弟子と明鏡止水

第755話

 さて、ノエルがギムレットの下で修行を初めてなんやかんやで二カ月が経った。


 最初はなんやかんやとゴネていたノエルであったが――。


「ほっ、ほっ、ほっ、ほっ……とうりゃっ!!」


 急な山肌を軽快な足取りで登っていく不肖の弟子。

 もはや、完全に山道を駆け上ることなど、慣れてしまったという感じである。


 その足取りは軽い――というよりも。


 


 そういう感じである。


 後ろでぴったりとノエルに張り付いて、その様子を見ているギムレット。


 相変わらず表情に乏しい彼だが、最初の時と違って斧を投げる気配は見られない。

 どうやらノエルは、彼をして及第点の走りをしているようだった。


「はっはっは!! もう山道マラソンなんて、ノエルには楽勝です!!」


「……ふむ」


 朝から軽快なノエルの笑い声と足音が山間に響く。


 そんな彼女の反応が面白くないのか。

 それとも思うところがあったのか。


 ドワーフ師匠はその編み込まれた髭を撫でて顔をしかめるのだった。

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