第747話

「とぉりゃ!! 秘技ぎりぎりセーフキック!!」


 パラケルススの宣言通り、教室の扉を蹴破って中へと転がりこんできたノエル。


「ぎりぎりアウトじゃばかもん!!」


 と、パラケルススが飛んできた扉を受け止めつつ、彼女を叱り飛ばす。


 いやー、ごめんなさい、と慣れた調子で謝るノエル。

 もうこのやり取りにも慣れた感じという具合だ。


 パラケルススは重たいため息を吐き出す。

 そんな担任を横目に、ノエルはそそくさと、自分の机へと移動したのだった。


「ポン。ノエル、夜更かしはたいがいにしておくポン」


「ポン子。仕方ないのだ、夜更かしは、したくてするものじゃない。気が付いたらしちゃってるものなのだから。だから、するなと言われて、しなくなれるような、そういう甘いものじゃないんだよ」


「――気合の問題だと思う」


「カミュちゃんまで。もう、誰もノエルのこの孤独をわかってくれない。悲しい」


「そういう話じゃなかったポンよね」


 こりゃ、静かにせんか、と、パラケルススがかしましい三人に声をかける。

 はぁいと間延びした声を返せば、さて、と、パラケルススが咳ばらいをした。


「実はのう、今日はみんなにうれしいお知らせがある」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る