第753話

「あー、美味しかった。やはり、朝食はバナナに限りますねぇ」


「――ノエル。今、大事な場面」


「ポン!! 何のんきにバナナ食べてるポン!! ここで、主人公が止めに入らないと、お話として成立しないポン!!」


「えー、けど、満腹で今、ノエルそんな気分じゃ」


「気分とか言ってないで、とっとやるポン!!」


 めんどくさいなぁ、と、主人公にあるまじき悪態を吐いて立ち上がるノエル。

 しぶしぶとことに及ぶ前に、彼女は自分の手に持っていたバナナの皮を、教室の端にあるゴミ箱に向かって投げ捨てた。


 しかし、それがよくなかった。


 こっちの世界でも力の使い方をよくわかっていないノエル。

 当然、ノーコンの彼女が投げたそれは、ゴミ箱ではなく、その手前へと落下する。


 それは丁度、朝倉の進行方向――。


「おわっ!?」


「朝倉くん!?」


 バナナの皮に足を滑らせてすってんころりん。


 ならよかった。

 彼女はそのまま体勢を崩して、たまたま空いていた窓の外にその姿を消した。

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