第740話

 ――しかし。


「いえ、朝倉先生の研究は、世の役に立つものです。少なくとも、私は、私どもは、先生が編み出された魔法の技を欲しております」


 きっぱりと、チュルパン所長はそう言い切った。

 彼は朝倉から手を放す。


 どうぞこちらへ。

 そう言うチュルパンは、朝倉をリハビリセンターの中へと引きこんだ。


 扉の近くでは見えなかった。

 中では、義足や義手を付けた老若男女、様々な年齢性別の者たちが、床に据え付けられているスロープに手をかけて、歩く練習をしていた。


 その姿はまさしくひたむき。

 実にいじらしいものだった。


 見ていて健康であることが申し訳なく感じるような、そんな光景。

 隣に立っていたパラケルススが、ふむ、と、感慨深くその顎を撫でた。


「ここリハビリセンターでは、重度の障害を負ってしまった人たちが、再び日常生活を送れるようにと、トレーニングを行っています」


「なるほど。まぁ、リハビリったら、そういう意味だわな」


「そうですな、それ以外の何をしろという話になりますな。これは失敬、ハッハッハ、また私の話を逸らす悪い癖が出てしまったようです」


 チュルパンはそう言って、総白髪の短く切りそろえられた頭を撫でた。

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