前の心の修練だ」
「心ですか?」
「うむ。心技体。格闘技の神髄というのは、まず何よりも心の成熟から来る。技は所詮は知識であり、身体は急に造りかえれるものではない」
「ほんほん」
「しかし心だけは、人が意識して変革することのできる余地の大きくある部分だ。ここの修練に、最も俺たちは力を注ぐ」
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